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スカーレット・アイズ(旧:異世界辺境生活)  作者: 長靴を履いた犬
異空間と、二つの月と、大切な友達。
8/13

乳幼児と犬の田園散歩

 現在、この作品は加筆(改訂)作業中です。

 まだ、第二話以降は加筆(改訂)作業は終了しておりません。

 ご注意ください。

 目の前には、冬麦の新芽が薄く生えてた畑が広がっている。

 心地よい春の日射しと暖かな風を、小さな身体で受けながらラトゥは思う。

「いてみるもんたな」

(言ってみるもんだな)

「わん」

 忠犬ロラが、いつもの様に相槌を打つ。


 本日の朝

 いつもと変らない四人と一匹の朝食。

 いつも変わらない質素な食事、ラトゥの目の前には大麦の重湯、野菜スープ、ヨーグルト

 大人は黒パンと、同じと思われる野菜スープ、それにチーズ、大体同じ物が食卓に並ぶ。

 いつもと同じく離乳食を食しながら、ラトゥは祖父と両親の顔色を窺う。

(機嫌は悪くなさそうだな)

 数日の会話で、今日の午後、畑仕事をする事は分かっている。

 後はタイミング

 ちょうど良く、畑の話題だ。

 話が一瞬途切れる。

 意を決し

「ほくも、ぱーぱといしに、はたけにいてみたいの」

(僕も、父さまと一緒に、畑に行ってみたいの)

 出来るだけ愛らしく父親に、おねだりしてみた。

 一瞬の沈黙

「そうね。もう少しラトゥが、大きくなっ……」

 にこやかに拒否しようとした母親

 だが……

「今日か、今日なら、いいんじゃなのいか」

 父親が、あっさり許可を出す。

「あなた。まだ、ラトゥには早過ぎます」

 少しヒステリックに、声を荒げる

「まあ、そう言うな」

 スープを一啜りして

「冬の事件ときとは、時期も違う。それに、外の世界を観たいって関心を持つのは、いい事だと思う」

 父親は、ゆっくりと大らかに諭すが。母親は退かない。

「あなたは、あの時、留守だったから、私がどれだけ心配したのか、ご存じ無いんです」

「知ってるさ。だから、少しずつ外の世界を見せようと思う。今日は、牧場にも行く予定だし、ちょうど良いだろう」

「貴方が、畑仕事してる間、誰がラトゥの面倒を見るんです」

「ロラが居るじゃないか。最近は、ロラを呼ぶとラトゥを連れて来てくれるから、助かるって言ってたじゃないか」

 足元で干し肉をスープで戻した物をガッついている忠犬ロラに、

「なぁ、ロラ」

 と、声をかけ

「わん」

 絶妙のタイミングで忠犬ロラが答える。

(さすが、ロラだタイミング完璧。まぁ、ロラに咥えられる事を、連れて来てくれるっていうのは、どうかな)

 ちょっと思いながらも、ラトゥは重湯を口の中でモゴモゴする

「もう、知りません」

 頬を膨らませて、母親はそっぽを向く。

 すっかり怒らせてしまったと、苦笑する父親

「ふ~、では、儂もついて行くとするか」

「父さん?」

「儂も、孫の面倒くらいは観れる。それに新しい牛犂の調子を直に見たい」

 祖父は厳つい顔を緩ませる。

「あぁ、冬に新しく調整した」

 興味深そうに親子は、牛犂の話で盛り上がり、一人母親が拗ねる。

(行けるッポいな、……一瞬、断られると思ってたんだけど)

 野菜スープを口の中でモゴモゴしながら、順調に行った幸運を一人噛み締める。


 勿論、午前中も無駄にしない。

 庭の散策、やや日当たりの悪い場所に植えてある林檎の木の下で小休憩ついでに絵本を読む。

 最後に、母親の呼び声で忠犬ロラに咥えられ、いつもの様に母親の元へ連れ(去られ)て行かれる。

 昼食の時には、母親の機嫌は良くなっていた。

(父さんが、頑張って機嫌とったかな?)

