第二話 第一村人発見!!
てんしちゃんが始まりの村に向けて歩きはじめた。
静寂を伴う一本道に一歩ずつ足を動かす。周りに広がる壮大な自然に目を向けて、時々黄昏ながら暇を潰していた。
なんで暇なのかって? 魔物が周りからいなくなってしまったからだ。これはてんしちゃんが使った魔法が関係している。
『天雷』の爆発的な魔力放出は瞬間的にこの大地のヒエラルキーのトップに立てる一撃だった。
その一撃により、縄張り意識の強い魔物ですらしっぽを巻いて逃げだした。それほど常軌を逸していた。
しかし当の本人は自分が原因なんて思ってすらいない。
「暇だよぉー、魔物みんないなくなっちゃったぁ」
「お姉さん、どうされたんですか?」
「うわぁ! びっくりしたぁ!」
礼儀正しそうな男の子が話しかけてきた。
十五歳ぐらいかな、体より大きな剣を持っている。
おそらく冒険者でしょう!
「凄まじい閃光が見えてその場所を探してたら、なんか困っている顔をしていたので……」
「今ね、始まりの村って場所に向かってるんだけど道中暇でさー、魔物もいなくて困ってるんだよね」
「────そうなんですか」
「それなら僕と一緒に行きませんか?
僕も始まりの村を目指して歩いてるんですよ」
真っ直ぐこちら見る瞳が、少年の無邪気さを天使に感じさせた。天使は悩む素振りを一切見せずにぱあっと目を輝かせて手を掴んだ。
「え! ほんと!? なら一緒に行こー! 色んなことも知りたいし!」
「君の名前なんて言うの?」
「僕の名前は、アイセル・ドーヴィル。今は十五歳です。
お姉さんは?」
「わたし……? 私名前わかんない。名前ないのかも」
私の名前ってなんなんだろう。
中級天使様からはずっと一般天使としか言われてなかったな。名前って存在に触れてこなかったから気にしたこと無かった。
あ!それなら────
「ドーヴィルが私の名前考えてよ!」
「え、僕がお姉さんの名前考えるの!? いいの? 会ったばかりの人に名付けられても? 」
「うん。 好きに考えてみてよ!」
「うーん、急に言われても悩むな……、あ! "ユーア"はどう?」
ユーア? 人間界で特別な意味とかあるのかな?
「ユーア。いい名前。いい響きだね。
これから私の名前はユーアだ!!」
「僕にしてはいい名前をつけれたかな。これからよろしくねユーア」
「よろしくね!ドーヴィル!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
鳥の声が、風にも触れられず空に行き渡る。
私とドーヴィルは二人で始まりの村へ向けて歩き出した。
「ねね、ドーヴィルは冒険者?」
「うん。だいたい五年前からやってるよ」
「十歳くらいからやってるんだ!? すごい若いねー。
もう五年ってことはまあまあの手練れでしょ?」
「家の風習で男子は十歳から十年間旅に出されるんだ。
でも冒険者で五年は生きてるからね。ランクもCはあるよ」
「えなにその風習。めっちゃ厳しいね……
ランクしー? しーってどんくらいすごいの?」
「えぇーとね、冒険者のランクはFからSまであるんだ。
FからEが初心者と呼ばれるランクだね。次のランクのDに入ると少し世界が変わってくるんだ」
「世界が変わってくる? なんで?」
ドーヴィルは「はあ」と一息ついてから語り出した。
「Dランクからはね魔物と戦い始めるんだ。このランクからは命がけの世界に入ってくる。
Dに入った瞬間一気に死人が増えるからね」
「ドーヴィルは詳しいね!
そう考えると……Cって結構強くない!?」
「僕も昔詳しく調べたことがあるんだよね。まあCの冒険者は経験が豊富な人で手練れが多いよ。呼び方で言えばDCは一般冒険者って呼ばれているらしいよ」
「へーー! 冒険者にもたくさん区分があるんだね」
「ユーアも始まりの村についたら冒険者登録をしてみたら?
冒険者登録をすると色々便利なこともあるよ」
「それなら着いたら登録してみる!! あと始まりの村までどれくらいかな」
「もうすぐそこだよ。ほら前に見えてきたでしょ」
目の前に広がるのは初めての村。広大な大地にぽつんと石造りの家や木の色が香る建物が立っている。活気ある村だ。
この村は未来を輝かせる光で満ちている。
私でもわからない。人間に名付けられた天使がどうなるかなど……




