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戻ってきた勇者の学園生活  作者: 鏡花水月
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誘拐事件

 匠は屋根伝いに飛んで移動していた。

今日は放課後に用事が無かったため、パルクールというものを鍛錬の一環として取り入れてみたのである。

そうして屋根伝いに移動していると、見知った顔を見つけた。

エリザベスである。

しかし、状況が問題だった。

エリザベスが複数の男に追いかけられ、袋小路に追い込まれているのである。

これはまずいと匠は男達の後ろに音を立てずに着地。手刀を男達の首に次々と当て、意識を刈り取った。

『これは一体どういう状況だエリザベスさん?』

『匠さん! 助けてくれてありがとうございます!』

エリザベスが匠に抱きついてきた。

『それで一体何が・・・』

匠がそう言いかけた時、仲間と思われる連中が現れた。

手には拳銃を持っている。

匠は咄嗟に手をかざし、魔法である”風壁(エアウオール)”を無詠唱で展開。

全弾が”風壁(エアウオール)”に当たり、空中で停止する。

それは知らない者から見れば、さながらマトリッ〇スのように見えた。

匠は次に”風弾(エアバレット)”を使用。

次々と男達に当てて、全員を気絶させた。

『ここではまずい。飛ぶぞ』

匠はそう言うと、空を飛ぶ魔法、”飛翔(フライ)”を使用。

エリザベスをお姫様抱っこして、空中を飛んだ。

エリザベスはあまりの展開に眼を白黒させている。

匠は一旦自宅へエリザベスを連れて行った。

『匠さん。あなたは何者なのですか!?』

興奮するエリザベスを抑えて匠が話す。

『俺のことは後だ。一体あの男達は何だ?』

匠の言葉にエリザベスは事情を話し始めた。

『実は私の父は外交官です。その父が母と共に誘拐されたと携帯に連絡がありました』

『さっきの連中はその犯人の仲間か・・・』

『はい。そうだと思います』

『警察に相談は?』

『警察に連絡したら殺すと。身代金を要求してきました』

匠は少し考えた後、こう答えた。

『俺がエリザベスさんの両親を助ける。エリザベスさんは大使館で待機してくれ』

『そんなことが出来るのですか?』

『疑問に思うのは当然だが大丈夫だ。俺のことは後で話す』

匠はそう告げ、エリザベスを大使館に送り届けた。

「さて、やるか」

匠は地図を取り出し、”探索(サーチ)”の魔法を使用する。

やがて匠の眼には赤い点が地図上に見えた。

「ここか」

匠は屋根伝いに移動を開始した。


 元は工場であった場所にエリザベスの両親は監禁されていた。

匠は廃工場の屋根に音もなく移動し、中の様子を確認する。

中にはエリザベスの両親と、数人の犯人グループがいた。

匠は魔法”隠密(ステルス)”で姿を消し、スキルである気配遮断も使い中に忍び込む。

『すいません。小声で話して下さい。エリザベスの父親のアーサーさんと、

母親のサラさんですね?』

突然の声に二人は驚くが小声で返した。

『ああ。そうだ。君は?』

『エリザベスさんの友人の佐藤匠です。これからあなた方を救出します』

『君、無茶なことは・・・!』

『大丈夫です。すぐ終わります』

そう言うと匠は木刀を犯人達に振るい始めた。

次々と倒れる犯人達。

犯人グループも匠を探すが、見つからない。

そうこうしている内に犯人グループは全滅した。

突然のことに呆然とするエリザベスの両親。

そして、匠は”隠密(ステルス)”を解除して、エリザベスの両親を縛っている縄をほどいた。

アーサーは匠に尋ねた。

『君は忍者なのかね?』

匠は苦笑する。

確かに匠がしたことは忍者そっくりだ。

『いえ、違います。ひとまずここを離れて警察に電話を。

エリザベスさんも心配していますので。私のことは大使館でお話します』

匠達は廃工場を離れた。


 『パパ!、ママ!』

警察の事情聴取を終え、大使館に帰宅した両親に抱きつくエリザベス。

『エリザベス。大丈夫だ。私はここにいるよ』

『ママもここにいるわ』

エリザベスは涙ぐむ。

『さて、佐藤匠君だったかな。君の正体は何だね?』

『そうでした。匠さん。あなたは一体・・・』

『その前にここでの話は他言無用でお願いします』

そして、匠は事情を話し始めた。

勇者として異世界に召喚されたこと。その為に訓練したこと。

軍を率いて魔王軍と戦ったこと。最終的に魔王を倒したこと。

そして、元の世界に戻ったこと等を話した。


 『そんなことが・・・』

アーサーは信じられない口振りで話した。

『にわかには信じがたいかもしれませんが事実です』

『凄いです匠さん! まるで本の物語みたいです!』

エリザベスの言葉に匠の眼が悲しみを帯びる。

『実際はそんないいものじゃない。ベテランだろうが、新米だろうが、

死は等しく訪れた。一人の英雄を生み出すのに何万もの犠牲を払うんだ』

『あ・・・・・・』

自分の言葉が失言だったと気づいたエリザベスは、言葉に詰まった。

『とにかく私達は君に救われた。ありがとう』

アーサーがとりなすように礼を言う。

『いえ。友人が困っていたら助けるのは当たり前です。気にしないで下さい』

『いや、しかし・・・・・・』

『それでは一つお願いがあるのですが』

『何かね?』

『今日はここに泊めてもらえませんか? 時間がもう深夜なので』

このまま家に帰ると怒られるのでと匠。

その言葉に笑いながら了承するアーサー。

そんな中、エリザベスが匠を見る眼は、憧れであった。

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