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ここらへんから話のぶっ飛び度が48%くらいアップします( ̄▽ ̄;)
「普通に生きたい」
これは、私にとって最大の夢で、最大のタブーであった。
小さい頃から私は学校にあまり行かなかった、と、いうより、行かせてもらえなかった。
父親の方針だった。学校にいっても余計なことを教わるだけ。そういつも父親が言っていた。
私はずっと会社の研究施設で、研究に必要な知識だけを学習させられた。だから友達なんかいない。遊ぶことなんか知らない。常識なんてない。
そんな私にとって唯一仲間と言えるのは、彼女のお兄さんと、おじいちゃんであった。
おじいちゃんは研究のこと以外にもたくさんのことを教えてくれた。トランプや囲碁等の遊び相手をしてくれた。
そして、お兄さんは外の世界のことを教えてくれた。私くらいの年頃の女の子がどんなことをしているのか。何が流行っているか。
お兄さんの話してくれる世界は、私にとってお伽話のような世界だった。
お兄さんがいつか買ってくれたCD。
その歌の少女はいつも笑っていた。
歌詞に出てくる恋人だとか、そういうの言葉がどんなものなのかは何と無くしかわからない。
でも、いつも笑っている彼女が素敵に思えて、すごく羨ましかった。
「おじいちゃん、私も外に出て、皆と同じような生活がしたい。」
私がそういったとき、おじいちゃんは少し淋しそうな、どこか申し訳なさそうな表情をした。だから慌てて修正する。
「……わかってるよ、私にそんなこと、許されるわけ、ないものね。」
そう、許されない。
私は大森家の人間。研究のこと以外、必要なもの等ないのだ。
私がそういってすぐだった。
研究所が爆発した。
研究所はもちろん、そこにいたおじいちゃんも亡くなってしまった。
私は失望した。一人部屋に閉じこもった。
ただでさえ仲間と呼べる人が少ない私にとって、おじいちゃんの死はあまりに苦痛すぎた。
ずっと泣いて過ごしていた。
ある日、使用人が私の元に銀色のスーツケースを届けてきた。
その中には、今まで見たこともない大金と、一枚の手紙が入っていた。
手紙にはこう書いていた。
『このお金をもって、外の世界に行きなさい。今はわしの事故で会社が混乱してるから、お前が出ていってもすぐにはばれない。だから安心していって来なさい。』
「うそ……」
そう、おじいちゃんは私を外に出すために、わざと事故を……。
私は急いで家を出た。
おじいちゃんが命をかけて私にくれたチャンスなんだ。絶対に、無駄にしてはいけなかったのだ、
でも、現実はそう甘くなかった。
外に出て初めて知った。私の無知を。
私のした行動は全部裏目に出てしまい、出会った人すべてに拒絶された。
私はもうどうにもならない。そう思っていた。
そんなときにKとであった。
Kは私にたくさんのことを教えてくれた。料理とか洗濯とか。挨拶の仕方、買い物の仕方。
それから、恋することだって……。
あげたら数え切れない。どれだけ礼をしても足りないくらいのことである。
Kは私を救ってくれた。
Kは私にとってかけがえのない人。
だからしられたくなかった。私のこと。おじいちゃんのこと。
でも、知られてしまった。
私がどんなことをしでかしたかを知ってしまった。
私のせいで、おじいちゃんが死んだのを、知ってしまった。
私はこのままではいけないんだ。私がこんな幸せに生きていてはいけないんだ。
生きていては……。
・・・・・・・
「あの人には……Kには……知られなくなかったのに……
……せっかく好きな人ができたのに……」
リリィは台所に向かった。それから包丁を取り出した。
そして自分の手首にあてようとした。
「…リリィ!?!?」
誰かの叫び声がした。
Kだった。
ここに出てくる曲こそが『リリィ』です。歌詞にいつも笑っている少女が出てきます、音楽的にもなかなかいいと思うので、是非聞いてみてくださいね(ノ><)ノ