最悪の出会い
青く澄み渡る晴天の中何年も使っていないせいで見た目も中もボロボロになった暗い雰囲気の旧図書室に向かっているのは誠考高校でアイドルと言われるほどの才能とルックスを持っている花咲優里。
彼女の周りは何をしていてもキラキラしている。
今彼女が向かっている場所とは大分雰囲気が違う。
誰も使わなくなった旧図書室。今は倉庫として使われていて出入りする生徒は誰もいない。
その理由は、今にも壊れそうな佇まいなのだからだ。そこに足を踏み入れてみようと思えば、床はミシミシと音がしその音ともに本棚もたおれてしまいそうでそんな危ないところで遊ぼうなんて人はいないだろう。
そんな誰も使わないところに何故彼女のような人が行くのか。
簡単な話だ。彼女見たく人気になれば周りの目を一日中気にしていなければいけない。そんな彼女にとって、旧図書室は息抜きの場にぴったりなのだ。
彼女の足取りは軽く今にもスキップしそうなくらい早く休みたいと向かっていた。
スライド式の旧図書室の扉はボロボロでギィーと音を立てる。
図書室の中の空気はひんやりとしていた。日陰にあるからだろう。
奥の方にあるソファーに向かい足を速める彼女は、目を見開いた。
ソファーには先客がいたのだ。
黒髪のメガネをかけた少年がソファーに横になって静かな寝息を立てていたのだ。
彼女は、怒りより先にショックを受けてしゃがみこんだ。。
唯一の安息の場所が奪われたのだ。これでここで休むこともできなくなってしまった。
(どうして。私には休息さえさせてくれないの。人気者になりたくてこうなふうになったんじゃないのに。神様は何がしたかったの。どうしてやっと見つけたここを見ず知らずの人がねてるの。)
彼女がショックと怒りを感じている間に少年は誰かいる気配に気ずき目を覚ました。
「誰?」
一言彼が発した言葉に優里は気づき顔を上げる。
彼と目が合った瞬間、咄嗟に彼に対して文句が出た。
「なぜここにいるの。ここは出入り禁止のはずよ。それにあなたの寝ていたところは私の場所なの。勝手に座らないで。」
彼は、その言葉を聞いてフッと笑った。
「初対面ですごい剣幕だな。花咲さん。俺は、許可をもらってここに来た。このソファーが花咲さんの場所だろうが関係ないけど、ここは花咲さんの所有物ではないんだ。誰が寝たっていいだろう。」
彼の言ってることは正しい。彼女が勝手に自分の場所だと言い張っているだけなのだから。
「でも、私が見つけた場所なのに。あなたみたいな人に使われてるなんて嫌だわ。だから、二度と来ないで。」
「花咲さんはここの学校のアイドルと言われて得意になっているのかな?俺以外の男子なら花咲さんにそんなこと言われたらここには二度と来ないだろうね。だけど、ここに居るのはそんなあなたに全く興味のない俺だ。あなたに指図されてもいうことは聞かないよ。
あなたは、自分の知らないところで人のことを見下してる。自分が一番上なんだから何を言っても許されると思ってる。だから、俺に向ける目も言葉も上からなんだ。自分を理解できていあないというのは怖いな?」
「あなたに何がわかるの?私の気持ちなんてわからないくせに。わかったるみたいに言わないで。それに私は見下してなんかいないわ。自分のことは自分が一番理解してるに決まってるわ。」
真剣な二人の目は見つめ合っていたが優里の目は冷めていた。
「そうですか。得意になってるお姫様は何もわからないと。俺が教えてやろうか?
お前が頼むならな。案外自分の知らないところでは時間は進んでんだ」
彼はそう言って旧図書室からでっていった。
優里はイライラしていた。自分のことをけなされていい気分になるような人はいないだろう。
(私の言っていることはおかしくないわ。私がいるこの空間にも時間を流れてる。もうなんなの。)
これが、最悪の出会い。