エピローグ
クラリッサがラウレンツに嫁いで一年が経った。
新たな社交シーズンが始まる。
皇城の大広間はシャンデリアの明かりでまるで昼間のように照らされている。
クラリッサは以前の夜会で着そびれてしまった、ラウレンツの瞳の色に合わせて仕立てたドレスを着ていた。
くるりと回るたび、柔らかな裾がふわりと広がる。
縫い付けられたダイヤモンドが夜露のように輝いて、まるで大輪の花が咲いているかのようだ。
耳には、レオノーラから貰った耳飾りを付けていた。繊細にカットされた雫型のシトリンが、小さなダイヤモンドと共に短い金の鎖の先で揺れている。
レオノーラも同じ耳飾りを付けてくれている。擦れ違うときに目が合って微笑み合った。
エスコートしているラウレンツが、クラリッサを軽く引き寄せる。
「──どうしたの?」
「クラリッサが綺麗すぎて、誰にも見せたくないなって思って」
耳元で吐息混じりに囁かれて、クラリッサは動揺した。
うっかりステップを踏み間違えたところを、ラウレンツが派手に持ち上げて回って誤魔化す。
床に足を付けたクラリッサは、自然な動きでダンスに戻りながらラウレンツを睨んだ。
「ひどいわ。私が貴方の声が大好きだって知っていて……!」
「ほんとうに、可愛い。もうこれが終わったら家に帰ろうか」
甘い表情で言うラウレンツに、クラリッサは頬を膨らませる。
「駄目に決まっているでしょう」
「分かってるよ」
そう言って苦笑するラウレンツの胸元で、クラリッサの瞳の色と同じルビーのブローチがきらりと光った。
クラリッサに悪戯心が湧く。
お返しだというように、クラリッサは口を開いた。
「──そのかわり、家に帰ったらいっぱい抱き締めてね」
次にステップが乱れたのは、ラウレンツの方だった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
久しぶりの小説家になろう様での連載でしたが、読者様のおかげでとても楽しく投稿させていただきました。ここまで応援ありがとうございました!
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