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スカーレット・アイズ(旧:異世界辺境生活)  作者: 長靴を履いた犬
異空間と、二つの月と、大切な友達。
4/13

事件後の穏やかな日々

 現在、この作品は加筆(改訂)作業中です。

 まだ、第二話以降は加筆(改訂)作業は終了しておりません。

 ご注意ください。

 あの日を境に、屋敷に穏やかな日々が再びゆっくりと流れる。

 ラトゥはドワーフやエルフもいる世界を、もっと見たい。知りたい。欲求が高まっていた。だが、あの事件で両親との時間を素直に過せるのは、幼い今だけだと気付き、理性で行動することを控え、本能に任せて行動することも多くなった。

 両親達も、考えるところがあったのか、天候が穏やかな日には、庭で遊ばせてくる様になった。

 もちろん、乳兄弟と一緒に遊ぶこともある。

 赤髪の子がヤンチャで銀髪の子を、よく泣かしていたが、ラトゥが二人を宥めてよく纏めていた。さすがに、この時だけは本能に任せると収拾が着かないので、この場だけは愛犬ロラと頑張った。

 基本、大人は子供同士のことに対しては、遠くで見守り極力干渉を避けているようだ。

(まあ、正しいと思うけど、こっちの身にもなってよ)

 ラトゥはぼやく。

 だいたい最後は、愛犬ロラの尻尾や毛を引っ張られ、吠えて泣き出すか、愛犬ロラが逃げ出して、赤髪の子が泣き出すかのパターンになってきた。

 ついでに、一人が泣き出すと、つられてもう一人も泣き出す事が多々ある。

 

 この日も、また……

(本当に、勘弁して下さい)

 乳幼児らしくない溜め息を吐きながら、泣き続ける二人を玩具であやす。

 愛犬ロラは、別の部屋に逃げたまま帰って来ない。

 この疲れも出たのか、二人と乳母が帰った後、暖かな暖炉の前で横になっていた愛犬ロラにもたれかかる。

(……急ぎ過ぎたよな)

 暖かい部屋で眠気に誘われ、まどろみながら、あの日の事を思い出す。

(あの日、あの後のことは、よく憶えていない。ただ、母親の涙と、母の手が冷たかった事、いつの間にか 寝てしまい起きた時に、また母親に泣かれた事。だけを、思い出す)

 愛犬ロラの耳がピクピク辺りを窺いながら、ラトゥを守るように丸まる。

前世むかし現世いまも、生みの親には迷惑かけてばっかりだ)

 意識が途切れる間際、愛犬ロラにしがみつくように包まられ夢に落ちる。


 前世むかしも、犬を飼っていた。

 だからだろうか?愛犬ロラと一緒に寝ていると、前世むかしの夢を見る。

 平凡な人生、どこで狂ったのか?確認させるように……

 前世むかしは、特に目立った成績でもなく、普通に中学を卒業した。進路は実家が農家だった関係で農業高校に推薦され、農業科で学んだ。

 両親と祖父母は喜んでくれた実家を継いでくれる。と、

 そのまま卒業後、大学農学部に進み醸造微生物学を専攻した。

 卒業後は、小さい酒造会社に就職した。これは、あまり喜んでもらえなかったようだった。

 社会人生活は、それになりに充実していて、学んだことを生かせるのは楽しかった。

 だが、会社が倒産したことで全てが変わる。

 実家に帰って来い。向いて無かったんだから家を継げ。再三にわたり電話、メールが来た。

 でも、素直になれなかった。意地になって先輩の伝手を頼り就職した。仕事はきつかったし、向いているとは思えなかった。だが、気がついたら戻るに戻れなくなっていた。

 前世あのときの自分も前世あのときの父親も、意地を張り続けた。

 結果、死んだ。

 自分が選んだ結果を、時に鮮明に、時に漠然と、ゆっくりと何度も遡り同じに夢を見る。


「んっ?」

 頬をくすぐったく感じ、身をくねられる。

 ラトゥが気付くと、愛犬ロラが頬を舐めている。

 知らない間に涙が一筋流れていた。

「ありかと、ろあ」

(ありがとう、ロラ)

 愛犬ロラに、しがみ付き頭を撫でる。

(一昨日は、高校時代に入った歴史研究同好会の夢だった。思っていたより充実し過ぎていて、楽しく切ない思い出が詰まっていた。だけど、あまりにもリアルすぎて……ちょっとぐらい美化してくれても……)

 少し遠い眼をしながら、前世むかしの鮮明な夢に苦笑した。

 いつの間にか、暖炉の火は消えていたが、まだ十分暖かかい。

(もう少しで、春が来るのかな?)

 いつもの寒さが、だんだん和らいで来た事を感じていた。

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