プロローグ:真っ白な空間、流行遅れの異世界転生
目が覚めた俺は、真っ白な部屋にいた。
その部屋には誰も居なくて、何もないようで
――――っ!
と思ったら何かが現れた。目に見えないくらいのスピードで。
「あ、えと、あ、あああああああ!!ごめんなさい!!!」
出てきたのはさっきぶつかった美人なねーちゃんだった。
「なるほど」
美人なねーちゃんが泣きながら説明するものだから時間はかかったが、ようやっと内容を理解した。
「つまり、ねーちゃん、あ、アイリスさんは神様で、所用で我々の世界に降りてきていた所、帰り道で俺とぶつかり、俺はハンカチを拾った。
しかし、このハンカチを拾うという行為が良くなくて、ハンカチに溜まった神の力が俺に移行し、爆発寸前だったらしい。それはもう国家がびっくりするくらいで、なんかの間違いで戦争になりそうなくらいの威力らしく、それを止めるためには、爆発が起きる前に殺すしかなく、バスで俺を轢き殺したと」
「そ、そうです…」
うーーーーーーーーーーん。なりほど。
「被害が最小限に抑えられて良かったです。自分の死因で戦争になんてなってたなんて思うとぞっとしません。ありがとうございました」
とりありず感謝かな。いやそうだよね。人智に観測出来ない爆発なんて起きたら隕石と素直に受け取ってくれたらいいが、「実は日本が秘密兵器開発してました」だなんて攻められる理由にしかならない。
「で、でも、あなたは命を落としたんですよ?私の、ハンカチの所為で」
「まぁ、まさかハンカチ程度で爆発するなんて思いませんからね。まぁでも、一つ文句をつけるなら」
「は、はい!何でも罰を受ける所存です!なんでも要望通りに転生させてみせます!」
「神様がポカしたからチート付けて異世界転生させてあげるよって、流行大分遅れてない?最近ってこう、知らぬ間に転生してたり、転生してから急に思い出すパターンが流行りじゃないの?」
「それはどこに対する文句ですか!」
流行に乗るって、結構大事なことだと思うんだけどな。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「えー、気を取り直して、規約通り、土方様には好きな世界の好きな場所に送らせていただきます。
その際、こちらで所謂「チートスキル」を付けさせて頂きます。 その力を使い、生きるも自由、死すも自由。世界を滅ばすことない範囲で楽しんでください」
それは下手をすれば世界というのは破壊できるのか、という解釈も出来るが。
アイリスさんが人差し指を立てているので気付かなかったことにしよう。
それでは、貴方が望むスキルをお選びください。
「俺が望むスキルは―――」
俺の望む、チートスキルは―――
「『身体能力存在最強』だ。どの動物にも、どの魔物にも、どの植物にも、無論人間にも負けない身体的な力をくれ!」
『スキル【身体能力存在最強】を構築いたしました。それでは、世界『ゴレン』の「アガーレッド公国」にご案内いたします』
「園崎さん、あなたのご武運を、お祈りしております!」
最後に女神の声が聞こえ、意識は途切れた。