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戻ってきた勇者の学園生活  作者: 鏡花水月
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勇者の帰還

初投稿です。

 ある勇者が大聖堂にいた。

「俺の元の世界への帰還をお願いします」

女神は問う。

「本当にそれでいいのですか? あなたは魔王を倒しました。

皆が認める英雄です。名誉も財も思いのまま。

この世界で暮らすのもいいのではないですか?」

勇者は首を振る。

「例え元の世界で俺が一般人でも故郷なのです。帰りたいのです」


 この勇者、名前を佐藤匠といい、高校入学直前に異世界に召喚され、

女神に魔王を倒すことを頼まれた男である。

それから二十年、少年は大人になり、遂に魔王を討ち倒した。

そして、皆が英雄と称える中、大聖堂を訪れたのである。

「そうですか・・・。わかりました。あなたを元の世界に還します。

戻るのは召喚された時なので、あなたは少年に戻ります。

あなたのこれからの人生に幸あらんことを」

そうして匠は光に包まれた。


 眩い光から眼を開く。

召喚される前の自分の部屋だ。

「戻ってこれたんだ・・・」

匠は呟いた。

「ステータス・・・って出るわけ」

そう思った匠だがステータスが表示された。


佐藤匠


筋力999

敏捷999

体力999

耐久999

魔力999

賢さ999

運 999


スキル:蒼天流剣術皆伝、縮地、言語理解、全属性魔法etc・・・


「うわあ・・・」

魔王を倒した時のステータスのままである。

確実に魔王を倒すためカンストまで鍛えたのだ。

そのため二十年という歳月がかかったが・・・。

アイテムボックスも元の装備やアイテムがそのままである。

「これ過剰戦力だろこの世界じゃ」

そうこぼしつつ下の階に降りる。

「おはよう匠」

「おはよう母さん」

「ちょっと! 何泣いてるの! 何かあったの!?」

「えっ!」

言われて自分が泣いているのを自覚する。

帰ってきたんだと心が泣かせたのだ。

「ううん。大丈夫。ちょっとほこりが眼に入ってさ」

「そう? 気を付けなさいよ? 今日は高校の入学式なんだから」

そう言われてはたと気づく。召喚されたのは入学式の日だったことを。

そして匠は懐かしい母親の作った朝食を食べ、学校へ向かった。


 匠は1-Aだった。自分の席に座りこれからのことを思う。

二十年も戦い続けたんだ。今度は高校生活を楽しむんだ。

匠はそう決意した。

「よう、おはよう。俺は藤堂明ってんだ。よろしくな」

「おはよう。俺は佐藤匠。よろしく」

匠は藤堂明という少年に声を掛けられた。

明るいが、少々馬鹿っぽいなと匠は思った。

「そういや匠はどこかに入部するのか?」

「いや、まだ決めてない」

「だったら色んなとこ見に行こうぜ。今なら新入生向けに紹介をしてるからな」

「そうだな。それじゃ行こうか」

「それじゃまずは剣道部だな」

「明は剣道やってたのか?」

「いや。そこに美人で有名な先輩がいるからさ」

ガクッとなる匠。

そんな理由かよと思った。


 そんなこんなで剣道場に来た匠達。

ちょうど新入生向けの紹介が始まった所だ。

正面に整った顔立ちで、切れ長の黒い眼に艶やかな黒髪をポニーテールにした美少女が見える。

恐らく明が言っていた先輩だろう。

邪魔にならないように、端へ向かい歩く匠達。

それをその先輩が呼び止めた。

「今、入ってきた新入生。私は藤原凛。そこで止まれ」

言われて止まる匠達。

「そこの新入生、そうお前だ。名はなんという」

「・・・・・・佐藤匠です」

「佐藤匠か。一つ試合を申し込みたい」

いきなりの提案に皆が驚く。

「いえ、あの、俺、剣道は・・・」

「やっているだろう? 足運び、身体の動き、隙の無さ、かなりの強者と見た!」

いきなりバレた。最早染みついた習性を見抜かれてしまった。

「・・・わかりました。蒼天流剣術皆伝、佐藤匠お相手します」

「ほほう。皆伝か。これは楽しみだ」

匠の言葉に笑みを浮かべる凛。

これが試合じゃなけりゃ惚れるだろうにと思う匠。


 防具と竹刀を借り、身にまとう匠。

(面倒だ。速攻で行く!)

凛も試合の準備が完了したようだ。

お互いに剣を構え、始めの合図が言われる。

「蒼天流参之太刀”迅雷”」

匠が呟くと同時に匠の姿が消え、凛の胴に一本が入る。

無論、加減しての一撃だ。

「一本!」

ふう、と匠は息を吐く。

一方の凛は呆然としていた。

匠の攻撃が全く見えなかったのだ。

剣姫と称された自分が見えなかった。

そのショックが凛を打ちのめしていた。

周りの生徒も騒然としている。

これはまずいと、匠は道具類を返し、そそくさと明を伴って出ていこうとする。

「待て!」

それを凛が呼び止めた。

「匠は剣道部に入らないのか?」

「今はどこに入ろうかどうか見て回っている所です」

「そうか・・・・・・。もし、剣道部を選ばなくても時々私に稽古をつけてくれないか?」

「その位だったらいいですよ」

「そうか。よろしく頼む」

そうして笑顔を見せる凛の顔は、見惚れるほど美しかった。


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