2‐3
Kたち3人は朝食をとり終えると、市内のデパートにいった。
「Kはどうする?
私はリリィちゃんと買い物に行くけど」
ハルカがKに尋ねた。
「いや、俺は別の用があるからいっててくれ。」
「じゃあ1時にここね」
そういってKはリリィとハルカと別れた。
・・・・・・
Kは近くにある別のデパートにいった。
それから一番上の階にいった。
そこではある写真家の作品の展示会があっていた。
(故、山岸徹氏 写真展)
Kはそこへ向かった。
「こんにちは、本日はこの展示会に来ていただきあり……」
入り口付近に立っていた女性が、決まり文句みたいなことを言おうとして、途中でやめた。
「………ケイタ、くん?」
「こんにちは、純子おばさん、」
Kはそういって挨拶した。
ケイタの父親の作品の展示会でのことだった。
・・・・・・
「……ねぇ、リリィちゃんの将来の夢ってなに?」
ハルカがリリィに服をあてながらいった。
「将来の夢?」
金髪の少女が不思議そうに聞いた。
「そう、これからどうしたいか、……これはかわいくないしなぁ。」
ハルカは籠にたくさんいれていた服をひたすらリリィにあてて見ていた。
「……今は、普通の人みたいにいきることかな?」
リリィは何気なく答えた。
「そっか、そうだよね」
ハルカはリリィの顔を見てからわらった。
リリィもそれにあわせてわらった。
「……ケイタはね、いや、Kはね」
ハルカは作業を続けながら話しだした。
「Kは、父親を夢にしてたんだ、父親の仕事をすごく尊敬してた。
でも、その父親が二年前に、仕事してて死んじゃって……
それ以来、夢なんて持たなくなってね……」
ハルカは少しうつむき加減になっていった。
リリィはそれを黙って聞いていた。
・・・・・
「……父さん、こんなに写真とってたんですね」
ケイタが純子おばさんに向かっていった。
「えぇ、ここにあるのはほんの一部、まだたくさんあるわよ。」
二人は一つの写真の前にたった。
それは子供の写真だった。
両足がなかった。
でも笑っている。
「……中学生のころ、僕もカメラマンをめざしたことがあったんです。」
ケイタが写真を見ながら話しだした。
純子おばさんはケイタをじっとみていた。
「そのことを父さんに話したら、反対されたんです。
しばらくはなんで反対するのかわかりませんでした。
でもある時、父さんはある写真を見せてくれたんです。
それは、病気でもう死にそうな顔をした子供の写真でした。
それから父さんはこういったんです。
『俺は、この子供に、写真をとってあげることしかできなかった。
ただ死ぬのを見守るしかできなかったんだ。
だから、おまえは、この子達を救う道を選んでくれ。』
って。
だから僕は大学も薬学系に進学した。
父さんの体験した悲しい現実をなくすために、努力した。
…でも、父さんは殺されてしまった。
それも、写真を撮りに行った国の人に。
……どうして…
……それ以降、僕は目的を失ったんだ…」
ケイタはずっと写真をみていた。
目から少し涙がこぼれていた。
純子おばさんは、何もいわないで、優しく頭を撫でてあげた。
・・・・・・
「……ところでさ、リリィちゃんは好きな人ってできたことあるの?」
ハルカはまだリリィの服選びをしていた。
さっきよりは大分絞られているようだった。
「好きな……?」
リリィは不思議そうにきいた。
「そう、好きな人。」
ハルカは少しテンション高めにいった。
女の子はこーいうはなしになるとテンションがあがるものだ。
「好きな人…」
リリィは少し考えてみた。
「ねぇハルカさん、好きってどういうこと?」
リリィが真顔で聞いてきた。
リリィは知らなかった。同世代の友達などほとんどいなかった彼女にとって、恋というのは未知なる存在だったのだ。
ハルカは手をとめて少し悩んだ。
「うーん……
例えば……
この人の奥さんになりたい!とか、
この人と運命を共にしたい!とか思うことだよ」
「運命を、ともにしたい……」リリィは繰り返しつぶやいた。
「よぉし、この三種類にしましょう!
じゃあ今からきるのはどっちにする?」
ハルカが何十分にもおよぶ作業を終えてからきいた。
リリィはその3種類を見比べた。
それからいった。
「……ねぇ、Kって何色がすき?」
「え?……白だったと思うけど」
ハルカが答えた。
「じゃあこれにする。」
彼女が選んだのは、少し黄色みのある白いワンピースだった。