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スカーレット・アイズ(旧:異世界辺境生活)  作者: 長靴を履いた犬
異空間と、二つの月と、大切な友達。
5/13

初代男爵家族と風景画

 現在、この作品は加筆(改訂)作業中です。

 まだ、第二話以降は加筆(改訂)作業は終了しておりません。

 ご注意ください。

 暖炉付きの応接間の一角で、ラトゥはふらつきながらも恐る恐る一歩を踏み出す。

 二歩、三歩踏み出し一見順調に見える。だが四歩目で、バランスを崩して後ろに倒れかかる。

「あっ、わっ、わわわっ」

 手をバタバタさせ、必死にもがくが努力空しく後方に傾く。

 舜時に、主人の危機を察した愛犬ロラが倒れかかったラトゥを支える。

「ありかと、ろら」

「わん」

 愛犬ロラの首を抱きしるようにしがみ付きながら、頭をナデナデし、再び離れ。

(なんとしても、よちよち歩きをマスターする)

 脳裏には、愛犬ロラを、よちよち歩きで追いかける。赤髪碧眼の乳幼児ジークの姿が

(同じ時期の生まれの乳兄弟に出来て、俺に出来ない筈はない。)

 気合いを入れ直し、歩行訓練を再開する。

(その為には、特訓だ)

 再び数歩で体勢を崩し、愛犬ロラが助けに入る。

(思い出せ前世むかしを、あんなに普通に歩いてたじゃないか)

 午前中を費やし頑張る。だが乳兄弟ジークには、遠く及ばなかった。

 だが、ラトゥは何十回目になる転倒もどきを繰り返し、その中でコツを掴みかけていた。

(もう少しだ。もう少しで……)

 更に訓練をしようと再び立ち上がった瞬間

「ラトゥ、お昼ご飯よ」

 母親に抱きかかえられ、応接間から食堂に強制移動される。

 勿論、バタバタ抵抗するが、無駄と諦め抵抗を止める。

(まあ、ちゃんと食事と休憩をとらなくちゃ、いいトレーニングは出来ない)

 やや言い訳がましくまとめ、午前中の訓練を終了する。

 部屋では、祖父と父親が席に着いている。

 全員、揃ったのを確認すると祖父が黙祷し、短く神と食材に感謝の祈りをする。

 全員が、その行為に倣い一家の食事が始まる。

 大人の食事は、黒パンと干し魚と野菜のスープらしい。

 ラトゥは、大麦の重湯と干し魚と野菜のスープと言った離乳食を母親に食べさせて貰い、一口一口ゆっくりと味わう。

(この世界の魚とか野菜、普通に美味しいんだよな。なんか濃厚って言うか、素材の味がしっかりしてるって 言うか。これだけは、この世界に転生できてよかった)

 しみじみ思い、転生させてくれた神にも感謝する。

 昼食後の昼寝の後、午後も再び、歩行訓練しようと気合いを入れ応接間に向かう。

 やはり愛犬ロラと共に、廊下でも訓練を兼ねて進む。


 屋敷で一番広い応接間で着くと、トレーニング再開する。

 午前中と同じように、何度も転倒しかけ、同じ数だけ愛犬ロラが助ける。

(つ、疲れた)

 仰向けに倒れたラトゥを愛犬ロラが覗き込む。

(一朝一夕で出来るとは思っていなかったけど、これ難しいぞ。ロラがいなかったら、何度、頭から転んでることか)

 息を整え、再び立ち上がり

(まあ、いい。個人差があるんだよ。個人差が、現に銀髪の乳兄弟イグナーツは、まだハイハイじゃないか)

 かなり言い訳がましく纏め、トレーニングを中断する。

(さ、次は文字の勉強だ)

 絵本を求め、子供部屋に向う。

「ろら、いこ」

(ロラ、行こう)

 ラトゥは応接間の扉に二足歩行もどきで向かう。

 その足取りは重心が安定してない事に加え疲れが蓄積している結果。

「あっ、わっ、わわわっ」

 バランスを崩し後頭部から倒れそうになる。

 愛犬ロラが、あわててラトゥの幼児服を咥える。だが、咥えた場所が悪かったか一瞬にして幼児服の襟首がラトゥの首を絞める。

 パニックになったラトゥが暴れ、愛犬ロラも状況を把握出来ずにラトゥを起こそうとして、更に首が絞まる。

(ヤバい、マジで死ぬ)

 無我夢中でラトゥは、愛犬ロラをタップする。

 やっと意思が通じたか、愛犬ロラはラトゥを寝かす。

(死ぬかと思った)

 大きく息を吸い込み肺を酸素で満たす。

(頸動脈が絞まってたら、アウトだったな)

 嫌な汗を掻きながら、心配そうに伺う愛犬ロラを見る。

「ろら、ありかと、ても、いまのは、めっ」

(ロラ、ありがとう、でも、今のは止めて)

 切実な訴えに、愛犬ロラが頷く。

(分かってんのかな?)

 ちょっと、この練習方法を考え直しながら、めったに見ない応接間の天井を見る。

(あれ?あんな絵あったんだ)

 そんな中、応接間に飾ってある一枚の絵に気づく、乳幼児の身長からの視野の低さで気付かなかったが、仰向けになったことで、視界に入る。

 荒野を見渡しているような紳士と貴婦人、その足元には飼い犬だろうか?やや斜めから見える紳士と貴婦人の横顔、まるで荒野を紹介するような構図のようにも見える。

 特に目を魅かれたのは、印象的な紳士の緋色の瞳だった。

(なんだろう?この絵、こう言う応接間には家長の肖像画とか飾るんじゃないの?あの眼の色、爺ちゃんや父さんじゃないし……)

 起き上がり、愛犬ロラに摑まる。だが、視線は絵から離れない。

「どうしたのラトゥ?」

 さっき暴れた騒ぎを聞きつけて来たのか、母親がやや慌てて来る。

 衣類の乱れを見て、心配そうに声をかけるが、ラトゥの視線は絵を捉えて離さない。

「あれ?」

(あの絵は?)

 母親も、飾ってある絵を見る。

「あの絵は、あなたのお爺様のお爺様と、お婆様のお婆様よ。初代ハイデ男爵夫妻で、この領地を開拓した偉い方々なのよ」

 ラトゥの衣類の乱れを整えながらの母親からの言葉は、衝撃的だった。

(……この家、爵位持ちだったんだ。って、言うか。俺、跡取じゃん)

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