絵本から読み解く世界
現在、この作品は加筆(改訂)作業中です。
まだ、第二話以降は加筆(改訂)作業は終了しておりません。
ご注意ください。
初代様の威を借りてから、数日経つ。
その間、幼児は乳兄弟と遊んだり、忠犬と遊んだり、部屋の絵本を読んだりし、過ごしていた。
一方、祖父は農具が散乱している実験部屋と食堂と寝室の往復で、食事中での父親との会話も、有輪犂の話が中心になるぐらい、試行錯誤している。
ただ、祖父の表情は、幼児から見ても生き生きしているので、心配はしていないが、根を詰め過ぎないか、その点だけ気がかりであった。
天気のいい日は、リンゴの木の陰で、横になっている忠犬を枕に幼児は、くつろぐのが日課となっている。
最初は両親も気にしていたが、最近では問題行動も起さないのと、忠犬も一緒なので心配していないみたいだ。
今日も、木陰から漏れる春の日差しを受けながら、口元に手を当て一人考えを纏める。
「ま、のうくのかいりうたけてもためなんたよな、とうりくてあるかちくをふやさないと、そのためにもとうきのかちくしいくをかのうにてきるりんさいしきのうきうて、そのけかかきうこうちをはいすることかかのうになるんたよな」
(まぁ、農具の改良だけでも駄目なんだよな、動力である家畜を殖やさないと、その為にも冬季の家畜飼育を可能に出来る輪栽式農業で、その結果が休耕地を廃することが可能になるんだよな)
前世からの癖で、考え事をつい口に出してしまう。だから、口元に手を当ててしまう。
「もんたいかないわけしないけと……」
(問題が無い訳じゃ無いけど……)
頭をガシガシ掻きながら、
「おれかつくとしても、こうけいこてはかいかくはむつかしいかもしれない」
(俺が継ぐとしても、後継直後では改革は難しいかもしれない)
地球で起こった過去の後継者問題が頭の中をグルグル回る。
「ないかいてのしふんのたちはもわかてないもんな」
(内外での自分の立場も分って無いもんな)
行き着く先は、幼児の力不足と情報不足に嘆きながらも、自分の出来る事を必死に探す。
「こんこのためにも」
(今後の為にも)
眉間にしわを寄せて考えるが、実績を出せない以上、選択肢は多くない。
一通り悩んだ後、気晴らしに日課の絵本を読む。
勿論、単語と意味を確認しながら、一枚一枚ページを捲る。
いつもの絵本とは、別な見た事の無い絵本を手に取った。
自分の部屋にある絵本棚の奥に、隠すように置いてあった古臭い絵本。
「かみさまのはなしかな?」
(神様の話かな?)
すぐにページを捲り読みだす。
「せかいは、しうさんしんのたいしん、こしうにのちうしん、さんひくろくしうよんしんのしうしんかいる」
(世界は、十三神の大神、五十二神の中神、三百六十四神の小神から成る)
いつも読んでいる本とは、毛色が違う事に幼児は興味を示す。
「しうさんしんのたいしんかつきをつかさとり、こしうにのちうしんかしうをつかさとり、さんひくろくしうよんしんのしうしんかひをつかさとる」
(十三神の大神が月を司り、五十二神の中神が週を司り、三百六十四小神が日を司る)
「しうさんしんのたいしんのもとに、それそれちうしんかよんしんあつまり、そのよんしんのもとにしうしんかななしんあつまる」
(十三神の大神の元に、それぞれ中神が四神集まり、その中神の元に小神が七神集まる)
「かみかみかひとまわりしたときのはしまりとおわりのいちにちに、かみさまかつといかいきをおこなう」
(神々が一回りした時の始まりと終わりの一日に、神様が集い会議を行う)
「かいきはよんとにいちと、ふつかかけておこなわれる」
(会議は四度に一度、二日掛けて行われる)
「しうにしんのたいしんは、それそれ、ひ、みす、つち、かせのよんけんそにそくす」
(十二神の大神は、それぞれ、火、水、土、風の四元素に属す)
「よんけんそにたいしんそくし、ししんいしんとそくしんにしんにたちはかわかれる」
(四元素に大神三神属し、主神一神と属神二神に立場が分かれる)
「ひはかせをよひ、かせはあまくもをよひ、あまくもはみすをふらせる。みすはつちをはこひ、つちからひはうまれる」
(火は風を呼び、風は雨雲を呼び、雨雲は水を降らせる。水は、土を運び、土から火は生まれる。)
「なんた、これ?」
(何だ、これ?)
途中で幼児は首を傾げ、読むのを中断する。
(この世界では、確か本とか貴重なんだよな?)
訝しげに本を見直す。
(文化レベルがどれだけか分らないが、乳兄弟達が絵本を食い入る様に見ていたので、そこから推測していたが……、これ、何?)
現代日本であれば、軽く流していたかもしれないが、異世界では逆に興味を引かれた。
「いたすらにしては、かねかかかりすきてる」
(悪戯にしては、金が掛かり過ぎてる)
いろいろ考えたが、答えは出ない。
そんな中、心地よい春風が頬を撫でる。
忠犬が、耳をピクピクさせながら寝息をたてている。
大きく深呼吸し、
「ま、いい。それよりないようかきになる」
(まぁ、良い。それより内容が気になる)
途中だが、最初に戻り内容を確認する。
(十三神の大神が月を司り、五十二神の中神が週を司り、三百六十四神が日を司る。は、歳月の事か?)
眉間にしわを寄せながら、読み解く
(時の始まりと終わりの一日に、神様が集い会議を行う。ってのは、日本で言う神無月とかを揶揄してるのか?三百六十四に一を足して三百六十五日で一年って事か?)
ブツブツ幾つかの単語を呟きながら、
(だったら、四年に一度、二日間行われるのは、閏年の事か?)
同じページを、何度か読み返し考える。
(四大元素に神が分かれるのは、まだ理解出来る。それに、火は風を呼び、風は雨雲を呼び、雨雲は水を降らせる。水は、土を運び、は、お互いの成り立ちを示してると考えると、納得がいくが、土から火は生まれる。は、マグマの事か?)
何度かページを捲り直しながら
(それより気になるのは、途中から十三神の大神の内、一神の記述が不自然に途切れてる)
不審な点に眉を顰める。
書かれていない一神の記述を探す為に、流し読みで読み進めると、世界の事について書かれている。
四つのグループに分かれた主神は、それぞれ四季に関係しているとか、四大元素が四季に関係している事とか、それぞれ季節の最初、中間、最後の時期には、どの神が司るなど記述もある。
だが、肝心の十三神の大神の内一神の記述は無い。
(それに、この本。後半の数ページが故意に破損している)
丁寧に切り取られた跡は、最近のモノでは無い事を確認する。
(分からない事ばかりだ。男爵家の本は、大切にされてるから状態が良いのに)
分からない事ばかりで、幼児は頭を抱える。
(第一、幼児に見せる本の内容か?意味深過ぎるだろ)
「なんて、こんなしせきかうちにあるんた?」
(なんで、こんな書籍が男爵家に有るんだ?)
その声に合わせたように、忠犬が大きく欠伸をする。
幼児の問いに、答える者は居なかった。




