君の尻は青く輝いて見えた
「いたた」
俺は後頭部の痛みに起こされて目を覚ます。
頭を無造作に触り、前を見る。
二人は見つめ合う。それはまるでどこにでもある顔面の様で、とても見覚えのある顔だった。
『君の名は』
「うっ、突然メローな歌詞が頭の中に…」
「大丈夫ですか?」
「あ、うん」
『君の名は』
「いや、もうそれいいでしょ」
「そうだよな、ごめん。君とは初めてあった気がしなくて」
「いや。いいの。私も初めて会った気がしなくて…じゃなくてなんであなた私の顔してんのよ」
「俺も聞きたいんだ。なんで君は俺の顔をしているんだ?」
『は?』
数秒の沈黙が訪れた後、ノンダクレが場を打開しようと提案する
「ちょっと、ここじゃなんだし。カフェにでもよりましょ」
「いや、それよりも、大変言いにくいんだけど…」
「何よ」
「その、君が全裸なのが気になるんだ…」
「え?」
「公衆の面前というかさすがに不味いと…」
「きゃあああああああ」
何事かと周りに人が集まりだす。
「あの。落ち着いて、人どんどん集まって来ちゃってるから、ネットに拡散されちゃうから」
「なんであたし裸なのよーー」
「え、わかんない」
「あんたが脱がせたんでしょ!気を失ってる女になんて事するのよ。こんな公衆の面前で…うっ、うぇええええん。て言うか粗○んすぎて無理ぃぃぃぃ」
「え、そこ?」
「そこよ。なんで私達入れ替わってるのよ!早く服持ってきなさいよ!」
そうこう騒いでいると案の定警察官みたいな人がこちらに寄ってきた。
「ちょっと。君、露出はいけないよ。露出は。ちょっとはっちゃけたいからってやっていいこととやったらダメな事の区別はつけてもらわないと」
「なんで、私が露出狂みたいに扱われてんのよぉぉぉ。もういいから早く連れてって」
「そんな合コンで引っ掻けた女の子が言いそうな台詞を言わないでくれ、ほら、ハンカチやるから泣き止んでくれよ」
ハンカチを受けとる
「優しい…もしかしてその特徴的な泣き黶、あなたハンカチ王子?」
「そう。僕がハンカチ王子こと、ハニカム・ユウ。クリケット選手を引退後、警察に憧れてね。今は立派なポリスメンさ」
「そ、そうなの…とりあえず。服かして」
「あ、そうだったね。服、服」
ノンダクレは強引に俺の手を握った
「え?」
「逃げるわよ」
彼は人混みを走り抜ける。そのプリ穴を追いかけるように俺は走る。
朝日が眩しい、熱い筈なのに、けれどもまるで青春の一ページのように、体の中から何かが漲っているようだった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
路地裏へ逃げ込んだ後、息を切らしている彼を横目に俺は身体を確認する。
「ゴツゴツしてて、それでいて肌はすべすべで。漲ってくるこの力は…」
「人のからだベタベタさわって何してんのよ」
軽蔑するような目線が俺を刺す
「大体、なんであんたこんなに体力ないの?ちゃんと運動してる?スキンケアもなにもしてないし、髪も艶がない…最悪」
「と、とりあえず。現状整理をしませんか?」
「それよりも先に服を取りにいきたいんだけど」
「あ、そうでしたね。ごめんなさい」
「いいわ。とりあえず、私が泊まってる宿に帰ろうと思うから、アタッシュケースに入ってる服…もう、なんでもいいわ。とりあえず、上と下含めて全部持ってきて」
「俺が行くんですか?」
「あんた私でしょう!それに、こんな全裸でうろうろしてたらまたさっきみたいに追いかけ回されるでしょう?」
「ごめんなさい。すぐに行ってきます!」
「いちいち平謝りしてんじゃないわよ、うざい。いいから早く行ってきて」
「はい。すいません!」
俺はもう一度頭を下げると、部屋の鍵と場所を聞き取り、そさくさと立ち去った。
遠目でみる彼は自分そのもので、堂々と腕を組んで待っているその露もない姿に俺はかなり羞恥心を覚えた。