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奴隷スタートの古代ローマ転生で成り上がりRTA(実質強制)  作者: 九束
3章 黄金の指輪獲得RTA 外付けアクセルを添えて

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102話 混ぜるな危険って人間にもあるんだね

「で、殿下! お待ちください!」


「ここはその……何があるかわからなくて危ないと言いますか、その……」


「……」


どうやらプッさんの共犯だったらしいワックラとシリウスがなんとか俺とドミさんを執務室に留めようとするのを無視して、ズンズンと工廠の奥のエリアに進んでいくドミさんの後ろについていく。


「な、なんだ……これは……」


「うっわぁ……」


そしてライフル製造ラインの先にあるエリアに入った途端、混沌としか言いようのないエリアが広がっていた。



多分ポンプと思われるもの。


ダ・ヴィンチのヘリコプターの出来損ないみたいな謎の乗り物。


鳥を模したと思われる車輪付きの乗り物。


そして複数のボイラーの試作品のようなもの。


配管っぽい部品等々。



明らかに鋼鉄を大量に使用して作られたと思われる品々の数々に、ドミさんの顔が憤怒の表情に歪んでいく。


「貴様ら……国威をかけた重要で神聖な武器を作る工廠で、よくもまあここまで派手に好き勝手やりくさったものだなあ?」


「わ、我々も止めはしたのです! このシリクス、誓って殿下の意に背こうなどとは決して……!!」


「私もです! で、ですがプリニウス殿がどうしてもと聞かず……我々も陛下の側近であるプリニウス殿には強く言えず……」


「今のうちにタルペーイアの岩から落とされるのと(はりつけ)、どちらが良いか考えておけ」


「「!?」」


弁明を試みる二人に反逆罪用の処刑方法を言い捨てて、ドミさんはそのままカオス倉庫の中を屋外の方に向かって突き進む。


すると、屋外に近づくにつれて、通常の工廠の鉄を加工する雑音とは明らかに異なる、奇妙な音が聞こえてくる。


具体的にはシュゴォォォォォ……という、ボイラーなどから膨大な蒸気が噴き出すような轟音。


シュッシュッ!! シュッシュ!! という、規則的なまるで何かが擦れ合うような音。


「な、なんだこの音は?」


「いやいやいや……嘘だろおい」


それはドミさんにとっては聞き覚えがないだろうが、俺には心当たりのある機械音。


あたりに散乱するシリンダーや配管、そして音の主と思われるものの設計図が、俺の予想を裏付ける。


「……殿下。おそらくですが、この音が鋼鉄の異常消費の原因でしょう。……まずは音の元に向かいましょう」


「う、うむ。そうだな。プリニウスめ……父の側近とはいえ、もし工廠の物資を私的に流用していたとあれば容赦はせんぞ」


この時代にはあってはならない、異常としか言いようのない音に若干恐怖が勝りつつあったドミさんは俺の言葉に気を取り直して先程の憤怒を取り戻し、再びズンズンと前へ進む。


そして、俺とドミさんは工廠の奥にある広場へと足を踏み入れた。



そこで俺とドミさんが見たものは、古代ローマの常識を根底から破壊する、予想通りのあり得ない光景。



「ひゃああああ!!! 素晴らしい! やっぱりワシの予想通りじゃあああ!! この鋼鉄は完全に、完全に蒸気の力を受け切るぞゥ!!」


「四頭の馬ですら中々牽引できなかった五両の貨車をこうも易々と!! これはすごい! すごいぞぉーー!!」


『うおおおおおお!!!!』


広場を一周するように敷かれた、二本の太い鋼鉄の棒。


その上を、猛烈な勢いで黒い煙を噴き上げながら一列の『鉄の塊』が走っていた。


その『鉄の塊』……貨車の上にはギリシャ人らしき集団が歓声を上げながら乗り込んでおり、先頭車両ではプッさんとかなりの高齢と思われる老人がハイテンションで叫んでいた。


「なんだ……あれは……? 鉄の塊が、馬もなく走っている!?」


「やっぱり蒸気機関じゃねーか!!」


理解できない予想外の物体を目の当たりにして固まるドミさんをよそに、予想通りの物が出てきた俺は叫ぶ。


え? 嘘でしょ? マジ?


そりゃ鋼鉄を作ったからそのうち蒸気機関は作ろうと思ってたけど、まだ設計図どころか理論すら出してないよ俺。


ゼロから作ったのあれ?


え? まじで?


それか、もしかして新しい転生者POPした?


あれか、あのプッさんと一緒に乗ってるジジイ、もしかして転生者か?


しかも広場の先に流れる川の方向には乾ドックっぽい施設と明らかに鋼鉄で作られた船っぽい影があるんだけど?


鋼鉄船? ダキア遠征に絶対いらないじゃん!?


