ギルドのトイレ掃除をしたい異世界人の男性さん
男性はトイレ掃除を仕事にすることは難しい。
都会は知らんけど、田舎じゃ電話の段階で拒否されます。やっぱり違和感なのでしょうね。
「なんで…おかしいじゃないですか」
「何かおかしいか?」
「なんで…なんで男性がトイレ掃除をしているんですかっ」
私は何も聞いていない。
出したくなったからトイレに来た。
すると、男性が便器の掃除をしていた。
「何か魔法で仕込んだとかじゃないですよね!?」
という言葉はなんとかのみこんだ。
そもそも、この人はどこから来たんだ。
異世界人かもしれないけど。
その男性は真剣に、こう返す。
「俺にトイレ掃除をさせてほしい」
理解が追い付かないや。
「異世界に迷い込み、最初に思ったことはトイレ掃除をしたい、だったんだ」
なにやら語り出す。
やっぱり異世界人らしい。時々現れる異世界人。トイレ掃除をしたい異世界人なんて初めてだけど、絶対。
「俺はトイレ掃除が好きなんだ。
金運がよくなるらしい。それに、知ってるか!? トイレ掃除をするとべっぴんさんになれるらしい! トイレ掃除をするだけでだ! わかるか!? トイレ掃除の素晴らしさがっ」
わかんない。
「トイレ掃除を仕事にしたかった。
なのに、元の世界では面接すらさせてもらえなかった! 男女平等と言いながら男性はトイレ掃除をしてはいけない!? おかしいじゃないかっ」
何もおかしくない、何仕込まれるか分かんないもん。盗撮の魔法とか。
「ギルド長からは許可をもらったんだ! 女性だったから本当にいいのだろうと確信したがダメなのか!? 俺がトイレ掃除を仕事にしたらいけないのか!?」
熱くトイレ掃除について語る男性さん。
向この世界では皆こうなのか、私には分からない。
悪い人ではなさそうだ、頭は悪そうだけど。
「ダメなのか!?
いっそ土下座をするしか…」
「わ、私はいいですよ? 別に」
「本当か? 受け取ってくれるか、この気持ちをっ」
「はい。私は、ですけど。ギルドの他の方々や、ギルドを利用する冒険者さんたちは分からないですが」
「そうか! ありがとう、異世界に来てよかった」
「だから、だからですね?」
「なんだ」
「早くトイレを使いたいな」
「もう少しで終わります。独学のトイレ掃除が」
「あと、掃除中は掃除中って紙をはった方がいいかな」
「なるほど」
後日。
「今日もありがとうございます」
「ふう。少しはべっぴんさんになれたかな」
「私、お菓子を作るのが趣味なんですよね。よかったら、後ででうぞ」
「わかった! ありがとう!」
「後でっ、てか手を洗って! 汚い手で食べないで!」
最後までお付き合い、ありがとうございました!




