表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

今日から学校と仕事、始まります。②莞

根本は折れずに生きている

作者: 孤独

およそ、中学とか高校辺りに。人は夢を持っていく。

そしてまだ、何もやりたい事がない人間もいる。特にやることもないまま。


『俺、プログラマー目指すわ。すっげーの作ってやるんだから!』

『そうなのかー、俺。まだやりたい事、決まんねぇのにな』


高校でできた親友の2人はしばし別れる。


『俺はもうプログラマー一筋で行くぜ!サイバー関連学びてぇ!そんで、一発当ててやるんだ!お前も次の大学で見つければいいじゃねぇか!』

『そーだな。なんだかんだ、勉強はしてた方だし……気ままに考えてみる。お前みたいに決められる男になりたいな』


◇     ◇


そんな別れから10年後くらい。

同窓会で2人は再会を果たす。


「おっ………」

「久しぶりー」


それはお互いにまったく違う10年間を過ごした者達の顔だった。

ガキ臭さはかなり消え、大人の風格を漂わせて再会を果たす。あの時は炭酸飲料での乾杯が多かったが、今日は堂々とキリンビールだ。


「今、三矢は何してんだ?」

「ああ、……その。ゲーム会社に勤めてる。その管理とか雑用、編集。あと営業か……ひっくりめて会社の雑用だな。たまにコード(プログラミング)を打ったり、デバックとか色々だな」


微妙に気を遣ったような声で、今の就職先を答えた三矢。その答え、あの頃とは信じられない職業だった。あーいう仕事というのは、目指す理由が必要なもの


「……は?え?なんで?」

「成り行きが大半と……ま、俺にも俺なりの夢ができたからか」

「いや!お前、ゲームとかあんまりしてなかったじゃん!!クリエイターっぽい感じしなかったぞ!」

「色々あったんだよ。ま、休みなんてあんまりないけど、給与が良いしな。経営、宣伝、売り込みが得意なのいて、制作陣も優秀だから、俺。結構下っ端扱いだけどな」

「いやいやいや、そうだとしても……いや、お前。すげーな」

「そうか?そーいうお前は……?」


話をしていて、なんとなく感じ取っていたが、


「はははは、フリーター!じゃねぇけど……今は不動産の従業員だ」


夢は叶わなかったようだ。それは諦めたっていう言葉より、


「気持ちだけじゃやってけねぇのよ。いや、舞い上がっていただけか」

「……どこでも厳しい世界だからな。しかし、お前もどうしてそこに……」

「まーその。沢山勉強してても、終わらない事ばっかり。やりてぇ事はやりてぇままで進まず。少し就職したところも、俺の希望したところじゃなかったからな。2か月で辞めちまったよ。俺にはきつかったぜ。似たようなところ探す気力も湧かなかった」


現実に打ち砕かれたというものだった。

あの頃はそんな負け犬になるわけないと思っていたが、


「生活も苦しくなったしな。いや、結局。夢より生活を大事にしたのさ。なにやってたんだよって、言われちまうかもな。入院したら気付けるけど」

「一発逆転とかしねぇの?」

「やんねぇーよ!バカじゃねぇの!別にせんでも、もう十分な生活をしてるしな。いや、三矢!お前頑張れよ!作ったゲーム買ってやるからよ」

「ありがとよ」


別に三矢は直接作っているわけではない。制作だけが全てではないし、売り込む側の人間として働いている事が多い。好きかどうかは置いといて、関われる人間にはなれた。

つまるところ。


やりたい事以外はできない奴。

やりたい事はないが、やりたくもない事はできる奴の差。


「……しっかり勉強してたら、お前みたいになれたかな?」

「どーだろな。少なくとも、俺は仕事を楽しいとかあんまり思えないし。お前の言う通り、生活はほぼほぼ、ひぃひぃ言ってるよ。主に健康面で」

「ストレスやばいだろー!変なのばっかだろうし!」

「まーな…………なんつーか、……変なのばっかだよ」


ただお互いに成長していた10年だったのだろう。

夢を砕かれても、根本は折れずに生きている奴。

夢を決め切れずも、根本は折れずに生きている奴。


「彼女できた?」

「いねぇ」

「はははは、俺!結婚してるー!仕事先で出会った女性と先月結婚しましたー」

「てめぇ……そんなイチャラブ報告は聞きたくなかった」


無駄になった事もあれば、それも気付けないものもある。

こうして一杯飲んで、互いに元気にやれている事を確認できれば、今日はそれでいいんだろう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  二人の掛け合いが本当に仲良しな雰囲気出てますね。ストーリーも、学生から社会人になって厳しさを味わった二人の近況報告を聞いていて、『あー、わかるわー』と思う所がありました。  子どもの頃…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