第九話 がばがば
「エボって言います!よろしくお願いします!」
少々みすぼらしい格好の少年が元気良く挨拶する。
「サイトウ君、彼なんて言ってるの?」
「自己紹介かと。名前はエボと言っています。」
顎髭を弄りながらケンジがサイトウの話を聞いている。
「まぁフォンも居ないしちゃっちゃっと話聞いちゃおっか。」
「はい!ケンジさん!」
エボから得た情報は主に三つだ。
代表のリノリー−ヤイザーが行方不明なこと。
幹部達が挙動不審なこと。
母親が失踪したこと。
ケンジは疲れていた。連日の調査をまとめたり、アトラン大聖堂の状況把握などで、精神的に疲労しているのだ。
リノリーが居ないのは知っていたが…ブルートゥスが絡んでるとして、今更あんなのに拘る理由はなんだ?
すぐ調査するとして、まだ警備がある可能性が…意外となんとかなるかもしれんな。もう何年も待ってんだ。そろそろブルートゥスを一発位殴ってやりたいし、しっかり隠れながらなら…まぁ、今回はレオセンさんはさすがに付いてこれないだろうが、最近のサイトウ君も多少は戦える。ササッと書類とか探して…なんか行ける気がするな。よし!
ケンジは頭の中での会議の結果、最悪を導き出してしまった。
「サイトウ君、アトラン大聖堂に潜入してみよう。」
サイトウの顔が青くなる。
「まっ、まじで言ってます?危険だから作戦を練ってからってレオセンさんにも…」
「安心しろ。秘策がある。これはチャンスだ、多分。」
「多分って…」
勢いだけでアトラン大聖堂の調査をすることが決まってしまった。
「大雑把に計画をまとめた。サイトウ君、しっかり目を通しておいてくれ。」
「はい…。大丈夫ですかね?」
「その特殊な強化スーツなら大丈夫さ。俺との訓練忘れるなよ。」
額をコツンと小突かれる。当然眉間のシワは消えない。
次の日
強化スーツの動作を確認したり、非常食の確認をしたりとしっかりと準備を済ませた。
ケンジさんも準備完了だ。
いざアトラン大聖堂へ。