第五話 優しい心
受付のお姉さんと男はギルドの奥へと歩いていった。
さっきまであった冒険者たちの笑い声はなくなり、緊張した空気がひとりひとりから漏れる。
「ユーアさん。クエストに行きましょう」
「うん、わかった」
ギルドから外に出てきた。村は相変わらず活気に満ち、空は青く澄んでいる。
だが、たとえいい天気でもそんなこと口走れない。今世間話ができるほど心は澄んでいない。
無言のままゴブリンがいる場所まで歩いて向かう。言いたいことはある。でも言葉は詰まる。
この子をこんな危険なことに巻き込んでもいいのか……?
まだたった十五歳の青年なんだ。わたしの仕事はあくまでも監視。関与すれば何が起きるのかわからない。でもまた人が死んでいくのなんて見てられない。わたしにはなにもできないのか──
「ユーア、さっきのクエストが気になるんでしょ?」
「え? なんでわかったの?」
「ユーアがそんな難しい顔しているの始めて見たからね。少しはなにか考えているんだろうって見当がつくよ。ユーア、東の平原行ってみる?」
「うん! いってみよう!」
東の平原は歩き出していた方角と同じ向きにあるらしくそのまま進んだ。
ドーヴィルによると、東の平原は普通なら低ランクのモンスターしか出ない比較的平和な環境らしい。
なにがあんな大惨事を引き起こしたんだろう……
「ここが東の平原か……! 特に変わったものとかはないよねー?」
「うん。強力な魔物がいるわけでもなさそう。でも不思議なくらい音が静かだね」
確かに。魔物が出る平原とかなら鳴き声やなにか揺れる音が聞こえてもおかしくないのに、何も聞こえない。近くに隠れている魔物がいるとかでもないし──
「ん!? ドーヴィル!! 後ろから気配が!!」
なんで気づけなかったんだろう。すぐそこからの気配なのに!!
急いで後ろに体を動かしたとき目に写ったのは、
剣を振りかぶりながら、わたしに向かって一直線で攻撃をしようとしているドーヴィルの姿だった。
「え!? ドーヴィル!? どうしたの! わたしはユーアだよ!?」
やばい、剣がすぐそこまで来てる。どうする? 魔法で反撃?
いやいやぜったいだめ!!! よし! 避けるしかないみたい!!
軽い身のこなしでギリギリのところで回避。簡単に避けているようだがもちろん人間じゃこんな体の使い方はできない。体が悲鳴を上げ続けるだろう。
「あぶなーい! ぎりぎり避けられた!」
でもどうしよう? 避け続けているだけだと何も意味ないし……
──!! そういえばさっき男の人が攻撃してきた奴らは自害したって言ってた!!
とりあえず武器を奪わないと!! それならこの魔法だ!!
「対象者よ、天から裁きを受け、武器を手放せ。『戒めの光』」
ドーヴィルの手元に向かって光が飛んで行く。光に照らされたドーヴィルの手元からは剣が離れユーアのもとに。まずひとつの危険は取り除けた!
「よし! この調子でドーヴィルを解放する──イタッ!、なにこの頭の痛み……?」
頭の底から声が聞こえる──
「────関わるな。人間に関わるな。一般天使、君の役目はあくまでも監視だ。世界の理を守りたいのならその人間に関わるな。」
「中級天使からの警告だ。厳守せよ」
え? わたしはどうすればいいの……?




