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スカーレット・アイズ(旧:異世界辺境生活)  作者: 長靴を履いた犬
異空間と、二つの月と、大切な友達。
9/13

乳幼児と忠犬と犬牧場

 現在、この作品は加筆(改訂)作業中です。

 まだ、第二話以降は加筆(改訂)作業は終了しておりません。

 ご注意ください。

「ひろいはしにきたろらのてんしんなめてた」

(広い場所に来たロラのテンション嘗めてた)

 幌馬車の中、来た時に包まっていた毛布に顔面から突っ伏しながら、乳幼児ラトゥはぼやく

 あの後は、ずっと爆走するロラにしがみ付いて終わってしまった。

 萎えた腕に力を入れ、上半身を起こそうする。

(土だけじゃなくて、農業用水路とか、作物とか、雑草ともか観たかったんだけど)

 だが、疲れ切った乳幼児ラトゥは、再び顔面から突っ伏す。 

(今は無理)

「くぅ~ん、くぅ~ん」

 忠犬ロラが、心配そうに鼻を鳴らして、乳幼児ラトゥを鼻を近づける。

「ろら、もうすこしてんしんさけて」

(ロラ、もう少しテンション下げて)

 乳幼児ラトゥは、死んだ目で忠犬ロラに切実なお願いするが、

「わん?」

 小首を傾げた忠犬ロラに、意思が通じているかは、甚だ疑問だった。

(次は牧場だったか?気をつけよう。いや、ここは自力で行こう)

 秘かに、忠犬ロラに頼らず、自分の足で歩んでいこうと決めた瞬間だった。 

  

「ん? ラトゥ疲れたか?」

 いつの間にか眠ってしまったのだろうか、祖父の声と頭を撫でる手の感触で微妙に覚醒する。

「ぅん」

(うん)

「少し休むといい」

 野太く厳つい。だが、やさしい声が聞こえる。

 ゆっくりとラトゥの頭は撫られている。

 かすかに土の香りがする安心できる大きく逞しい手

「ぅん」

(うん)

 夢現のまま、乳幼児ラトゥは答える。

(不味い、な。このままだったら、起きたら屋敷になっちゃう。かも)

「ろら、ほくしうについたれおこして」

(ロラ、牧場に着いたら起こして)

「わん」

 期待を裏切らない忠犬ロラの声。

 この声を最後に、再び眠りに落ちる。


「わん、わん」

 忠犬ロラの声と、服を引っ張られる感覚、ちょっと首に引っかかってやや苦しい。

「ぁと、すこしねかせて」

(後、少し寝かせて)

 無意識に出る言葉。

「わん、わん、わん」

 忠犬ロラの声が大きくなり、服を引っ張られる感覚が強くなり、微妙に首が締まる。

「くるし」

(苦しい)

 不意に忠犬ロラの声が終わり、身体が宙に浮く感覚。

(あぁ、ロラに何処かに運ばれるんだな)

 夢現のまま、そんな事を思っている。と、顔を撫でる風、わずかに感じる木漏れ日。

「っん?」

(ん?なんだ?)

 目を開くと、首だけ幌馬車の外に出されていた。

「わっ、わっ?」

 お陰で、一気に目が覚めた。

「ありかと、ろら」

(ありがとう、ロラ)

 乳幼児ラトゥは、忠犬ロラにハグして首を撫で、感謝をする。

(本音言うと、もう少し寝たかったが、ここでも調べたい事がある)

 今度は、自分に二、三度、頬を両手で叩き、気合を入れて眠気を振り払う。

「ろら、おねかい」

(ロラ、お願い)

「わん」

 忠犬ロラは、伏せの姿勢をとり、乳幼児ラトゥが背に乗る。

「ろら、いこ」

(ロラ、行こう)

「わん」

 忠犬ロラは、乳幼児ラトゥを背に乗せたまま、立ち上がり助走をつけて、幌馬車から飛び出す。

 着地の瞬間、忠犬ロラは四肢を使って衝撃を殺し乳幼児ラトゥへの負担を極力無くす。

「ありかと、ろら」

(ありがとう、ロラ)

 乳幼児ラトゥは、わずかな衝撃を耐え、忠犬ロラの首筋を撫で感謝の言葉をかける。

「わん」

 その声に応える様に、一吠えする。

(まずは、爺さんと父さんを探さないと……)

 周囲を見回しながら、祖父と父親を捜す。

 馬車近くを確認するが、見当たらない。

 乗って来た幌馬車は大きな木の下に停められ、繋がれた馬車馬は干し草と水を、ゆっくりと食べている。

 馬の雰囲気からして、結構、爆睡してしまったらしい。

「まいたな」

(参ったな)

 辺りを、見回しながら

(勝手に行動すると、後々に響くんだよな)

 冬の逃走劇を思い出し、口の中でぼやきながら、更に周囲を見回し此処の場所を確認する。

 此処は牧場の一角らしく、放牧場の柵が観える。その柵の先には数人の大人達が集まっていた。

「ろら、あちた」

(ロラ、あっちだ)

「……わん」

 いつもより、ワンテンポ遅く、忠犬ロラが答える。

「ろら、あとてね」

(ロラ、後でね)

 乳幼児ラトゥ忠犬ロラの首を撫でながら、約束する

「わん」

 今度は、力強く即座に答える忠犬ロラに、乳幼児ラトゥは農場での爆走を思い出し

(次は、ロラ一匹で行って貰おう)

 と、強く思った。

 しばらく忠犬ロラに乗り、乳幼児ラトゥは大人達の足元に辿り着く。

「ねぇ、じーじ、ぱーぱ、ほくしみてきていい?」 

(ねぇ、お爺さま、父さま、牧場観て来ていい?)

