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忍び寄る殺気―紫嵐(しらん)―
氷魚は、まだ寝ている瑪瑙を、起こさないように部屋を出て行った。
間の空いてしまった十日間、氷魚の分の仕事も、瑪瑙はしていたのだろう。
彼は、文句一つ言わなかった。
「さて、と…まずは洗濯洗濯」
井戸の脇に、洗濯物を詰めた籠と盥を置き、氷魚は、水をくみ上げた。
空は青く澄み、冷えた、朝の大気が肌に心地よい。
こんな、当たり前のことを、人として暮らしていた頃は当然、日常にあるべきものだと、大して気にも留めていなかった。
今、改めてそう実感する。
干した洗濯物が、風になびく。氷魚は、異様な色に変色してしまった、自分の髪を押さえた。
一体、どうしたというのだろう?この変化は。
そんな時、氷魚は凍ったように、動きを止めた。
あの、いつか自分と瑪瑙の前に現れた、猫の形をした、妖魔の気配だ。
しかも、ひどく殺気だっている。
彼女は身を翻し、村の出口への道を走った。
壊してはならない。
瑪瑙の村を、人々の、幸せな日常を。
どうも、維月です。
やっとショックから立ち直った氷魚ですが…
悲惨です、また新たな試練が!?
この先、どうなるのかまだ分かりませんが、よろしくお願いしますです。