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戻ってきた勇者の学園生活  作者: 鏡花水月
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エリザベス

 「おはよう」

「うっす匠。おはよう」

明が挨拶を返す。

「それで生徒会に入るのか?」

「いや、無理無理。あんな問題処理出来るかっての」

「はは。まあ、よく見る必要がある質問だったしな」

その時教室のドアが開いた。

「あっ! いた。匠、数学の教科書貸してくんない? 忘れちゃってさ」

明日香だった。

何故か皆明日香を見てぎょっとする。

「いいぞ、ほれ」

匠は教科書を渡す。

「サンキュー! 今度コーヒーでもおごるぜ」

「はは。楽しみにしてるよ」

「じゃあな!」

そう言って、明日香は教室を出て行った。

 

「お前今の誰か知ってるのか!?」

「ん? 昨日知り合ったばかりだけど?」

「あれはな。不良の世界じゃ有名で、中学の時はタイマンで無敗だったんだぞ!

だから、みんな恐れて近寄らないんだよ!」

「へえ。話せばいい奴だけどな」

「はあ。お前には驚かされっぱなしだぜ」

「それより今日は小テストだが、明は大丈夫なのか?」

「あっ」

「・・・・・・頑張れよ」


 匠は放課後、図書室に来ていた。元々匠は本を読まなかったが、

向こうの世界では娯楽と言えばチェスか本を読む位だったのである。

最もオセロやトランプを匠が持ち込んだので、それが異世界で普及したが。

匠は言語理解をスキルで持っているので、こちらではどの言語もわかる。

(やっぱり原文をそのまま読めるのは大きい。理解がしやすい)

そうして本をカウンターに持って行く。

「すいません。お願いします」

匠はそう言ったが相手は「あ~・・・本・・・借ります?」と片言の日本語である。

『英語でどうですか? わかりますか?』

匠は相手の容姿――茶髪に茶色の眼だが、顔立ちから英語に切り替えた。

『あ、はい。大丈夫です。良かった。英語が出来る人がいて』

『すいません。本を借りたいんですけどいいですか?』

『はい。少々お待ちください』

そう言って、作業は終わった。

よく見ると目鼻立ちの整った美少女だった。ショートカットの茶色の髪が緩くウェーブしている。

『あの・・・お名前を聞いてもいいですか? 私はエリザベス・ドイルです』

『佐藤匠です』

『佐藤匠・・・学校で噂になっている人ですね。英語出来るんですね』

『一応他の言語もしゃべれますよ』

『そうなんですか。凄いです!』

『また、本を借りに来ますね』

『はい。よろしくお願いします』

そうして匠は図書館を後にした。


「おっ! 匠じゃん!」

後ろから声を掛けてきたのは、明日香であった。

「明日香か。今、帰りか?」

「おう。先公が服装にうるさくてさ。匠はどうしたんだ?」

「図書室によって本を借りてた」

「どんな本・・・って英語じゃねえか! 読めるのか?」

「ああ。問題なくな」

「はあ。喧嘩は強えし頭もいい。凄えな」

「一緒に帰るか?」

「そうだな。一緒に帰ろうぜ」


 「んでそう言ってやったわけよ」

「あはは。そりゃいいな」

匠は明日香の中学時代のエピソードに花を咲かせていた。

「そういや匠は中学時代どうだったんだ?

喧嘩も強えし、頭も良けりゃモテたんじゃねえの?」

「いや。中学時代はひっそりと過ごしていたからな。

中学卒業してこっちに引っ越して、今の状態だからな」

「高校デビューってか。もったいねえな」

「はは。まあ、明日香とも知り合えたし、そういう面では良かったかな」

「・・・そう言ってくれた奴は初めてだな。サンキューな匠」

「礼を言われる程のことじゃないさ。ああ、ここでお別れだ。また明日。」

「おう。また明日な」

家へ帰る匠の後姿を眼で追う明日香。

その視線は憧れであった。

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