実験プリント1-1
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――システムチェック開始
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――No.1をインストール開始
――No.1をインストール完了
――No.1実行
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「ええっと……マーチス・シェリーが……2098年に……不老不死になる方法を提唱する、っと
そう言いながら、電車の中で一人の少年が本をめくった。
少年の名前は、白川 洸夜。この時代、珍しい程までに真面目な高校生である。生まれてこの方16年間ずっと、髪も染めず、朝は5時に起きて走りこみをし、テスト前でもないのに勉強する、2100年代で、絶滅危惧種レベルまで少なくなった生活を続ける、稀有な少年だ。
今も学校への登校中に前回の授業の復習をしているのだ。
「それで……2109年に……コメール・ケースが……方法を確立、っと
当然、成績は常にTOP5に位置している。
「その方法は……生まれたての乳児の全身に……人工的に作られた細胞を埋め込む……というものだった。……当然、世間は最初は嫌がったが……不老不死の魅力から逃れられず……結果、全ての乳児に……その細胞を……埋め込むこととなった。
そして……その細胞はある刺激を……受け取った時に……周りの細胞を復活させる……というものである。
また、その刺激とは……ある一定の周期の電波を当てる……ことだ。つまり、自分の体にある……その細胞を働かせる周期の……電波を出せる物を……持っておけば自分の体を……自分で治すということが……可能になり……」
そこで白川は言葉を切った。電車が学校の最寄り駅に着いているのに気づいたのだ。
「やっべ! 」
慌てて教科書を仕舞い、電車から出る。そこで、ふう、っと溜息をつく。
(流石に何度もおんなじ失敗はしたくないな。)
そんなことを内心で呟きながら、白川は学校へ向かった。
教室はいつもより、騒がしかった。
入ってすぐに理由がわかる。
机が一つ昨日より増えていたのだ。
(転校生が来るのか。)
いつもなら、ふーん、で終わっていたが、今回はそうはいかなそうだ。なぜなら、
(俺の席の隣? )
そう、増えた机は白川の席の隣りにあったのだ。
こうなると少し面倒になる。まさか隣の奴と話さないわけにはいくまい。しかも、相手は転校生だ。どうせ、担任から「おい、白川、お前隣なんだから面倒みてやれ」とか言われるに決まってる。
はあ、っと溜息を吐きながら自分の席に向かう。
別に白川は非社交的というわけではない。友達もいる。ただ、面倒事はなるべくしたくない、というだけの話だ。
そう、要は面倒臭いから、隣に転校生が来る、と思うと憂鬱になるのだ。
席に座ると、少し離れたところから一人の男子が白川に向かって歩いてきた。
「おい、白川、お前の隣、転校生が来るみたいだな
そんな見ればわかることをわざわざ言う奴を白川は一人しか知らない。
「知ってるよ、宮原
白川がそう言うと、宮原と呼ばれた少年は、「知ってたかと、言うと、声を出して笑った。
「いいよなぁ、転校生が隣の席に座るなんて経験したこともねえよ。羨ましい
(そんなにいいことだろうか? 俺には面倒な事しか思いつかないんだが……。)
そんなことを思って黙っていると、宮原は勝手に喋り続ける。白川が反応しなくても喋り続ける、その何時もの様子を見て、御苦労なことだ、と白川は思っていた。
「いやぁ、青春だよねえ。転校生と運命の出会いってやつ? 」
(ん? )
「ほら、恋愛ものじゃよくあるだろ? 転校生の席が主人公の隣で……
(おいおい、もしかしてこいつ。)
「それから、主人公の花のような日々が始まって……どうしたの、白川? 」
俺が、顔に手を当てて呆れているのに気づいたようだ。宮原の口が完全に閉じたのを確認してから、あのなあ、と、続ける。
「盛り上がってるとこ悪いが、転校生が女子って決まったわけじゃないぞ? 」
そういうと、――なぜか宮原はきょとんとした顔になった。
(ん? 何その反応? )
俺は、「え? あ、そっか〜。そういやまだ決まってないじゃん的な反応をすると思っていたのだが……。
「……あ、そっか。まだ聞いてないんだ
宮原が納得したように頷き、話を進めた。
「転校生は女子だよ。目撃証言もちゃんとあるし
「……目撃証言? 」
ああ、と頷くと、宮原がその目撃証言について教えてくれる。
「隣のクラスの寺井って奴が登校中に見かけたんだと。歩いていたらいきなり見かけない顔のうちの学校の制服を着た女子に追いぬかれたんだって
「……おいおい、それだけじゃそいつが転校生かどうかなんて分かんないだろ。単にその……寺井? って奴が知らなかったっていう可能性だって……
「いいや、ないね
即答された。
「なんで言い切れんだよ? 」
「そりゃお前、寺井が『あんな可愛い子がいたら、俺がマークしてない訳無い。つまり、俺がマークしてなくてあんだけ可愛かったんなら、転校生以外ありえない。』って言ってるんだって
呆れた考え方だが、そこまで言うからにはそうなんだろう、と白川はしぶしぶ納得する。
