逃げられない
第五話目になります。
よろしくお願いします。
昼休み、体育館裏で座りながら目を閉じて時間を潰していた。
場所を変えたのだ。
音はあまりせず、リラックスできる場所だ。
いい場所を見つけた。
(そういえば、先輩はどうしているんだろう)
あれから、先輩と話をしていない。
校内で姿を見かける事はあっても、あの御仁は僕と違って周りに
人がいるから、僕に気付いていないだろう。
よしんば気づいていても、僕に構う暇など烏有だ。
それでいい。
「ここにいたんだね、優君」
声だけで相手が誰が秒で理解出来た。
「先輩」
「隣、いいかな?」
「はい、どうぞ」
僕の隣に先輩は座る。とても良い香りが鼻腔を刺激する。
「私、ずっと優君にお礼がしたかったの。あの日助けてもらった事の
お礼を」
「お礼なんてとんでもないです。お気になさらず」
「それはできないよ。お願い、何かお礼させて」
「わかりました。では今日僕と話しかけてくれた事をお礼という事で」
「駄目だよそんなの!もっと真剣に考えて」
(とは言ってもなぁ。ないものはないし)
先輩にお礼をしてもらえるという事は重畳と言っても
過言じゃないだろう。
僕も男として嬉しい気持ちはある。
とはいえ、お礼を求めるつもりなんて本当にからっきしだ。
してほしい事も、貰いたい物も無い。
僕は先輩に頓着していない。
見目麗しい、恭しい婦女子だと思うが、逆に言えばそれくらいなのだ。
この立場を男子生徒の誰かに変わってほしいと思う。
(あ、そうだ)
僕は一つ着想した。
「そういえば、先輩って朝強いですか?」
「強いよ?どうして?」
「では、明日の朝五時に待ち合わせして僕に付き合って頂けませんか?」
まだまだ続きますので最後までお付き合い頂ければ幸いです!