2‐5
一年前、これを書いていて一番苦労して、一番時間をかけた文です。
するといきなりリリィがKに抱きついてきたのである。
「お、おいっ!?」
Kは焦って振り払おうとした。
しかしよく見ると、リリィが震えていた。
「………停電?
怖い……」
リリィがガタガタなりながらいった。
「落ち着くんだ、大丈夫だから、
さぁ、深呼吸して。」
Kがいった。
そして二人で一緒に深呼吸をした。
「……落ち着いた?」
「…少し。」
リリィは顔をあげていった。
それでもKに抱きついたままだった。
「……ねぇ、さっきの続き、あなたの夢の話してよ」
リリィはいった。
「夢かぁ………今考えてるんだ。
だから言えないよ、」
Kが答えた。
それから聞き返した。
「リリィは?」
「私はね、普通の人みたいにいきること。
あなたのおかげでかないそう。」
リリィはニコニコしながらいった。
「それはよかった。」
Kもわらった。
「……あのね」
リリィがKの目を真っすぐ見て話しだした。
「私ね、ずーっと前からこの夢をもってたの。
でもなかなかかなわなかった。
あきらめたりもした。
でも最近気付いた。
やってみたらかなうんだって。
だからね、K。
もし昔、あきらめたりしてしまった夢とかがあるんなら、やってみてよ!
私がとやかく言う権利ないんだろうけど………
私には感じるの、あなたが後悔してるのを!!」
・・・・・・
そのとき、俺ははっとした。
そうだ、俺は後悔していたんだ。
父さんがいなくなってから俺は目標無しに生きてきた。目的がなくなったんだと思っていた。
でも違った。
なくなったんじゃない、逃げてたんだ。
厳しい現実から逃げていたんだ。父さんの体験したような現実から……
でも、このままじゃいけない。
俺も前へ進まなくちゃ。
こんなにか弱い女の子だって、頑張ってるじゃないか。
自分の『夢』にむかって、一生懸命頑張ってるじゃないか。
リリィは諦めなかったんだ。
俺も…………諦めない!!
・・・・・・・
「だから………」
リリィは必死にKに何かを伝えようとしていた。
すると
「!?」
リリィは驚いた。
Kがいきなり抱き締めてきたのだ。
それからKがリリィの顔をみていった。
「ありがとう!リリィ!
俺はもう迷わない!
俺の夢は……父さんが夢見た世界を実現させることなんだ!
リリィ!
俺もおまえみたいに夢をおってみるよ!」
Kは笑顔でいった。
「う、うん、わかった。」
リリィは少し目をそらしていった。
リリィの心臓がバクバクいっていた。
・・・・・・
何だろう?
この、胸のドキドキは。
こんな感情は、生まれて初めてだ。
Kの腕の中で一人焦っていると、ふと午前中のことを思い出した。それは、ハルカさんが教えてくれたこと。
『好きっていうのは……
この人と運命を共にしたいって気持ち。』
……もしかして、好きってこういう気持ちなのかな??
私の新しい夢ができた瞬間だった。
・・・・・・
「……あ、夕日だ。」
Kが指差した。
「綺麗……」
リリィはKの腕の中でそっとつぶやく。
空が見事に真っ赤になっていた。
・・・・・・
家についたのは夜の9時だった。
Kはポストをみた。
封筒が一枚入っていた。
この前受けた大森製薬という会社からだった。
中にはいくらかの書類と、こう書いた紙が入っていた。
貴方を本社の研究員として採用します。
Kはざっと目を通してから、封筒にもどした。
「やりたいこと、見つかったしな。」
そういって彼は封筒を破きだした。
「………何破いてるの?」
リリィが尋ねた。
「……いいや、さっご飯ご飯!」
Kが笑顔でいった。
物語はこれから一気に終局ヘ。リリィの正体も明らかに!?