盗賊団討伐 その一
「幹部連中が一箇所に集まっている。入口から幹部達が使っている建物まで一直線に行けるから、素早く動けば、ほかの下っ端とぶつからずに、上の連中を制圧出来るかも」
僕は、そうボーンさんとメディに伝える。
うなずく二人。
というか、ボーンさんは既に動き出している。
「メディはケガが治りきっていないんだから無理はしないで、ボーンさんのフォローをする感じで動こう」
「ケガはもう大丈夫だよ」
僕の心配に真っ向から反対するメディ。
うん、そう言うと思ったよ。
でも、残念、本当に聞かせたかった相手は、ボーンさんのほうだから。
「足手まといは邪魔だ。後は俺一人でやる」
「で、でも、相手は大勢だから、一人じゃ無理だよ」
「具合の悪い足手まといと一緒よりは、一人のほうがずっと危険は少ない」
「う……」
ボーンさんの言葉は正しい。
メディは、自分の言葉がわがままだとわかっているから、強く出られなかった。
そうだ、それでいい。
ほとんど全てが片付いた後に、領主の派遣した兵に説明するのがメディの役割だ。
見た目的に、一見して半魔とはわからないメディなら、それなりに話を聞いてもらえるだろうからな。
半魔とはっきりとわかる外見のボーンさんを前に出したら、最悪いきなり斬られる可能性もある。
ボーンさんは復讐を果たす、メディは小さな栄光を手に入れる。
これが一番キレイに話が収まる形だ。
アジトの手前は本当に何もない場所なので、接近する際に隠れようがない。
事前にそのことを僕から聞いていたボーンさんは、その距離を、一気に駆け抜けた。
一応歩哨役として残った一人が、不真面目に適当な箱を持ち出して座り込んで門前にいたが、居眠り半分なので接近されるまで気が付かない。
なにしろ、相棒が一人で青くなってお偉いさんにご注進に走ったことに、気づきもしなかった人だからね。
ボーンさんは、もうほとんど行きがけの駄賃のような勢いで走り抜けつつ、歩哨の男を斬った。
もはや本人にすら斬られたことがわからなかったかもしれない、と思えるほどの鮮やかさだ。
その、鬼神のような姿とかち合う、耳と呼ばれた男。
早い判断ですぐさま踵を返す。
お頭とやらが勝手に呼んでいるだけだろうけど、耳という名前からは、偵察などが専門であることが察せられるが、その役割を自覚している判断の早さだった。
僕は、すかさず手にしていた小石を投擲。
耳と呼ばれる男の喉に当てた。
小石は当たったものの、逃亡に成功する耳と呼ばれた男。
倉庫だった建物に駆け込むなり、お頭に報告をしようと口を開くも、声が出ない。
「どうした、耳?」
「その慌てっぷり、まさか、本当にもう兵隊が来てるのか?」
慌てる主要メンバー。
それをお頭が一喝する。
「馬鹿野郎共! まずは手下を集めて時間稼ぎだ! それと、穴にいる連中を人質にしろ!」
矢継ぎ早に指示を出すお頭。
指示も的確だ。
なんでその才能を盗賊以外に使わなかったのかな?
舞台となった場所の情報に、僕は自在にアクセス出来るので、倉庫のなかで何が起きているのか、全てが丸見えだ。
主要メンバーの一人が、倉庫の前に置いてある、鐘のようなものをガンガン叩いた。
凄い音が響き渡る。
「大変、みんな集まって来ちゃうよ」
メディが心配して周囲を見回す。
「メディ」
「え? なに? カゲルさん」
「今から、僕は君の影に入って、必要なときに君の体を直接動かしたい。大丈夫かな?」
「ええっ!」
僕の言葉に、メディは真っ赤になった。
え? 拒絶されることは考えていたけど、なんで照れるの?
「そ、それって、私の心とか読める。……みたいな?」
「主の許可なしにそんなことは出来ないよ」
「そ、そうなんだ。よ、よかった」
真っ赤になりつつホッとするメディ。
なんだか僕まで照れて来てしまう。
いや、そんな場合じゃないんだけどね。
今から僕がやろうとしているのは、初めて実践する魔法だ。
傀儡は、意識のない相手を操る魔法だけど、今から行うのは、ぴったりと寄り添う、それこそ影となり、主の見ていない方向をカバーしたり、ときには主の体を一瞬だけ動かしたりもする。
本体の意識があるので、完全に自由に動かしたりは出来ないけど、人が無意識に行っているような動きを少しコントロール出来るのだ。
「カゲルさんが、それが必要だと思うなら、いいよ。でも……」
メディは少し、言葉を探すように押し黙った。
「ごめん。時間がないから入るね」
僕はとりあえず許可はもらったとして、すうっと、メディの影に消える。
「あ……」
一瞬、少し泣きそうな顔をしたメディが、ちょっとだけ心に引っかかった。





