初代男爵の開拓と功績
現在、この作品は加筆(改訂)作業中です。
まだ、第二話以降は加筆(改訂)作業は終了しておりません。
ご注意ください。
口を開けポカーンと、絵画を見上げているラトゥを母親が優しく抱きかかえる。
我に帰ったラトゥは、初代男爵夫婦の肖像画というか?初代男爵夫婦も入っている風景画というか?を、指差し
「じーじのじーじ?」
(爺ちゃんの爺ちゃん?)
「ええ、そうよ。あなたの御爺様の御爺様、ラザード・ラグナローグ・ハイデ男爵様よ」
優しく微笑む母を見上げながら思う。
(全然、ムキムキじゃ無いじゃん。どっちかって言うと父さんより細いじゃん。)
黒髪緋眼の初代男爵を眺める。
「お隣に寄り添っているのは、ジーモネ・ラグナローグ・ハイデ男爵夫人よ。ジークの御爺様の御爺様の御姉様なのよ。ジークにも面影が見えるわ将来が楽しみね」
さらに、母親は説明しながら乳兄弟を褒める。
(へー、じゃあ俺はジークとは遠縁になるのかな?って、言うか横顔だけど凄い美人、ジークもハンサムになるのかな?)
赤髪碧眼の美人に目を奪われ、ぼんやりと、そんな事を思う。
(あれ?この場所何処なんだ?聞いてみるか)
絵を指し、ラトゥが聞く
「あえ、とこ?」
(あそこは、何処なの?)
「ん~、この絵は、ずっと昔のこの場所、この屋敷がある場所よ」
再び口を開けポカーンとするラトゥ
(一から、ここ作ったの?って、言うか礎を作ったの?)
記憶の中の、ちょっと苦い外出した思い出を探る。よく見てないけど、ちゃんとした村だった様な気がする。
「ラトゥには、まだ難しかったかしら、昔はこの一帯、いいえハイデ男爵領は全て荒野だったのよ。それを当時の皇帝陛下から爵位と共に下賜されて、初代様が開拓したの」
ラトゥの頭を撫でながら、話を続ける。
「最初は、苦労の連続だったらしいわ」
少し遠い目をして、母親が語る。
「でも、周りの領主様達が、いろいろ援助してくれたらしいの、特にお隣の大公様にはお世話になったらしいのよ」
(皇帝?って、ここって帝国とかなのか。しかもお隣?に大公までいるのか。援助ってことは、友好的なのかな?)
ドワーフやエルフに会った時のように、目をキラキラ、胸をドキドキしながら思いを馳せる。
(ヤバい異世界、楽しそう。ちょっとだけ、転生出来て嬉しくなって来たかも)
少し何かを考え込んでいた母親はラトゥを抱えたまま、応接間から子供部屋に移動して乳幼児用の外套をラトゥに着せる。
「これで、寒くないかしら?」
「ぅん」
(うん)
再び、抱えられる。
(あれ?、庭に出るのかな?)
母子と愛犬は野外へ、屋敷の外へ向う。ただ、正門でなく裏門へと
そこには、
「ぅわぁぁぁ~」
ラトゥが感嘆の声を上げる。
屋敷のある丘からは、すっかり雪が解けた領内の家々や畑を、夕焼けが鮮やかに染めているのが一望出来る。
「ここは、私のお気に入りの場所なのよ。ラトゥは、初めてね」
優しく撫でられながら、
「私がお父様に嫁いだ時、すぐここに連れてきてもらったの、素敵な場所でしょ」
昔を懐かしむような微笑みで、語りかける。
ラトゥは、無言で頷く。
落ち着いてみた領内は、ログハウス調の家並みが続く、初めての外出に感じた大きな村というよりチョットした町と言った感じだ。
更に土壁だろうか?石壁だろうか?を、境界線に外は、田園風景、更に所々に森林が見える。
屋敷内の絵画での風景とは、まるで変わっていた男爵領が此処にはあった。
(あの荒れ地が、こんなに変わるんだ。いや、変えられるんだ。家や畑だけじゃない植林もしたのか?どれだけ、考えて領地経営いや開拓したんだ?)
現代日本の農業および環境の知識と照らし合わせ舌を巻く。
(凄い、凄すぎる)
どれだけの時間、領内を眺めていただろうか。
夕陽に染められていた世界は、ゆっくりと夜闇に傾き星月が存在を主張し始める。
「きれいね。こんなきれいな世界だけだったら、良かったのに……ね」
少しだけ悲しく切なそうに、何かを含んだようにつぶやき
「まだ、寒いわね。御家に帰りましょう。風邪引いちゃうわ」
再び、母子と愛犬は屋敷に向かう。
そんな母親の意味深な言葉を、
(これなら、この領地なら俺の現代日本農業の知識が活かせるかもしれない)
ラトゥは初代男爵の功績に対する称賛と、自分が出来る事または出来そうな事を考えるので一杯で、聞いていなかった。
次の日、遊びに来た乳母達と乳兄弟達。
赤髪の乳兄弟だけでなく銀髪の乳兄弟でさえ、ぎこちなくだがよちよち歩きしていて、ちょっとへこみ昼寝(不貞寝)した後、よちよち歩きの特訓を陰ながら愛犬と再開したのは、また別の話である。