(そんだけ、可愛いっていう噂が流れてるから、こいつもこんなにそわそわしてるし、俺が来たらすぐに囃し立てに来たんだろう。まあ、俺には関係ないか。)
そこまでわかった白川は、鞄から小説を取り出して読み始める。横で宮原が騒ぎ始めるが、無視。
だけどまあ、白川も自分でも無視したいことがあったからこうして現実逃避しているわけで……
(くっそ、女子だと? めんどくささ倍増じゃねえか。ああやだやだ。転校生が座る席は、一番後ろの列の窓際。そして、その隣が俺。つまり、隣は俺一人。くそ、せめて、転校生が両隣がいる席であったら反対側の奴に全部丸投げしてやんのにさ! )
そんな、考えても仕方ないことを考えていると、チャイムが鳴り、担任の教師が入ってくる。
委員長がいつもの「起立。礼。着席をやると、先生が話し始める。
「皆さんおはようございます。突然ですが、今日は皆さんに転校生を紹介します
教室の中がざわめく。「やっぱり」とか「女子だといいな」とかいろんな声が聞こえる。
ざわめきがある程度落ち着いたところで、先生が外に声をかける。
「さ、入ってきて
教室の扉が、ガラッ、っと開き、少しだけ赤みがかった髪の女が入ってくる。
まあ、散々可愛いと噂されていただけあるな、というのが白川の第一印象だった。
その子は教卓前まで来るとこちらを向いて自己紹介を始めた。
「き、今日からこの学校にきました、上倉 洞香です。よ、よろしくおねがいします
上倉はそう言うと頭を下げる。
クラス中から拍手が起こる。
「え〜、上倉さんは親の事情でこちらに引っ越してくることになったそうです。皆さん、仲良くしてあげてください
また、拍手が起こる。
それが一段落したところで、また、先生が話し始める。
「え〜、質問がある人はまた各自で聞きに行ってあげてください。……それでは上倉さん、窓際一番後ろのあいている席絵どうぞ。白川くん隣なんだから、わからないことを教えてあげてくださいね
最後に、予想通りのセリフをいう先生。
(まあ面倒だけどちゃんとやるか。頼まれたことはしっかり最後までやるってのが俺の信条だし。)
まあ、面倒臭いと連呼していても、白川は真面目なのである。
その後、上倉が白川の隣の席まで歩いてきて、鞄をかけて座った。
それを横目に見ながら白川が授業の準備をしていると、横の席、つまり上倉から声がかかる。
「あの……白川……君? 」
「ん? どうかしたのか? 」
上倉の方を向きながら尋ねる。
「い、いえ、そうじゃなくって、……あの、こ、これからよろしく
ああ、と白川は思う。
(転校したてで隣が一人しかいなくて、しかもそれが男子だったら緊張するよな。)
そう思った白川は緊張をほぐしてあげるために、できるだけ優しい声で笑いながら言った。
「ああ、こちらこそ、よろしく
(今の声で他の奴ら(主に宮原)に誤解されてなければいいけど……。)
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薄暗い地下通路のようなところで銃声が響く。
その少し離れたところで数人の男が何かを罵り合ってた。
「クソ、あいつらよくも……」
「おい、これからどうするんだよ! 」
「畜生! 畜生! 」
そんな声が響いていると、それまで男達の中で唯一声を出していなかった男が声を発した。
「お前らは、死ぬのが怖いのか? 」
その声に他の男達が黙る。構わずにその男は言葉を発し続ける。
「俺らは捨て駒だ。そんなの始めっから分かっていただろう? それが分かったうえでお前らはこの任務に参加したんじゃないのか? 」
男の演説は続く。
「機密事項はもう本部に転送してある。俺らはこの天地をひっくり返す計画を成功に一歩近づけたんだ。俺らの任務はもう終わってるんだよ
そう言うと他の奴が声を出す。
「で、でもよ、アキラもシンジもやられてよお
そう言うと、演説をしている男が一段と声を上げる。
「だからこそだろう! 我らは全員もう死んでもいいんだよ! そして放っていても殺される! だったら一矢報いてやろうとは思わんのか! 」
もう誰も口を挟まずに男の演説に聞き入っていた。
「今、我らに鉛球をぶち込みこの身を肉塊に変えてやろうとしている奴らに、我らは何を奪われ続けてきたか、失ってきたか、思いだせ! 家族、恋人、友人、仲間、人権、未来、信条、金、それら全てだろう! 今更自分一人の命がなくなることに、何を恐れている! 」
聞いている男達の顔つきが変わってくる。
「一人でも多く、あいつらを道連れにしようとは思わんのか! 一つでも多く奴らの大切なものを奪ってやろうとは思わんのか! 」
うおおおおおおっ、と、周りの男達が叫び始める。「そうだ、その通りだと、つぶやいている奴もいる。男達は次々と自らの武器――ボロボロのナイフを取り出し始める。
演説をしていた男もナイフを取り出し、上に掲げた。
「さあ、奴らに、我らに最後残ったもの、我らの『誇り』を見せつけてやるのだ! 我らに勝利を! 栄光を! 第132番隊――突撃! 」
そう言うと、男は銃声がしていた方へと走りだす。他の男達もそれに続いた。
少しして、地下に、マシンガンが発砲される音と、男達の悲鳴が響く。
そして、一分もしないうちに、地下は、また静かになり、血の匂いだけが残っていた。




