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スカーレット・アイズ(旧:異世界辺境生活)  作者: 長靴を履いた犬
異空間と、二つの月と、大切な友達。
7/13

今、乳幼児に出来る事

 現在、この作品は加筆(改訂)作業中です。

 まだ、第二話以降は加筆(改訂)作業は終了しておりません。

 ご注意ください。

 いつもの離乳食を食しながら、ラトゥは夢から覚めたような、冷ややかな目で一人思う。

(この家って男爵様なんだよな)

 いつもの食卓、祖父、両親、自分の四人だけの食卓。

 いつも変わらない質素な食事、ラトゥの目の前には大麦の重湯、野菜と干し肉のスープ

 大人は黒パンと、同じと思われる野菜と干し肉のスープ。スープの味付けは違うかもしれないが、ほぼ同じ物が食卓に並ぶ。

(これが、男爵様の食事……)

 男爵の家に生まれたと、浮かれていた十数日前、現状を考えてみると疑問も浮かんでくる。まずは、食事、貴族なら、かなり豪勢な食事してると前世からの先入観と思った。だが、現実の質素な食事。

 それに祖父と父の手から感じる土の匂い。

 この事実が、浮かれていた気持ちを一気に冷やす。

(この世界の文化レベルってどうなってんの?しかも、父さんや爺ちゃん自ら畑仕事してるみたいだし……、もしかして、ウチは貧乏領主様?いや貧乏男爵様?)

 そんな事を思いながら、母親に重湯を食べさせてい貰い、満ち足りた気持ちになる。

(でも、こんなに美味しいなら、別にどうでもいいか。豪華な食事が俺に合うとは思えないし)

 そんな事を思うのも、前世の記憶の弊害かなと、内心苦笑する。

 ふと前世むかし食べたコンビニ弁当や、牛丼生活を思い出す。

(あの時は、食事ってより、ただ、胃に詰め込む作業だったよな)

 食事の意味について、しみじみ考えながら、野菜と干しのスープを一啜る。

(食材にも感謝の祈りなんてしてなかったし、食事の意味も希薄に為ってたしね)

 口周りを汚し、母親に口を濡れ手拭いで拭いて貰う。

(俺が生きて行く意味と意義が、この世界になら有るかもしれない)

 再び、ラトゥの食事は進む。

(それに、今の状況を打破出来る可能性を知識を俺は持っている。勿論、この世界で俺の知識全てが活用できるとは思わないけど、いろいろアレンジして活用しきれば、みんなで幸せに成れる筈だ)

 離乳食を、モグモグ咀嚼しながら、時間をかけて深く深く思案する。

(うん、まずは)

 ゆっくりと食事は進む。

(……まずは)

 更に、食事は進み、大人達は、畑や牧場の状況などでの話で会話が弾む中、深く深く考え答えを出す。

(……あれ?、乳幼児の俺に出来る事って無く無い?)

 微妙に現実と理想のギャップを感じた朝だった。


「……ろら、とうおもう?」

(……ロラ、どう思う?)

「わん?」

「ぅん、ないよね」

(うん、無いよね)

「わん」

 春の日差しが暖かい庭で、ラトゥに相談する。

(考えると出来る事が少ないって、言うか無いよな)

 他の乳兄弟と異なり、未熟ながらも言語をマスターしつつあるラトゥは、それで満足出来ずに、更に先を追い求めていたが、成長(特に年齢的な成長)が追い付かなかった。

「あせらないて、てきることかんかえよか」

(焦らないで、出来る事を考えようか)

 日向ぼっこをしながら、結論付ける。

 特訓の成果よちよち歩きを、ぎこちなくだがマスターしたラトゥは庭を散策しようと立ち上がる。

「ろら、いこ」

(ロラ、行こう)

「わん」

 ラトゥに従うように愛犬ロラが寄り添い歩き出す。

 正門近くを通るが、勿論、脱走防止の柵が正門に取り付けてある。

 あれを見ると、母親の悲しそうな顔を思い出す。

「いや、もうにけないから」

(いや、もう逃げないから)

 柵に突っ込みを入れる。

「わん」

 知ってか知らずか愛犬ロラが相槌を打つ。

 

 裏庭まで、よちよち歩き&愛犬ロラに乗って行く。

 裏門にも柵が付いているが、ここからなら愛犬ロラに乗れば、少しだけ麓集落の家々が見える。

 昼間見ると、ログハウス調の家々の中にも一部煉瓦や石を使った家も見える。

 だが、詳しくは分からない。

 この前、母子で観た時から、何度か見に来ているが、ここからの風景では分かる事が少ない。

「しかに、まちなみをみれたらいいんたけと」

(直に、街並みを見れたら良いんだけど)

「わん」

「もうちと、おおきくなてからたな」 

(もうちょっと、大きくなってからだな)

 言葉とは裏腹に、行きたい欲求を抑えきれないに様に、両手で柵をガタガタ揺する。

「おれ、むりくたな」

(俺、無力だな)

「わん」

 愛犬ロラの無邪気な相槌に、マジへこみする乳幼児が裏庭にいた。


 集落を見終わったラトゥは、愛犬ロラから慎重にゆっくりと下りた。最初は勢いよく折りたために、尻餅をついた思い出がある。

「ラトゥ~、ロラ~、何処~」

 遠くから母親の呼ぶ声が聞こえる。

「わん」

 愛犬ロラは、ラトゥの襟首を首が絞まらないように咥え走り出す。

「ぅん、なんかおれのたちはひくくなてない?」

(うん、何か俺の立場低くなってない?)

 微妙な立場の変化を感じながら、ラトゥは母親の元へ連れ(去られ)て行かれる。

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