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町に着いたら

 里で用意してもらった食料をおいしく頂き、俺達はまた歩き始めた。食料の中に生物はほとんど無かったので、あまりは何日か保存しておけそうだった。


「なあシャロ、この世界ってどうなってるの? 水の大陸とか何?」


 一人で先を行くリク君と付かず離れずの距離を保ちながら、隣のシャロと会話をかわす。


「地図を見た限りでは、三つの大陸から構成される世界なようですね。空、水、土とあって、今いるのが水の大陸と言うわけです」


「時の王様ってのはどこにいるのかね?」


「うーん。……どこでしょうか?」


 何だかんだ言って、俺達には情報が足りない。シャロが全て知っていて俺のサポートをしてくれるものだと思っていたが、どうやら違ったらしい。

 これはやはり、あの本を消したのが不味かったか。


「仕方ないな。まあ、町に行けば分かるかもしれないから大丈夫だろ」


「あ! 一つだけ手がかりがあります!」


 何かを閃いた様子のシャロ。これは期待出来るのか?


「何?」


「時の王の元へ行く為には通行証が必要、……だった気がします」


「ほう。なるほどな」


 話してる途中から自信が無くなったのか、保険をかけるシャロ。そんなところも可愛い。


 ただ、仮に通行証が必要だとすると、道を通る必要があるのか。また、誰の許可が必要なのか。謎は深まるばかりだ。


 やはり、出発前にもっと詳しく聞いておくべきだった。


「ねえねえ、リク君。ちょっと聞きたいんだけどさぁ」


「……何ですか? 早く言って下さい」


 数歩前を行くリク君との距離を一気に詰め、俺は彼の隣から質問する。


 てか、すごく嫌そうだな。絶対友達少ないよ、リク君。


「ああ、あのさぁ。リク君は何か目的があって俺達と一緒にいるのかい?」


「……それは違います。あの里から抜け出そうとしていた時に、たまたまあなた方が現れ、長の意向があって僕がここにいる。それだけです」


 直球で聞いた俺にリク君が返したのは、今までの説明と何ら変わりの無い素っ気ない答えだった。


 いよいよもって、信用出来ない流れになって来た。


 シャロは情報を持っていない。リク君は訳ありっぽいけど話してくれない。長とか里とかはそもそも意味が分からない集団。俺自身の能力も詳細不明。


 はじめは簡単な事だと思っていたのに、すでに先行き不安だ。


 ――あぁ! 神は優秀過ぎる俺に嫉妬して、試練を与えているのだろうか!!






 どれほど足を動かし続けていたのか分からないが、森を抜け、街道を進み、町へ辿り着いた。


 リク君の言っていたように、夜までには辿り着いたわけだ。もっとも、辺りは薄暗い。正確には分からないが、あの里から時間にして四時間は余裕で歩いたのではないだろうか。


 インドア派の俺には相当つらい旅路だった。明日は筋肉痛だろう。

 町へ来る途中で通った街道はレンガのようなもので整備されていたし、地図のような物がある事から推測して、それなりに文明は発達しているだろうと考えていたが、予想以上だった。


 水の大陸で三番目に大きいと言う都市――サフィールは、商工業の発達した町だった。


 この町は、主に三本の通りから出来ているらしい。


 まず第一に、町の中心を行く大通り。商業の道だ。


 これは他の通りにも言える事だが、下は石畳になっていて歩きやすいようにしっかりと整備されている。日本の道路のようなアスファルトでは無いが、これはこれでいいのだろう。


 そして、両側に何かの店だと思われる建物が建ち並んでいる。これが昼間だったならばもっと賑やかな雰囲気だったのだろうが、今は落ち着いた様子の空気が流れている。まあ店の中までは見えないので、外に人がいないだけで中で騒いでいると言う事もあるが。


 次に、工業通り。ここには、工業団地などの他に大陸内移動用の列車があるらしい。今後のために後で詳しく調べておきたい代物だ。


 そして、最後は住宅地のある通りだ。町の住人達が住んでいる家だけでなく、旅人のための宿泊施設もそこにあるそうだ。


 それらの通りが小路などで所々つながって、サフィールは形成されている。また、町の中央には大きな広場もあると言う。


「さて、町に着いたのはいいが、これからどうすればいいんだ?」


「……普通は、寝泊まり出来る場所を確保するでしょうね。幸い、食料とお金はあることですし」


 無知な俺をしっかりとサポートしてくれるリク君。実に頼もしい。


 シャロはもはや、マスコット的なキャラクターでしかなくなっている。可愛いから許すけど。


「じゃあ、宿でも探しますか」


 俺は一言声をかけ、先に進む。


「そっちは工業区ですよ。宿泊施設がある方向は逆です」


 やべぇ。これは恥ずかしい。






「はい。三名様ね」


 ところ変わってここは町の宿。なんだかんだ言って急な客に対応出来ない場所が多く、俺達は五軒目にしてやっと宿泊先を決定した。


 結局泊めてもらえる事になったのは、日本で言う民宿のような場所。


 他の場所と違って小規模だが、食事は朝夕の二食出してもらえて、さらに一泊の宿泊費は一人あたり2500ゼーガ。


 ゼーガと言うのは通貨の単位で、価値としては1ゼーガ1円相当らしい。長に用意してもらったのは五万ゼーガなので、そこそこの出費と言える。何か稼ぎ口が欲しいところだ。


「で、夕食はどうするんだい? 今から用意するとなると、時間がかかっちゃうんだけどさあ」


 宿の入り口のカウンターのところで、人の良さそうなおばちゃんが言ってくる。


 俺たち以外に客はいないようで、とくに準備していなかったらしい。


「二人はどう?」


 俺としては、わざわざ準備してもらうのも悪いし、里で貰った物が残っているから別に無理に用意して貰わなくてもいいと思うんだが、やはり二人の意見も聞かなくてはだろう。


「僕は大丈夫ですよ。あなたが好きに決めればいいと思います」


「あ、私も大丈夫ですよ。荒船さんが決めて下さい」


 ……酷いな。俺に決めろと言うのか。俺に全責任を負わせると言うのか。


 まあそれでも、


「今日は大丈夫です。長旅で疲れているので、早めに部屋で休もうと思います」


と言うわけだが。


「そうかい? じゃあ、これが部屋の鍵だよ。その階段を上って直ぐの部屋だからね」


 おばちゃんもずいぶんとあっさりしたもので、鍵を渡して部屋の場所を教えてくれた。


「ああ。それから、家の娘に手を出すんじゃないよ」


 そして、最後に意味深な事を言った。


 俺は二次元の子とロリっぽい子にしか興味無いから大丈夫だと思うけどなあ、とは口に出せなかった。

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