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スカーレット・アイズ(旧:異世界辺境生活)  作者: 長靴を履いた犬
異空間と、二つの月と、大切な友達。
13/13

ドワーフと有輪犂の話

 現在、この作品は加筆(改訂)作業中です。

 まだ、第二話以降は加筆(改訂)作業は終了しておりません。

 ご注意ください。

 気だるい昼下がり応接間で、三人と一匹は一時を過ごす

 大人二人が皮を張った椅子に座り、祖父の膝に幼児ラトゥが乗る。足元には忠犬ロラが横たわり、ウトウトし始める。

 そんな中で、祖父とドワーフ(カザト)の有輪犂の話が穏やかに始まる。

「これを見てくれ」

 三枚の羊皮紙を取り出し広げる。

 そこには、新しい有輪犂ヘビー・プラウもどきの図案と以前の犂二つの図案が描かれていた。

「ほぅ、これは」

 興味深そうに、ドワーフ(カザト)は図案を見る

「斬新じゃろう」

 自信満々の祖父の膝で、幼児ラトゥは怪訝な顔を必死で抑える

(最悪だ。進化の方向性が全く違う。何故こうなる?)

 確かに、ラトゥは初代ラザード・ラグナローグ・ハイデ男爵の名を騙り、有輪犂ヘビー・プラウの方向性を説き、自然に有用性が見出される筈だった。

 だが、

「これで、作業効率が良くなるはずだ」

 自信満々の祖父と、平常を装っているが頭を抱えたくなるラトゥがドワーフ(カザト)に向き合っていた。

「ふむ、車輪をつける事によって、速度が上がるみたいですな」

 顎鬚に手をやり、ドワーフ(カザト)は図案から、利点を読み解く。

「その通りだ」

(違うんだ。有輪犂ヘビー・プラウは、深く耕す為の犂であって速度を求めていない。求めているのは作業効率より作業の質なんだ)

 対照的な心境で、ラトゥは祖父の膝に乗っていた。

(風向きを変えなくては)

 苦々しく思うが、切っ掛けが無い。

 幼児ラトゥは、他の図面に視線を落とす。

木製犂スクラッチ・プラウ金属切断面使用犂クルックド・プラウの狭間か、微妙な技術レベルだ。この世界の技術レベル読み違えた。しかも、牛一頭曳き用の犂じゃないか、普通は牛二頭牽きじゃないのか)

 農場で改良型犂を見て無かった事を、苦々しく思う。

 祖父とドワーフ(カザト)の話がスムーズに進む中、ラトゥは、木製犂スクラッチ・プラウ金属切断面使用犂クルックド・プラウの過渡期に、多連動犂モールドボード・プラウを素っ飛ばし有輪犂ヘビー・プラウの知識を持ちこんだ弊害に頭を悩ます。


 その中で、二人の話が進み、技術提供の話も出始め、ラトゥ思わず天(天井)を仰ぐ。


 そこには、

(あ……、)


 視界に、初代ラザード・ラグナローグ・ハイデ男爵の肖像画が入る。

(再び、お借りするか)

 意を決し機会を待つ。


 話は進むが、徐々に脱線しかけ

「話はも……」

 話を戻そうと、祖父が雑談を切ろうとした時、膝の上のラトゥが動く。

「ね、ね、じーじ」

(ねぇ、ねぇ、お爺様)

「なんじゃ、ラトゥ?」

(ラトゥが、初代様からの言葉を聞いて居なければ話が変わっていたし、もしかしたら……)

 さらなる言葉を期待して、今まで大人しくして居たラトゥに、視線を落とす。

「そういえは、したいさまかいてたの」

(そう言えば、初代様が言ってたの)

「初代様が、何を言っていたんだ?」

 不思議そうに、祖父はラトゥに問い掛ける。

「しりんのついたすきは、てつてつくれて」

(車輪の付いた犂は、鉄で作れって)

 一瞬、ポカーンとする祖父を後目に、ラトゥは考えを纏める。

(もういい。多連動犂モールドボード・プラウは、取り敢えず置いて置く。その上で、深く耕せて、ある一定の作業能力を持つ有輪犂ヘビー・プラウの制作に舵を切る)

