朝顔と猫
黄色い月が太陽の朝日を浴びて白くなる頃、朝顔は目を覚まします。
寝苦しい夜にうなされ、中々寝付けぬ赤子や、その母親も、その時分には、すやすやと、寝息を立てて静かに寝ています。
猫は、布を敷いた薄汚れた段ボール箱の中で、丸くなって寝ています。
どんなに眠い朝でも、鶏が一番に夜明けを告げるよりも早く、朝顔達は起きているのです。
子供たちが朝顔を見て笑っています。
朝顔も子供たちの笑顔を見て笑っています。
「今度は赤色がいいな」
「青色がいいな」
朝顔達は次に咲く花の色に想いを馳せて、子ども達を見送ります。
赤子が乳を欲しがって泣いています。母親は四苦八苦しながら赤子に乳をあげます。
猫はまだ、寝ています。
暑い昼です。朝顔達は疲れたように、だらんと垂れ下がり始めました。
子供たちの姿も見えないので、朝顔達は少しの間休憩することにしました。
「猫はまだ寝てるのかい?」
「猫はまだ寝てるよ」
朝顔達は段ボール箱の方を見て、口々に話しました。
「猫はずっと寝ているな」
「起きているのを見たことがない」
「どんな声でなくんだい?」
「どんな目をしてるのかな?」
朝顔達が話をしていると、段々と火が落ちて、辺りは夕日に包まれました。
子供たちが帰ってきました。
しなびた朝顔達を見て、少し悲しげな顔をしました。
「大丈夫。また明日会おう。おやすみ」
朝顔達は子ども達に別れの挨拶をすると、深い眠りに着いたのです。
明日はどんな花が咲いて、どんな笑顔が見られるのか。朝顔達は子ども達の笑顔を見るのが大好きです。
日も落ちて、道路を歩く人の姿がまばらになった頃、段ボール箱から猫が顔を出し、ピョンと飛び出しました。
「なんだい、朝顔達はまた寝てるのかい?」
猫が少し残念な顔をしました。
「いったいどんな花が咲くのか、いっぺん見てみたいよ」
しおれた花弁をちょんと押し、猫はあくびを一つ、のびを一つ。
そして食事を済ませると、少し運動をした後に、また段ボール箱の中に入り、眠ってしまいました。
読んで頂きましてありがとうございました!
(*´д`*)