第八話 安息のひととき
ユーアとドーヴィルの2人は気分転換がてら、街へ出かけに出た。事件が立て込んだギルドの空気は少し重かったが、街中は活気に溢れ、今日も変わらず賑わいを見せていた。
「ドーヴィル! あれはなに?」
「あれは露店だね! 様々なものが売っているよ。」
露店!! 通りの両脇にずらりと露店の列が並んでいる!
あっちには、食べ物!! むこうには、アクセサリー!!
すごい! 村がキラキラして見える!
「ドーヴィル、あれ食べにいこ!」
ユーアが指さしたのは、煙で包まれた露店で売られているこんがりと焼けていそうな肉だ。
「美味しそうだね! すいません! お肉二つください!」
「あいよー!! おふたりさんは冒険者かな!」
「そうだよ!! 冒険者ですっ!!」
「いいコンビだねぇ! いつも街のためにクエストしてくれるからな! 安くしとくぜー!」
「え! ほんとですか。 ありがとうございます」
「ふたつ合わせて700ロンのところ……特別に! 400ロンだ!」
「てんちょーふとっぱらー!! ここは私が払うね!」
「え!? 払えるんですか、ユーアさん」
「もちろん! さっきのゴブリンクエストで1500ロンも稼いできたからね! じゃあ、400ロンで!」
「ぴったりまいどー! 美味しく食べてくれよぉ!」
「はぁーい!! ありがとございますー!」
「いい店員さんでしたね。良くしてもらっちゃって」
「ほんとにいい店員さんだった! 冷める前に食べちゃおー! いただきますー!」
「いただきます」
外は茶色くしっかりと焼かれ、噛みごたえがある。
その見た目に反して、中は柔らかく噛めば噛むほど肉汁が口いっぱいに広がる。肉本来の旨みはこれほど美味しいのか。
こんなの、天界にはなかったなー……
「ドーヴィル、これは最高だね……」
「うん。逸品だこれは」
「あー美味しかった!! そういえばドーヴィルが誘ってくれたけど、何か買いたいものでもあるのー?」
もぐもぐと顎を動かしながら、声を出そうとする。
「んぐっ……ちょっと待ってね」
スッキリとした顔で口を開く。
「自分の剣が少し欠けてしまって、剣を買い替えたいんですよ。だから鍛冶屋にでも行こうかなって思ってます」
「鍛冶屋……!! すぐいこ!! めっちゃおもしろそう!」
「そういえばドーヴィルは剣士なんだね! かっこいい!」
「あ、ありがとうございます……! 剣に憧れてるんですよ自分」
「憧れてる? 今の時代は魔法使いが流行ってるんじゃないの?」
「そうですね。魔法使いが流行ですね。でもお父様の影響で、好きなんですよ。剣を振り抜く姿が爽やかでかっこいいんですよ」
「泥臭く戦うスタイルも男らしくて好きなんですよね。
お父様が剣士として一流だったので背中を追ってるんです」
「へー!! でも剣士って見ててすごいなーって思う!
生身の状態で魔物に立ち向かうんだもん! 魔法使いにはない強さがあるよね!!」
雑談をしてる間に気がついたら鍛冶屋の前に着いていた。
中からは鉄を叩く高い音が聞こえる。仕事熱心なことだ。
扉を邪魔にならないように静かに開ける。
「すみませんー? 誰かいますかー?」
「あいよぉ、何の用だ」
ガタイの良い口元に髭を生やした大男が店の奥から顔を見せている。つよそう。
「剣を買いたくて。良い剣ってありますか?」
「剣士か! おまえさんセンスいいな! おすすめかー!
予算にも寄るが────この剣なんてどうだ?」
――――――――――――――――――――――
豪千金の剣・・・二万五千ロン
効果:この村随一の硬さ!! 魔法をも切る希少な素材を使い、魔物相手にも十分に活躍すること間違いなし!!
――――――――――――――――――――――
「に、にまんごせんロン!!?? たっか!?
ドーヴィル払えるの!?」
「二万五千ロンくらいもってますよ!」
ドーヴィルが少し笑った顔で答える。
「ドーヴィルお金持ち!! やっぱ歴長いと稼いでるよねー!」
「まあそこそこは頑張っていますよ。店主さんこれ一本貰ってもいいですか?」
「兄ちゃんみたいな剣士さんに拾ってもらえるなんてこの剣も本望だろうよ! ぜひもっていってくれ!」
「良い剣を買えました! ありがとうございました!」
「まいどー! ぜひ贔屓にしてくれよ!」
「ドーヴィル、キラキラしてるねその剣!!」
「早く実戦で使ってみたいです!!」
「ドーヴィル! あれなん────」
剣を手に取った瞬間、胸の奥が騒めく。
店主はユーアのことを一瞬。本当一瞬だけ見た。
「どうされました?」
「ごめん! なんでもない!」
ドーヴィルの予定も済んだところで2人は解散した。
「さっきの剣、魔力が込められていたよね……?」
ひとつの不穏を残して。




