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今日帰りのバスでいつものようにケータイ小説読んでたら、物凄い作品に出会い、「自分の作品なんか載せていいのか……」というくらい凹んだが、逆に「いや、この人とは違う、自分の世界を表現しよう!」と前向きに考えました。 ……そんな話はいいか(笑)では、本編。
Kは家に戻った。
ドアの前に、なぜかバナナが一房おかれていた。
なんかの事件のあった後のようだった。
「………俺はまだ死んでねぇ…」
そうつぶやいてからKはドアを開けた。
すると部屋からドタバタと走ってくる音がするではないか。
リリィだ。
リリィは頭にピンクのバンダナ、黒いカーテンみたいな服の上からピンクのエプロンという世にも奇妙な格好をしていた。
それから玄関の前にすわるなり、いきなりこんなことをいいだした。
「お帰りなさいませ、ご主人様!
ご飯にする?お風呂にする?
それとも…、あ・た・し??」
Kは急いでドアをしめた。
こんな常識知らずが家にいるのをしられたらまずい。
「………あのねぇ。
そんなのどこで学ぶわけ?」
Kが呆れながらリリィにきいた。
「お帰りなさいませ、は最初に泊まったおじさんからで、ご飯にする?、は今日お昼にあったドラマでいってたの。」
Kは頭を抱えた。
なんでそんな妙なことばっかいうんだと思った。
しかし驚くのはまだ早かった。
・・・・・・
「あのね、私、Kのためにいろいろ準備してたの!」
片手にお玉を持ってリリィはいった。
なんかうれしそうな顔をしていた。
Kはひとまず家にあがった。
それからKはいろいろなことに驚く。
まずキッチンに来た瞬間に目を疑った。
「キッチン戦争」と名付けていいくらい散らかっていた。
そして皿には、おそらく野菜炒めであろう物体があった。
レンジの中では卵が破裂してこびりついていた。
これが本当のスクランブルエッグって感じの卵料理もあった。
「あのね、一生懸命やったんだよ!
…少し失敗してるけど。」
リリィは笑顔を崩すことなくいった。
しかしKはもちろん笑っていない。
むしろ怒っていた。
それからKは無言で家中を見て回った。
やはりすごかった。
お風呂が入れてあった。
バラの浮いている水風呂だった。
床が濡れていた。
雑巾を使おうとしたら、雑巾はオレンジジュースでびしょびしょだった。
しかもその雑巾で窓を拭いたようで、窓が夕日をあびているようだった。
「……K?」
リリィは無言のKに向かって恐る恐る尋ねてみた。
するとKの怒りが限界を達した。
大声で怒鳴りだした。
「なんなんだこれは!
なんで俺の家が、いきなり泊まってきた見ず知らずの女にめちゃくちゃにされなきゃいけないんだ!
わからないならするな!
常識なさすぎなんだよ!
帰れ!
だいたいなんで……」
Kは怒鳴るのをやめた。
リリィが泣いていたからだ。
「……ごめんなさい」
泣きながらリリィはいった。
Kは自分を落ち着かせた。
……すこしどなりすぎたか?
それからリリィは続けた。
「ごめんなさい。
自分に常識がないのはわかっているの。
でも、何かKにお礼がしたくて………。
でもわかんなくて……。」
リリィはひくひく言いながら床に座り込んだ。
Kも座り込んだ。
オレンジジュースの匂いがした。
「……あのさぁ、なんで料理なり掃除なりの仕方をしらないのさ?
教えてよ、……まぁ話したくないならいいけど。」
Kはやさしめにいった。
彼もさすがに女の子を泣かせたことを反省しているようだった。
それから数分、部屋にはリリィのひくひく言うなき声しか響かなかった。
それがおさまってから彼女は話し出した。
「……私、お金持ちの家に生まれたの。
家には家政婦さんが何人かいた。
だから、家事とかそーいうのはしてもらってたの。
私も甘えん坊だから、ぜーんぶ任せっぱなしだった。
それに私、学校とかもさぼってたの。
いっつもおじいちゃんのとこにいって遊んでたわ。
それからおじいちゃんが死んで、父親が急に私に厳しくなって。
私、父親がだーっいきらいだったから、本当にいやだった。
だから家出してみたの。
いろんな人の家に泊めてもらったの。
でもみんな、私の常識のなさに怒って追い出しちゃうの。
でも……なにかしたくて…」
Kは話が飛びすぎであまり理解できなかったが、きっと話したくないのだろうと思い、深くきこうとしなかった
しばらく沈黙が続いた。
沈黙を破ったのはKの方だった。
「……そっか。
おまえも大変だったんだな。」
リリィがえっ?というリアクションをした。
「……なんで、私のこと理解しようとしてくれるの?」
リリィは涙を拭ってからKに尋ねた。
「俺も何も知らないで大きくなった子供を知ってるからさ。
…まぁ、規模が全然違うけど。」
Kがいった。
それから一枚のアルバムを取り出して開いた。
そこにはとある国の人の写真が写っていた。
おそらく内戦か何かで親を失い、施設に預けられた子供たちだろう。
「……昔父さんが撮った写真だ。この子達は何も知らない。おまえみたいに。」
リリィはその写真を真剣にみた。
こんなボロボロの服を着ている人をはじめてみた。
私と同じ……?
「…あ、そうだ。
俺が教えてやるよ、料理とか掃除とか」
いきなり思いついたようにKはいった。
「えっ!?」
リリィは目を丸くした。
「だって何かしたいんだろ?
ならできるようになればいいじゃん。」
Kがいった。
「ホントに、いいの?」
リリィがきいた。
うん、とKが答えた。
少女はとびきりの笑顔をみせた。
「ありがとう!K!
あなたに出会えて良かった!」
それからリリィは、いきなりKの唇に自分の唇を押しあててきた。
所謂、キスだ。
さすがにKもあわてた。
「なっ!?なんだよいきなり!?」
Kが後ろに態勢を崩しながらいった。
「えへ、うれしいことをしてくれたときのお返し。
昼見たドラマでしてたの。」
やれやれ、一体どこから教えたらいいんだ。
Kはそう思った。
・・・・・・
彼女が寝てから、Kは机に向かった。
「……全く、まだレポート終わってないのにさぁ……」
ため息をついてからいった。
あの後Kは、リリィと一緒に片付けをしていたので、もう時計は深夜の1時すぎていた。
でも片付けすることは不思議といやではなかった。
片付けの間、なぜか父さんが話してくれたことを思い出した。
・・・・・・
「さて、レポートレポートっと………
………!?!?!?」
Kは机の上に広げたレポートを見て驚いた。
レポートができていたのだ。
しかもありえないほど完璧に。
「あれっ?俺やってないよな?」
Kは目をこすってからレポートを確かめた。
するとレポートの最後に流暢な筆記体でこうサインがしてあった。
Liry
「……リリィ!?」
Kは疑ったが、文字を見るかぎり、自分のものではないのは確かだった。
「リリィ………
一体なにものだ??」
Kはすやすや寝ているリリィを見つめながらつぶやくのだった。
リリィって何者??これはこの作品の数少ない魅力だったりします。 ところで、うさぎや先生に
「あれってゴスロリっていうんだ」的なメッセージいただきましたが、……ごめんなさい、勘違いかもしれません、確かでないので信用しないでくださいm(__)mでも深キョンには間違いありません(笑)