05 手のひら返しをする者達
一方、王宮にいる王族達はのんきな様子で日々を過ごしていました。
王女を追放した後は、まるで最初からそんな人物などいなかったかのように、平和な日々を過ごしていました。
王女を森に捨ててから三日後に戻った姉が「誰もいなかった」と報告したので、王女は死んだものとして扱われていたのです。
「邪魔者がいなくなってせいせいしたわ」
「もうあんな奴の顔を見なくていいんだな」
しかしそんな彼等は、すぐに驚きます。
魔物退治から戻った鬼騎士が見つけてきた少女、救世の乙女だと考えられるその存在が、自分達が追放した王女であったからです。
危機感を覚えた彼等は、もう一度王女を森へ捨てようとします。
ですが、それはできませんでした。
世界を救うための大切な存在であるため、害することはできなかったのです。
だから王女に対して「森に遊びに行ったときに、護衛とはぐれたと言いなさい。さもないとまた虐めるわよ」と脅したのです。
それから彼等は、手のひらを返して王女へと接します。
内面はともあれ見かけ上は王女へ優しくしました。
人々の視線がある場所では、優しい家族を演じ、美味しい食べ物や豪華な品々などをふんだんに贈りました。
「自慢の妹なんですのよ」
「こんな妹を持てて、俺達は幸せ者です」
しかし彼等は裏で、いつか王女が本当のことを言いだすのではないかと、いつも気をもんでいました。
王女が人と話すたびに、不安にかられるようになりました。
そのおかげで、王女の兄弟・姉妹達はすっかりやつれてしまいました。
そんな王族達を見た鬼騎士は、不信感を覚えました。
なので、王女に「本当の事を言ってほしい」と問いただしました。
すると、あらわになったのは、残酷な真実。
王族達の醜い本性でした。
彼らは裏ではあいかわらず虐めを続けていたのです。
「なんてことだ。彼等は自分の罪を自覚し、悔い改めたのではなく、ただ己の保身のために自らを取り繕っていただけとは」