第六話 私は縛られない
上位天使からの警告。私は関わってはいけないところまで来てしまった。でも目の前には助けたい人がいる。
状況を飲み込むことができない。
ほんとにこれが正しい世界線なの? 信じたくない。
ドーヴィルは困っていた私を助けてくれた、嬉しかった。
なのにドーヴィルが困っている今、私は見ることしか出来ないの?
「そんなこといや!!! 絶対助けてやる!!!」
「一般天使、よせ。それ以上関わるな。秩序が──」
「うるさい!! 1回静かにしててね!!!」
「「何人たりとも通さぬ、絶対不可侵の結界」」
『静観なる聖域』
精密な魔力操作により構築される結界魔法は、上位天使の声すらも通さぬ絶対不可侵の領域を作り出す。このレベルの結界をこの速度で構築できるのは化け物だ。
「これで邪魔者はいなくなったよ! 助けるよドーヴィル!」
「でもどうしよう? 何が原因でこんな状態に……?
なにかに洗脳でもされているのかな?」
でもドーヴィルが言う通り特別な魔物や魔性植物の気配もないし。ここに来た冒険者全員が洗脳のような状態になってるわけでも無い。
──ん? 冒険者でしかこの事件は発生してないよね?
なら冒険者だけを狙える”なにか”があるはず。なんだそれは?
とりあえずこの近くにある怪しいものがないか探してみるか。
「魔力よ。世界を知れ。『探知』」
魔力が波のように周りに広がっていく。地形の凹凸を波で形作り、生体反応などが無いか探知していく。
「近くには人工物がひとつある。この魔力どこかで──
ん? 人工物から魔力の線が伸びている......?
この線の行先は──ドーヴィルの体!?」
ならこの人工物が怪しいの? でもここから出てる魔力の線自体には洗脳などの効果を付与できない。
じゃあこの線はなんだろう? 冒険者にしか起きない事件?
あ! もしかして────
「やっぱり冒険者カードが怪しい!!! カードからは魔力が漏れ出ていた! カードの魔力と人工物の魔力が共鳴して洗脳魔法を生み出している気がする!」
「冒険者カードの術式と人工物の調査が必要!
とりあえず冒険者カードの魔力の正体を調べるぞ!」
「ドーヴィルちょっと失礼!!」
簡易的な魔力拘束でドーヴィルを一旦捕まえる。
バッグの中から冒険者カードを取り出して調べてみよう!
『鑑定』
やっぱり!! 冒険者カードから漏れ出る魔力と、人工物から発せられている魔力の線が相乗効果を起こし、洗脳魔法を発動してる!
原因が分かったから冒険者カードの魔力を解析、そして無効化する!! ────よし出来た!
「これでドーヴィルの洗脳は解除できた! でもドーヴィルには少し眠っといてもらおっかな!」
『強制睡眠』
「ごめんねドーヴィル。私気になることがあるの!」
謎の人工物を調べたい。
ここから出てる魔力どこか覚えがある。
人間の魔力はこんな波形を起こさない。こんな波形を見せるのは”天使”しかいない。でも人間に干渉するなという天使のルールがある。もしこれが天使が作った人工物だとしたら……?
「ん!? 空から魔力反応が!!!」
空を見上げる。
そこにはフードで顔を隠した何者かが浮いている。
右手には先に宝石のようなものが付いている杖を持っている。
この魔力、なんか異質だ。
「そこでなにしてるの!! ここは危な--」
「「炎の脈動よ、灼熱を思い出し、全てを破壊せよ」」
『煉獄爆星』
「なんて大きな魔法を放とうとしてるの!! 魔力の集まり方が尋常じゃない!!」
地は震え、木々は揺れ動く。平原に生息していた鳥が飛び逃げる。フードの者から放たれた魔法は人工物を業火で覆い尽くし、破壊した。
「完了。警告だ。君は波乱に巻き込まれる」
「え? ちょっと! ま、まって!」
完璧に逃げられた。この結界内に私に気づかれず侵入し、しかも強力な魔法を打てるほどの実力者。誰なんだ……?
「あ! ドーヴィルのもとへ向かわないと!!!」
ユーアの直感は密かにこれからの波乱を感じていた────




