2‐1
今日(2/11)祝日だったなんて……
ねぇ、覚えてる?
あなたが初めて
「夢」を話してくれた日。
たぶんね、あの時から、私にも
「夢」ができたんだ。
ね?そうでしょ?
・・・・・・
窓から差し込む太陽の光で、Kは目覚めた。
彼はソファーでねていた。
ベッドは誰かが寝ていたから。
そう、リリィ。
彼は顔を洗ってから朝食を作り出した。
今日は迷わず、目玉焼きを作った。
それからサンドイッチも作って冷蔵庫にいれた。
全て終わってから彼は身支度をした。
まだリリィはねていた。
Kは机の上のメモにこう書いた。
朝ごはんは目玉焼き、昼は冷蔵庫にサンドイッチあるから食べといて。
それからしばらく考えて、迷ったあげくこう付け加えた。
掃除はしないでいいです。
・・・・・・
ケイタはこの日の昼、ハルカと大学の近くのレストランにいた。
「………最近の女の子ってどんな服きるのかな?」
ケイタが何気なくハルカにきいた。
「………は?」
スパゲティをくるくる巻いたフォークをとめてハルカが尋ねてきた。
「…なんか、ケイタ最近変よね。
なんかあったの?」
「……いや!何もないんだ!
なにも……
それよりさ!おまえ就活どうなんだよ?」
ケイタは無理矢理話題をかえた。
「いやぁそれがさぁ、リリィとかいう18歳の女の子がうちに来て、いろいろお世話してやらなきゃいけないんだよ」
だなんて、誰にもいえないし、いっても信用されるわけがない。絶対変な意味でとられる。
「……ごまかした。
まぁいいけど。
私内定もらったよ、この前言ってた製薬会社の。」
ハルカは得意げにいった。
「そっか。よかったな。
前から行きたいって言ってたもんな。」
ケイタは笑顔で答えた。
「……で、ケイタは?」
スパゲティを食べおわって、口を拭いてからハルカがいった。
「……まだ。
多分もうすぐ知らせがくるんだけど。」
ケイタが曖昧な感じで言った。
それを聞いたハルカはフォークでケイタの方を指し、少し強い口調で尋ねた。
「……あのさぁ、ケイタってやりたいこととかやりたい仕事ってないわけ?」
「……わからない」
ケイタが答えた。
別に答えたくないわけではない。
本当にわからないのだ。
「…そっか。
なんか昔はいろいろいってたのになぁ。」
ハルカは自分のことのように残念そうに答えた。
「……ないことはないんだ、多分」
ケイタがつぶやいた。
・・・・・・・
「あ、トイレにいってくるよ。」
食事がおわってからケイタはそういって席をたった。
「…あ、そうだ、レポート見せてもらいたかったのよねぇー」
ハルカはレポートのことを思い出し、ケイタのカバンをあさってケイタのレポートを探した。
「……あったー、すごっ、字がびっしりじゃ………」
ハルカはそのレポートが明らかにおかしいことに気付いた。
字がケイタのものではなかった。
レポートを読んだ。
文句がつけようにないくらい完璧だった。
そして最後にこう書いてあるのを見つけた。
Lily
「……リリィ…?」
そのときケイタがトイレから出てくるのが見えたので急いでもとに戻した。
「リリィ………まさか…?」
ハルカは考えた。
そして行動した。
・・・・・・
その日の帰り、ケイタは本屋によった。
それから一冊の写真集を開いた。
そこには、貧しい国の人たちの写真がたくさんあった。
ケイタはそれをしばらく眺めていた。
「……やりたいことねぇ。」
そうつぶやいてその本を閉じた。
それから帰っていった。
その後すぐに、その写真集を手にとった人がいた。
ハルカだった。
「……ケイタ…」
ハルカは少し不安そうな声でつぶやいた。
・・・・・・
Kの家の前にはメロンがおいてあった。これはリリィだ。
しかし、なぜかビールビンや花束もおいてあった。多分よその人が何か事件があったのかと勘違いしておいたんだろう。
「………死んじゃったな、俺。」
Kは呆れた顔をして、ドアをあけた。
そこには正座して待っている黒いカーテンみたいな女がいた。
リリィだ。
しかし彼女は声を発しない。
「……すー…」
ねていた。
「…足しびれるだろ」
Kは寝ているリリィを抱えてベッドに寝かせた。
体が小さいリリィを運ぶのにはそう苦労しなかった。
それからKはソファーで雑誌を読んでいた。
ピンポーン
インターフォンがなった。
「はーい。」
Kはソファーに雑誌をおいてから玄関に向かった。
それからドアをあけた。
「はい、どなた………」
ケイタはドアを少しあけたところで相手がみえた。
ハルカだった。
ケイタはそれ以上ドアをあけようとはしなかった。
「あはは……どうしたの?」
「ただ遊びにきたのよ。
さぁ、中にいれなさい」
ハルカが無理矢理ドアをこじ開けようとした。
ケイタは抵抗した。
「だめだ!今日はとにかくだめだ!」
「何かくしてるのよ!
見せなさい!」
「だから何も……!」
「………おはよう」
「!?」
「!?」
二人のドアの攻防戦が一瞬でとまった。
ケイタの後ろで誰かの声がしたからだ。
そう、リリィだ。