5話
青のオープンシャツに白のカーゴパンツ、足には白のサンダル
路地裏で着替えたノンダクレは服が容姿のサイズと合っていないと思えない程に着こなしていた
「俺が着ているとは思えない」
「パンツの丈はベルトを使って上手く調節が出来るし、服の特徴に寄り添いウォーキング、これで少しオーバーサイズの服装でも魅せるくらいは出来るわ、あんたも私の側を歩くんだから背筋くらいは伸ばして歩いて、さっきの踊り、ダンスくらいは齧ってるんでしょ?レッスンを思い出して、さぁ、胸を張って歩く」
「これからどこに?」
「たまに寄る喫茶店があるの、そこでお茶でもしながら話を聞くわ」
喫茶店は直ぐに到着した至ってシンプルなレンガ調の外観、扉を開け中に入るとカランと鈴の音色が来店を告げた
慣れた所作で店員が席への案内を始める、間接照明が味を出したお洒落な内装だ、壁には小さな絵画が何枚か飾られている
「ご注文がお決まりになりましたらお声がけください」
案内を終え店員は厨房に戻っていった
メニューを開くと見たことのない言語がずらりと並んでいる、異世界文字のようだ
「決まった?」
彼は注文が決まっているようだ
「ん?うん、決まった」
彼はアイス珈琲とホットケーキ、どうやら地球のメニューと違いはないようで行太郎はアイス珈琲を頼んだ
「まずは自己紹介、私はノンダクレ・クレーオ、出身はオルテガ村、勇者をやってるわ」
「株式会社インフニティイノベーションズでソフトウェアの開発事業、主にインフラ設備の設計、管理業務を担当させて貰っております、鯱畜行太郎と申します、この度はどうぞよろしくお願いいたします」
クレオは困惑した様子でこちらを見つめ、数秒の沈黙の後に口を開いた
「えっと…株式会社?って何?ソフトウェア?」
(しまった、日本の正社員時代の自己紹介をしてしまった、俺が居るのは異世界、町の様子からしても所謂ナーロッパと変わらない、つまりシステムインフラそのものが未知の領域のはず)
「この世界では転生や転移、そのような事例はあるのでしょうか?また似た様相を持った魔法などは可能なのでしょうか」
「転生?転移?さっきからなんの話?」
「転生、つまり人は死ねば生まれ変わるという仏の教え、思想概念です。
僕はそれとは違うのですが、異世界転移、別の世界から来た人間です」
「あなた神秘主義者か何か?確かに理解出来ない現象というのであれば魔法はその代表みたいな所はあるけれど転移や転生なんて事象は聞いたことがない、それに転移してきたですって?嘘をつくならもう少しまともな嘘をつきなさい」
「そんな、信じてくださいよ」
「さっき出会ったばかりの人間の話を信じられる分けないでしょ」
「おっしゃる通りです。ですが、私の話を信じてもらわないと現状が何も解決しません」
グラスの縁の水滴が机の上に滴り落ちる
「わかった、聞くだけならいいわよ」