「鉄でか?」

「うん」

 笑みを浮かべながら頷くラトゥに、祖父は困惑する。

「鉄で作ったら重くなるぞ、しかも、作業効率も悪くなる」

 不満そうに応える。

「ても、ふかくたかやせるていてたよ」

(でも、深く耕せるって言ってたよ)

 ニコニコと、ラトゥが返答するが

「深く耕せても意味がないだろう」

 とても微妙な顔で、祖父は疑問を口にする

「ふかくたかやせると、さそうかはえにくい。て、はなしてたよ」

(深く耕せると、雑草が生えにくい。って、話してたよ)

 疑問に応えるラトゥに対し

「しかし、鉄で作ったら車輪が付いていても重くて、一頭では効率が悪かろう」

 否定的な言葉で返す。

「うん、たから、うしにとうかよんとうて、ひくといいていてたよ」

(うん、だから、牛二頭か四頭で、牽くと良いって言ってたよ)

「……むぅ」

 ラトゥの言葉を無下にする訳にもいかずに、祖父は困惑する


 暫しの沈黙


 祖父と孫の間での会話で、蚊帳の外だったドワーフ(カザト)が、ためらいがちに口を開く

「車輪を付けるとの発案は、もしかして」

「あぁ、ラトゥが夢の中で、初代様。ラザード・ラグナローグ・ハイデ男爵の御言葉を聞いたので、それから試行錯誤して、絵図を引いたのじゃ」

 頭を掻きながら、祖父は答える。

「我等は、しばらく滞在する予定ですので、この話は時間をかけて話し合いませんか?」

「そうじゃな」

 一先ず話が終わった雰囲気が漂う。

(取り敢えず、最悪の方向性は回避できたようだな)

 この雰囲気に、幼児ラトゥは胸を撫で下ろす。だが、ここは異世界、日本では無い。何が起こっても不思議では無い。

(真田先輩、こんな時、どうすればいいんですか?)

 微妙な空気の中、前世で高校の先輩に現実逃避の話を振り

(出来たら、マジ変わって欲しい)

 現実逃避代わりに、ぼやく。

「ふむ」

 ドワーフ(カザト)が興味深そうに幼児ラトゥに顔を近づける

(……恐っ、なに?なんだよ)

 ちょっと仰け反りながら、幼児ラトゥは視線を合わせる。

(視線を逸らしたら、なんかに負けそう。って言うか逸らせない)


 ドワーフ(カザト)と幼児ラトゥは、一時の間、見詰め合う。


「ラックス殿、一つ頼みがある」

 ドワーフ(カザト)が、徐に口を開く。

「なんじゃ?」

 ラックスと呼ばれた祖父ラックスは図面と睨めっこしながら、何処か上の空で応える。

「ラトゥ殿を儂の娘の婿にくれ」

 ドワーフ(カザト)が意を決し、重い口を開く

「駄目だ」

 間髪入れずに、応え

「駄目か?」

 短い言葉の遣り取りが二人の間で行われる。

「駄目だ。ラトゥは、息子の次にハイデ男爵領を継ぐから婿にやれん」 

「じゃあ、儂の娘をラトゥ殿やる。ついでに、鉄製の有輪犂を婚約祝いに作ってやる」

 ドワーフ(カザト)が、早々に折れる。

「……それならいい」

 あっさり、祖父ラックスが認める。


(えぇっと、なに俺、齢一歳ぐらいで、許婚ですか?あぁ、あれですか。絵本であった善良な領主が、些細な切っ掛けで幸運が訪れる物語のアレですか。って、言うか。本当に、何が引き鉄なるか分らないですよ)


 少しパニックになりながら、膝の上から祖父の顔を見る。

 思案顔で見つめる視線の先には、図案が描かれた三枚の羊皮紙。

(えぇっ~と爺ちゃん。実は、話半分で言ってない?)

 視線を正面に戻すとドワーフ(カザト)は、一向に視線を幼児ラトゥから離してない。

(なんか、ドワーフ(カザト)さんは、マジみたいですよ。御爺様)

 祖父と孫の足元で、スピスピ鼻を鳴らしながら忠犬ロラが眠っている中、一方的に婚約が決まった瞬間だった。

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