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その日の夜、母はとても機嫌が良かった

まあ、趣味と言えるほどあのようなことが好きなのだから当たり前とも言えよう

「ねぇ、あの娘の名前聞いたぁ?」

そしてぺちゃくちゃと一方的にその少女について語られるのは、いつものことだった


今ここに住んでいるのは僕と母だけで、二人の兄は東京へ巣立っており

父は三年前に亡くなった

僕もあと二、三年程したら、ここを出ていくことになる

母は先程申し上げた通り、変態的な人だ

母の異様な性癖を知ったのは、僕が五歳、兄達が小学生くらいのときだった

夏休みによく男三人で留守番を頼まれたことがある

父はそのときは出張で、母は決まって仕事だと言っていたが、どうも様子が変だった

ある日、僕達は三人で母をつけることにした

いってきますと明るく手を振ってから十秒後 

後ろからそろそろと家を出て、母を追いかけた

その目的地は、意外とすぐ近くにあった

「ごめんくださあい」

近所の家だった

猛暑の日差しにうだえた身体は汗を流しっぱなしで

気持ちが悪かったが、そんなことなど気にならなくなるほど

母の意図が気になった

「なあ、あの家ってさ、超金持ちの家って知ってるか?」

一番上の兄がかすれた声でこそこそと言った

結局その声で母に見つかり、すぐに解散となってしまった

しかし僕が小学校に上がる頃には、母は好みの少女を僕等の家に招き入れるようになった




そんなことを思い出しながら雨戸を開けると、心地よい風が

身体をさすった

「今日は本当に良い天気だな」

黄金色の満月が雲を除けて顔をあらわにした

庭に目を落とす

植木は丁寧に世話をされている。

太い脚で立ち、゛僕はここでちゃんと生きていますよ゛と言いたげな色をして、生えている。

だが、花はどうだろう。花壇の花はもう首が折れそうだ

母いはく、゛花は呆れるほどすぐに枯れてしまうのだから、世話をしたって無駄よ゛とのことだ

その代わり、植木の花は見事に咲き誇っている

赤い椿の花が僕を甘い香りで誘惑する

生命力。

この言葉を思い浮かべてしまう。

植木の存在に包まれ必然的に生きる力を養っている

母の好きな箱入り娘達のように。



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