 大人達の足元から声をかける。

「おぉ、ラトゥ起きたのか?よく此処まで、来れたなぁ」

 祖父が目を細めて、乳幼児ラトゥの頭を撫でる。

「あぁ、いいぞ。だが、柵の中に入っては行けないぞ」

 片膝をつき、乳幼児ラトゥに視線を合わせて、真面目な顔で注意する。

「ぅん」

(うん)

「柵の中には牛や羊、山羊と言った大きな動物が居るから、危険だから絶対に駄目だぞ」

「ぅん」

(うん)

「それから、あんまり遠くに行くなよ」

「ぅん」

(うん)

 父親の声に、乳幼児ラトゥは頷く

「ラトゥを頼んだぞ。ロラ」

「わん」

 更に、忠犬ロラの返事を確認して

「良し、行っていいぞ」

 真面目な顔から、一転してにこやかに答える。

「ろら、あちいこ」

(ロラ、あっちに行こう)

「わん」

 再び、幌馬車が停めてあった場所近くまで戻る。

(放牧場には、入っちゃ駄目か。確かに危険だけど、家畜も見たかった。けど、ここは出来る事、出来る事)

「ますは、ほくそうたな」

(先ずは、牧草だな)

 放牧地の柵を超えて生えている牧草を捜す。

(最悪、ただの雑草って事も考えられる。から、期待しない方がいいかな)

 農場の土を思い出し、過度の期待をしないで探す。

 踏み固められた柵外側に、中々見当たらなかったが、柵の先を見る。

「ん、あれは?ろら、あち」

(ん、あれは?ロラ、あっち)

 柵の先は、一部壊れかけた柵が見えた。

 忠犬ロラから降りた乳幼児ラトゥが掴り立ちをする。

 なんとか放牧地だけ見える。

「おとなし、きかつかないよね」

(大人じゃ、気が付かないよね)

 視線が低いから見える事もある。

(だが、此処からでも、家畜は見えないか。まあ、いい、こっち側でも出来る事が……)

 気を取り直した瞬間。

「わぉぉぉぉぉ~ん」

 ロラは、再び野生に戻り、壊れた柵から放牧地を駆け出した。

「おりてせいかいたたかも」

(降りて正解だったかも)

 乳幼児ラトゥは、このタイミングで降りた幸運を、神に感謝した。

 そして、足元には放牧地を越えて来た牧草があった。

「まめかほくそうてあれは、いいんたけと」

(マメ科牧草で有れば、良いんだけど)

 そこには、見覚えのあるマメ科牧草らしいものが、

「くろはかな」

(クローバーかな)

 土を掘り根を確かめてみる。

 牧草の根には小さい瘤みたないな物があり、根粒菌らしいと確認できる。

「よし」

(よっしゃぁ)

 何本か牧草を確認して、確信に変える。

「よし、これてなんとかなるかも」

(よし、これで何とか成るかも)

 思わず笑みを浮かべながら、放牧地内を見る。

「ろらは、とこまていたんたろ」

(ロラは、何処まで行ったんだろ)

 忠犬ロラの心配をしていると……

 そこには、羊らしい群れを追い立てる牧羊犬達が居た。

「こちに、きてくれるとたすかるたけと」

(こっちに、来てくれると助かるんだけど)

 願いが通じたのか、牧羊犬達が乳幼児ラトゥが居る壊れた柵の方に羊らしい群れを追い立てる。

「ほうほくちには、はいてないからな」

(放牧地には、入って無いからな)

 ちょっと、言い訳がましく呟く。

 徐々に、近づく羊らしい群れと牧羊犬達


「あれ、えんきんほうちかてない?」

(あれ、遠近法違って無い?)

 なんか牧羊犬達の方が、大きく見える。

 目を擦る乳幼児ラトゥの方に、羊らしい群れが殺到する。

「わっ、わわわ」

 壊れた柵の方から、羊の顔が飛び出し、押し出された為に思わず尻餅をした乳幼児ラトゥ

 そして次に飛び出したのが、羊よりも大きな犬の顔、血走った眼、大きな口、鋭い牙。

 腰が抜けた乳幼児ラトゥは、凍りついたように動けない。

 叫ばなければと思っても、思うように声も出ない。

「がぐるるるるるる~」

 目の前を大きな犬の犬歯が、ガチガチと鳴り、柵も軋む。

「わん」

 大きな犬の後ろから、いつも聞いている一吠えが聞こえる。 

「きぅ~~ん、きぅ~~ん、」

 まるで怒られた犬が反省するように、大きな犬が尻尾を巻いて柵から離れ、後ろから忠犬ロラが現れる

「……あに、これ」

(……何、これ?) 

 目の前に起こった事を忠犬ロラに聞いてみたが、

「わん?」

 としか、返ってこない。

(異世界だからって、あんなデカイ犬有りかよ。って、言うか父さん、牛、羊、山羊よりも、この大犬に喰われる心配しようよ)

 緊張の糸が切れた乳幼児ラトゥは、そのまま意識を失った。

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