02 救世の乙女の誕生
森の中に取り残された王女は、一日中泣いていました。
「どうしてお姉さまやお兄さまたちは、私を愛してくれないんだろう」
運よくその日は害獣に出くわさなかったため、無事に過ごすことができましたが、それからも無事でいられるとは限りません。
自力で動く事もできない王女が生き延びる可能性は皆無。絶望的です。
王女は、すっかり生きる気力をなくしてしまいました。
しかし、天は彼女を見離しませんでした。
ある日突然、王女は不思議な声を聞きました。
「可哀そうな少女。あなたを救世の乙女にします。これで幸福をつかみとって、どうか幸せな人生をすごしなさい」
おそらくそれは神様の声。
その神様は、哀れな少女を助けるために、慈悲の手を差し伸べたのでしょう。
次の瞬間、少女には不思議な力が宿っていました。
それは、動物達を従える力です。
少女の声に応えた動物達が森の中から次々と現れ、縛られていた王女を助けました。
クマや、シカ、リス、オオカミなど。ありとあらゆる動物が、彼女をなぐさめ、優しくしました。
「私を助けてくれるの? みんなありがとう」
それだけでなく動物達は友好的に接し続け、森の地理や水場、果物のなる木なども親切に教えてくれました。
そのおかげで王女は、三日どころか、一週間も、一か月も生き延びる事ができました。