 いつもの様に、飄々としている父親を見て思う。

 前世でも結婚してなかったラトゥには、夫婦間の機微は分からなかった。

 だが、それでも、少し雰囲気が柔らかく変わったぐらいは分かる。

(さすが父さん)

 心の中で、現役男爵でもある父を賞賛し、昼食が始まる。

 

(……で、気が付いたら、ここなんだよな)

 昼食後の昼寝から覚めたら、幌馬車の中。

 外は、田園のド真ん中。

 寝てる間に、幌馬車に乗せられ目的地に着いたらしい。

 最近、乳幼児ラトゥの本能に任せられる処は任せているので、たまにこんな事もある。

(街並みを見れなかったのは、ちょっとだけ悔しいけど、だが、まぁ……いい。やれる事をやろう)

 気を取り直し牛犂と祖父と父を中心とした大人達集団の様子を窺いつつ、畑の土を調べる。

 まずは畑の薄い茶色の砂利混じりの表土を触る、においを嗅ぐ、ついでに握る、握った土を指で解す。最後に舐めて、すぐに唾液と供に吐き出す。

(う~ん、どうだ?ちゃんと土質検査出来ないから、断言できないけど、此処の土地って痩せてないか?お世辞にも、豊穣な土地とは言え無いな)

 と、乳幼児ラトゥが結論を出し、可愛い顔が歪む。

(リン・カリウム・窒素とか言う以前の問題で、ミネラルが足りてない感じか?まだ、塩害の可能性は低い事が幸いか)

 土の味で塩分を感じなかった事から導き出す。

(水捌けも良くなさそうだな)

 最近、雨は降っていないのに水溜りが有ることから推測する。

(さて、次はどうするか) 

 心地よい風を受けながら、ゆっくりと考えをまとめる。

 田園風景の中に、植林した森林が目に留まる。

(そう言えは、ちゃんと植林した森林から落ち葉とか、家畜や人の糞尿は肥料にしてるのかな?)

 再び、畑の土を良く調べる。

 この土からは、腐葉土特有のカブトムシの様な匂いも、土になり掛けの落ち葉も見当たらない。

(……してなさそうだな。してたとしても、量は極めて少ないかな)

 難しい顔をしている乳幼児ラトゥを、忠犬ロラが首を傾げながら様子を窺っている。 

「くぅーん?」

 忠犬ロラにしがみ付き、頭を撫でる

「うぅん、なんてもないよ」

(うぅん、何でも無いよ)

 おひさまの匂いのする忠犬ロラをハグしながら

「ちと、ますいかも、のうきうのれへるか、よそくよりかなりおとるかもちれない」

(ちょっと、不味いかも、農業のレベルが、予想よりかなり劣るかもしれない)

 胸中を、一瞬、嫌な思い出が過る。

 前世で祖父母両親との確執の記憶。

 苦い顔をし、

「これはしんちうにうこかなくちならないな」

(これは慎重に動かなくちゃならないな)

 一人つぶやき、大きく溜め息をする。

(気を取り直して、次に行こう。先ずは)

 忠犬ロラに乗り、大人達の集団に入って行く。

 よちよち歩きの乳幼児ラトゥが入って行くのには、難易度が高すぎるし、第一危険だ。

(ちゃんと一言報告しておかないと、次が続かないしな)

 何人かの大人を、ギョッさせながら、忠犬ロラ乳幼児ラトゥは中心に辿り着く。

「ねぇ、じーじ、ぱーぱ、ろらとおさんほしてきていい?」 

(ねぇ、お爺さま、父さま、ロラと御散歩してきていい?)

 足元からの声に、父親は

 ちょっとビックリするものの

「あぁ、いいぞ。ただしあんまり遠くに行くなよ」

 片膝をつき、乳幼児ラトゥに視線を合わせて、にこやかに答える。

「ラトゥを頼んだぞ。ロラ」

 土の匂いがする右手で、やさしく乳幼児ラトゥ忠犬ロラを撫でる。

「ぅん」

(うん)

「わん」

 乳幼児ラトゥ忠犬ロラは、元気良く頷き。再び大人の集団を掻き分け忠犬ロラが走り出す。

「賢そうな、お子様だ」

「さすが、男爵様のご子息」

「将来が楽しみだ」

「これで、男爵領は安泰だ」

 口々に周囲が褒め称える中

「ん、ん。では、話を再開しよう」

 照れくさそうに父親は、話を戻そうとする。

(そうだろう。そうだろう)

 その隣で、胸を張って満面の笑みを浮かべている祖父が居る。


 ……だが、話題を独占したコンビ達は

「ろら、ちとまて、とまて」

(ロラ、一寸待て、停まって)

「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ」

 ロラは、広い場所を走れる喜びに身を任せ、乳幼児ラトゥは恐怖でロラの首に必死っでしがみついていた。

「ろら、ほんとまて、とまて~」

(ロラ、本当に待て、停まって~)

忠犬ロラですが、最後の最後で野生に戻ってしまったので、作中で最後はロラとさせていただきます。

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