あと広場の端っこに明らかに破裂した直径30センチくらいの細長い鋼鉄の筒があるんだけどさ。あれなによ?


その横には荒縄でぐるぐる巻きにされた大量の木の筒もあるし、あっちこっちに紙で作ったボールっぽいものが転がってるし、作ってるものに一貫性がなさすぎる。


流石に初期POPでやりたい放題がすぎる推定転生者ジジイに俺は唖然とする。


そんなフリーズする俺らを尻目に、広場に集まったギリシア人と思しき熱狂している集団とそれに付き合わされてると(おぼ)しきポンペイの職人衆に囲まれながら、蒸気機関車に乗ったプッさんと完全に目がイっちゃってる推定転生者ジジイはこちら気付いた様子もなく盛り上がっている。


「この鉄! この強靭な『鋼鉄』なら、高圧の蒸気にも耐えうる! 蒸気の力を一切逃がさずにそのまま使うことができれば、このような重量物も動かすことができるのじゃ!! これは、色々なことが捗るぞぅ!!!」


狂喜乱舞しながら車輪のクランクを指差すジジイ。


「アレクサンドリアで以前会った時に『もっと強い鉄があれば……』とぼやいていたのを思い出して招いてみたが、まさか本当にこのようなものを生み出してしまうとは! そして湯気の力がこれほどのものとは! やはり世には不思議が満ちている!!」


それに対してプッさんが、いつだか俺が方位磁針を雑に投げた時以上の少年のような笑顔で、ハイテンションにはっちゃけている。


「あははは!! わーっはっはっはっは」


「ガハハハ!!」


めっちゃ人生楽しそうだなあの二人。


「っは!?」


そしてそんな二人の様子を呆然と見ていたドミさんが、ようやく正気を取り戻してビクッと震えたかと思うと、線路の方へとズンズンと歩いてプッさんに叫ぶ。


「プリニウス! おい!! プリニウス!! 一体なんだこれは!?」


「……おや? おお、ドミティアヌス殿下! それに友ルシウスよ! よくぞ来た!  ちょうど良いタイミングだぞ!」


俺たちの存在に気づいたプッさんが、機関車のブレーキらしき棒を引っ張り急停車させ、そのまま車両から降りて俺たちの方に駆け寄ってきた。


その顔は煤だらけで満面の笑み。


全く悪びれる様子がない。


「プリニウスよ……。これは、一体何だ? なぜ荷車が馬もなく動いているのだ?」


あまりによく分からない状況に怒りが吹き飛んだ様子のドミさんは、唖然とした顔でプっさんに問いかける。


「よくぞ聞いてくださった! これが、これこそがローマを次の時代に導く発見ですぞ!」


そしてプッさんが回答する前に年齢に似合わぬ俊敏な動きで駆け寄ってきた推定転生者ジジイが口を挟んでくる。


「プリニウス、この者は?」


「蒸気で動く馬車を開発した者です。紹介しましょう。私がかつてアフリカ属州で陛下の補佐を務めていた頃からの友でしてな、アレクサンドリアが誇る最高の学者でございます」


プッさんに紹介された老人は、煤けた顔に人懐っこい笑みを浮かべて、ギリシア訛りのラテン語で大仰に頭を下げた。


「お初にお目にかかる。ワシはヘロン。機械と数学をこよなく愛する、発明家とでも名乗ろうかの」


……ヘロン。


アレクサンドリアの、ヘロン!?


ヘロンの公式とか、くるくる回る蒸気機関の祖先みたいなやつを作ったあの?


「ここの鉄は最高じゃな。ずっと作りたかったものがポンポン作れるわい」


……どうやら鋼鉄大量消失の実行犯は転生者ではなく、野生のガンギマリ、蒸気機関の発明者だったようだ。


あれか、偉人ガンギマリ偉人ガンギマリがぶつかり変な化学反応を起こした結果、あかん反応が起こって合体事故が起こった感じか。


混ぜるな危険って、人間にもあるんだなぁ。

■アレクサンドリアのヘロン

エジプト属州アレクサンドリアで活動したギリシャ人工学者、数学者。

現代ではヘロンの公式(三角形の3辺の長さで面積を求める方法)が有名。

また、原始的な蒸気機関を発明した人物とも知られ、『これほんとに古代の機械か?』と思われるものを複数作っている。

生没年は諸説あるが、本作では(その方が面白いので)ガンギマリジジイとして登場している。

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― 新着の感想 ―
スチームパンク世界として発展したら現代みたいな方向性ではない方向に発展するだろうな…
蒸気機関の発明者、ヘロン氏の登場とは! 球体にL型の蒸気ノズルが2本あって回転する、あれだよね。 確かに、鋼鉄が作れれば、東地中海の都市国家文明の時代に、エジプト王国の巨大図書館アレキサンドリア、ギリ…
ええええ、この時代にそんなチーターおったんか……それに手段を与えちゃってたのね……。
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