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戻ってきた勇者の学園生活  作者: 鏡花水月
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戻ってきた実感

 「ところで匠」

「ん? どうかしたか明?」

「結局お前どこのクラブ入るの?」

「あー・・・入るのはやめとこうかなと」

「ええ!? あんだけ凄えのに!?」

「いや、クラブに入るとさ、時間的に身体を鍛えたり、

バイトが出来なくなるだろ? それが嫌でさ」

「はあー、もったいねえなあ。匠ならどこのクラブでも活躍できるだろうに」

「はは。そういう明は?」

「俺も帰宅部だ」

「理由は?」

「しんどいのが嫌」

ガクッとなる匠。

こいつ女のことしか考えてないなと匠は思った。


 その時教室のドアが開いた。

「匠はいるか?」

剣道部の凛だった。

「あ、藤原先輩。こんにちは」

「うん。こんにちは。今日は放課後空いているか?」

「ええ。大丈夫です」

「そうか。稽古をつけてもらおうと思ってな」

「わかりました。放課後、剣道場へ行きます」

「頼んだぞ」

そういうと凛は去っていった。

「なあ、匠」

「ん?」

「蒼天流って俺でも出来るか?」

「・・・・・・やめとけ。死ぬぞ?」

「いや、剣術で死ぬ訳・・・」

「皆伝の最終試験は真剣だ。それでもやるか?」

「・・・・・・マジ?」

「ガチの殺し合いだ。やめとけ」

匠の言葉に身震いする明。

わかったろという表情をする匠。

その時チャイムが鳴ったので明は自分の席に戻った。


 放課後、匠は剣道場を訪れていた。

今は凛の相手をしていた。

と言っても匠は防御をするだけだが。

「っと、今のは惜しい」

「はっ!」

ガッ!、ガッ!。

匠は凛の剣を上手く防ぐ。

しばし竹刀のぶつかる音が響いた。


 「ふう」

凛が面を外す。

顔は汗でびっしょりだ。

対する匠は特に汗をかいてはいない。

「・・・・・・やはり強いな匠は」

「まあ、鍛えてますから」

「そういえば蒼天流とはどんな剣術なんだ?」

タオルで汗を拭きつつ、凛が聞いてくる。

「基本、神速の動きに、(いち)から(きゅう)までの技と奥義で成り立っています。

この前見せたのは参之太刀”迅雷”です」

「ほう。では奥義はどういうのなんだ?」

「九つの斬撃を異方向から全く同時に放ちます」

「ちょっと待ってくれ。九つの斬撃はわかるが、全く同時とはどういうことだ?」

「言葉の通りです。実演した方が早いですね」

匠は立ち上がると竹刀を構える。

「蒼天流奥義”九重(ここのえ)”」

匠は呟き奥義を放つ。その瞬間、凛は確かに見た。九つの斬撃が同時に放たれるのを。

「・・・と、まあこういう技です」

「・・・・・・凄まじいな。まさしく防御不能の奥義だ」

凛とて並みの剣士ではない。だが、匠の剣技は予想を遥かに上回っていた。

「しかし、それだけ強いならなぜ中学で無名だったんだ?」

「その頃は修行中の身でしたから」

匠は嘘をついて誤魔化す。

「そうか・・・これからもよろしく頼む」

「わかりました」

その返事に凛は爽やかな笑顔を返した。


 『すみません。本を返しに来ました』

匠は図書室に本を返しに来た。

『あ、匠さん。確かにお預かりしました』

『そういえばエリザベスさんはどこの出身?』

『イギリスです。父の仕事で日本に来ました』

『日本語はどう? 慣れた?』

『えと、・・・まだ慣れないです』

『そっか。まあ、ゆっくり慣れていくといいさ。

必要だったら俺が教えるし』

『ありがとうございます。匠さん。今日は本を借りるんですか?』

『ああ。エリザベスさんは本が好きなの?』

『はい。それで図書部に入りましたから』

『お勧めの本ってある?』

『そうですね・・・それでしたらこれはどうでしょう?』

そう言って、一冊の本を勧めるエリザベス。

『アンナ・カレーニナか。そう言えば読んだことないな。

それじゃこれを借りるよ』

『ありがとうございます、匠さん。また、来てくださいね』

エリザベスは笑顔で応じた。


 「おっ! 匠! いいところに来た」

明が声をかけてきた。

「どうした明」

「いや、図書室にさ可愛い子がいるじゃん」

「エリザベスのことか?」

「そうそう・・・って何で知ってんだ?」

「そりゃ話したからな」

「へ? でもエリザベスって日本語苦手じゃなかったけ?」

「英語で喋れば問題ないだろ」

「お前英語喋れるの!?」

「ああ。他の言語も喋れる」

「はあ。つくづくお前って凄えな」

「で、お近づきになりたいんだな」

「何でわかんだ!?」

「お前が女好きなのはわかった。簡単な方法がある」

「それは何だ!?」

「お前が英語を喋れるようになればいい」

「無理! くっそダメか」

そう言って手帳を取り出す明。

「何だそれは?」

「これはこの学校の可愛い子のデータだよ。

例えばエリザベスはクラスが1-B。スリーサイズが・・・」

「待て。スリーサイズ何てどこから入手した」

「そりゃ俺の鑑定眼でだよ。パッドかも見分けがつくぜ」

「お前もある意味凄いな」

明の言葉に匠は呆れるが、

異世界から帰って来たんだなと実感する。

こんな馬鹿話もいいなと匠は思った。


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