僕と現実と黒衣の怪人達
ここで初めて書いた小説で、
まだまだお見苦しい所はあると思いますが、
どうぞ最後まで読んでいただきたいと思います。
できれば感想なども書いていただければうれしいです。
現実とは、無味乾燥なものである。
少なくとも僕にはそう感じられた。
季節は冬、もう少しで高校受験というときに、
僕は、木枯らしの吹く駅前の道をぶらぶら歩いていた。
意味は特になかった。
しばらく歩くと鬼気迫る表情になりながら、塾へ入っていく集団を見つけた。
持っていた鞄は重そうだった。
「あ~あなにやってんだろ・・・」
そう呟いてみたが、この空しい気持ちは何も変わらなかったのであった。
家に戻った。
「ただいま~」
そう言ったが、母がいるであろう台所から変えってきたのは、
「ただいまじゃないわよ。勉強はどうしたの?
宿題は?もう高校受験でしょ?今までなにやってたの」
と言う言葉だった。
もちろん台所は素通りした。
部屋に戻った。
ここだけが心の休まる場所だった。
黒い制服を脱ぐと、
「分かってるよ・・・」そう呟きながら椅子に座り、机に突っ伏した。
そんなことは分かっていた。
勉強しなければならないことは。
成績は中の上。志望校にぎりぎり届く程度。
油断・・・とも違う中だるみ。
僕だって受験に近づく前は良く勉強していた。
中学校時代を振り返ってみた。
まさに無味乾燥だった。
やっていたことといえば勉強ばかり。
彼女も出来ない。友人は出来たが、最近、あまり話さなくなった。
受験のせいだろうか。
クラスの中でも孤立していた、普通の市立の中学であったので、
他のクラスの面々は高校受験に備え、熱心に勉強していた。
彼らにとって、勉強にあまり熱心でない僕は、異質な存在だったのであろう。
そして僕は今、潤いを求めている。
そんな中、思い出したことがあった。
僕の中学には、黒衣の怪人達の噂があったことだ。
受験期、つまりは冬、夜中に学校へ入ると、黒い服の人々に会えるというものだった。
そして、会うと受験が上手くいく、と言うものらしかった。
聞いたときは下らないと思った。高校に受かるように、との願望が重なって出来た
妄想の産物だと。
10分後、僕は校門の前に居た。
黒衣の怪人を信じる気持ちは毛頭なかったが、
心に潤いをもたらしてくれるかも知れない。という可能性だけで十分だった。
制服は着てきた。侵入がばれたときに忘れ物を取りに来た。といえるからだった。
夜闇の中では一層、制服は黒く見えた。
学校に入った。薄暗く、人の痕跡のない校舎は、不気味になった。
下駄箱・・・居ない。
1階・・・居ない。
2階・・・宿直の先生の影を見つけた。そういえばこの学校は珍しく
先生の宿直があった。
それからは足音に気を付けながら階段を上っていった。ここまで来て引き返してたまるか。
3階・・・居ない。
最後の希望の4階は・・・
居ない。
何だガセじゃないか。
そう思うと無性に悲しくなった。
今来た階段を引き返した。
1階に戻ってきた。
すると、廊下の角からなにやら話し声が。
声の元まで急いで駆け寄っていった。
まさか―
本当に―
そこに居たのは、黒い制服を着た友人達だった。
いや、暗くてよく見えないが奥のほうには、まだまだ人が居るらしかった。
その人々も黒い制服を着ていた。
「おいこっち来いよ~お前も怪人追ってきたのか?皆も来たらしくてな
このまま帰るのもアレだからよ。一緒に集まってたんだ。勉強も飽きたしさ。
お前も来るか?」
そう友人は言っていた。
なるほど、黒衣の怪人達ってそういうことだったのか。
そう考えながら、
足は動いていた。
向こうに行くか行かないかはもうとっくに決まっていた。
今夜は久々に楽しい夜になりそうだった。