後編
晴視点
俺佐伯晴はクラスメイトの一人に目を奪われていた。
めちゃくちゃ可愛い
正直に言って一目惚れである
しかしクラスの女子のボス的存在の安藤に妬まれて浮いてしまっていた。
他の男子も話しかけようとしたら他の女子から睨まれるからか誰も近づこうとしない
これはチャンスだと思い思い切って隣に座る。
しかし何を話していいのか分からず
本当に惚れた人に対して頭が回らず緊張で周りが見えなくなる。
そしてなんとか絞り出した言葉が
「俺が守ってやる 月5万で」
最低だ
咄嗟に恥ずかしくなり5万でと付け足してしまった
もちろん断られて一安心したのだが
第1印象が悪すぎてそれ以上話しかけられないでいた。
そして20日後彼女は5万円を持ってきた
始めはもちろん断ろうとした
でも5万円を握っている彼女の手が少し震えていたのを見て考えを変えた
きっと寂しくてこんな渡したくもない奴に自分を殺して渡す決心をしたのかもしれないとここで拒否してしまうともしかしたら学校を辞めてしまうかもしれないそう思うと断れず
無言でそれを受け取る
しかしこんなお金を使うことはできないから全額使ってない方の銀行に手数料がかからない日に入れた
とりあえずクラスで浮いているのをなんとかしないといけないと思ったけど、
鈴木さんの隣にいると比べられちゃうからちょっとや安藤さんに目つけられるの嫌とかなかなかうまくいかなかった。
自分の非力さを悔やみながらも今出来る事を考えて遊びに誘う事にした。
更に鈴木さんだけが毎月5万も払う罪悪感がすごかった、卒業したら返す予定だけどそれまでに不自由な思いをさせてしまうのは確かで俺だけが楽々生活してるのはおかしいと思いひたすらバイトを入れて夜には家で出来る内職のバイトも掛け持ちし自分も毎月5万貯金して最後に倍にして返そう。
初めて遊びに誘った日
前日に内職をしながらしっかりプランを考えた。
緊張でほとんど寝れなかった所為か内職がかなり捗った。
貯金プラス遊びに行く代金二人分をなんとかこの三ヶ月で貯めれた
女子受けしそうな動物映画や始めるとやたら長いウィンドショッピングにお洒落なカフェ
色々調べたけど大丈夫か分からず胃が痛くなってきた。
一通り終わった帰り道
楽しかったと言ってもらえた
お世辞でも嬉しかった 。
夏休みの間少しでも会える時間を増やしたいから次の予定を頑張って聞いてみた
そうしたら10日後と言われてこれならなんとかお金はなんとかなりそうと安心した反面10日も会えないのかと残念に思った。
会えない日はひたすら働こう。
後留年したら大変だから勉強もしないと…
高校2年の冬
鈴木さんとはあれから定期的に遊びに行けている。
同性の友達を作ってもらう作戦は未だ難航中だ
それもこれも鈴木さんが可愛すぎるのがいけない、どうしたって周りの女子と並べると並んだ女子は引け目を感じる
受け取ったお金も100万を超えている
自分のと合わせて210万円だ
人生で初めて持った大金である。
その人の一生で一度しかない高校生活をこんな形で消費させてしまっている罪悪感と曲がりなりにも関係を持ててる嬉しさがせめぎ合いバイトにも慣れてきたし俺のの分の貯金はもう少し増やして倍額以上で返そうと思う。
話してみて鈴木さんは礼儀正しく真面目で
優しい理想の女の子だと思った。
お金を渡される度何度断ろうと思ったか
しかし最初の光景がフラッシュバックして無言で受けてとる事しか出来なかった。
卒業式の日
貯金は合わせて400万になった
鈴木さんが180万、 俺が220万だ
人生一度の高校生活
たったの220万では足りないのはわかっているが今の俺に出来るのはこれが精一杯だった
入学してから最初に言ってしまった一言
それがきっかけで俺はものすごい楽しい高校生活を送ることが出来たが鈴木さんはお金を自由に使うこともできなくて不自由な思いをさせてしまったが結局最後まで何もしてあげれなかった。
多分途中からはお金をもらうのを断ればよかったんだと思う。
しかし出来なかった。
それが俺と鈴木さんを唯一繋ぐ物だったから
最後にダメ元で通帳を渡す時に告白してこの恋に終止符を打とうと決心した
そして最後までこんな俺と遊んでくれた事にお礼と謝罪をする
最後に呼び出したのは自分の部屋だ。
告白をしたら
どんな言葉で罵られるか
彼女の冷たい目線に俺のメンタルはきっと砕けるだろう。
それでも言わずにはいられない
この3年間で一番最初に抱いた恋心よりももっと強く彼女の事を好きになっているのだから座布団と小さなテーブルを挟んで意を決していう
「一目見た時から好きでした付き合ってください」
彼女は目を見開いて驚いている
俺は慌てて通帳を前に出した
「ここに鈴木さんから受け取っていた分の180万円丸々入ってる、それとこっちには俺が貯めた分の220万で合わせて400万円ある 全く足りないと思うがこれが精一杯だった
どうか受け取ってほしい」
彼女が固まる
どうやら思考が追いついていないようだ
「ちょっと待ってください、だって私が渡してたのは友達料でそれで今まで色んなところに遊びに行ったり買い物してたんじゃないんですか?」
「いや貰った分は全部貯金して、自分のバイト代から出してた。
それと年末やクリスマスとかにずらしてお祝いしてたのはその日がバイトで稼ぎ時だったりしたから寂しい思いをさせて申し訳なさしかない
最初に言ってしまった一言、咄嗟に出てしまって途中から引っ込みがつかなくなって大事な高校生活を本当にごめんなさい 」
頭をしっかり床につけて土下座した
彼女からの返事はない
しばらくして下げた頭を上げ彼女を見ているとそこには大泣きしている鈴木さんが居た
俺はやっぱりとんでもない事をしてしまった
やっぱり4月のあの時にしっかり断ってれば違う未来になってたはずだった
そこから先俺は何を話していいのか分からずただ鈴木さんが泣き止むまで待った
しばらくして落ち着いたのか鈴木さんがゆっくりと話し始めた
「違うんです、3年間ずっと考えてた事が全然違くて急に言われてびっくりしただけです…
私はですね、中学の時はすごい地味でそんな自分を変えたくていっぱい頑張って高校デビューしたのそしたら見事に失敗しまして孤立した所に佐伯君が声をかけてくれたのです
最初お金要求された時はびっくりしましたけど、こんな孤立した人と絡むのは佐伯君にもリスクがある事ですしお金を要求しても仕方ない事だって思ってました
何か買って貰っても自分お金で買った物だと思って素直に喜べませんでした
でもそれは全部違ってて
本当は佐伯君が頑張って働いて稼いだお金で買ってくれた物達でその嬉しさとかが一気に来まして
更にあげた物だと思ってたお金が倍以上のお金になって渡されたりと私の頭では全く処理が追いつきません。」
今までに見たことのない柔らかな笑顔で話してくれた鈴木さんはこの世の誰よりも可愛かった。
「それで佳奈さん告白の返事は?」
思わず下の名前で聞いてしまった
聞かずにはいられなかった
誰にも渡したくない、他には何も要らないから鈴木さんをください
心の中でそう願う
彼女は通帳に手を伸ばして残高を確認してから一言言う
「このお金で一緒に住む家決めに行きましょ!晴君」
後編も読んでくれありがとうございます




