前編
佳奈視点
私鈴木佳奈は完全に高校デビューに失敗してしまいました。
高校生活が始まって三ヶ月、
中学時代の地味な自分が嫌いで雑誌やインターネットでアイドルみたいな髪型やお化粧を必死に覚えて勉強して自分ではそれなりに可愛くなれたと思っていたのですが、何故だかクラスの女子に睨まれてしまい男子には避けられています。
横にいる佐伯晴君だけは唯一仲良くしてくれています。
私は仲良くしてくれてる佐伯君に毎月5万円の友達料を渡しています。
入学最初の週に空席だった私の隣に座って守るから毎月5万くれと言ってきたのです。
最初は断りました。
しかし10日、20日と経ち依然クラスから浮いていた私は寂しさに耐えられなくなりました。
私はお金で孤独を紛らわすとこにしました。
幸い仕送りが毎月10万円で家賃を払ってくれていたのでなんとか払うことができました。
最初はお金だけもらってただ話してくれるだけだと思っていたけど私の陰口を言う人に文句を言っているのを見かけました、そのせいか佐伯君も私程ではないけど少しだけ浮いていたけど本人は全く気にする素振りも見せずに寝ていました。
そしてそのまま時間は過ぎて高校生最初の夏休み目前のある日佐伯君から夏休みに遊びに行かないかと誘われました。
もらった5万から出すからお金はいいとのことです
他に遊ぶ友達もいない私は素直に誘いを受けることにしました。
「それじゃ駅前の時計の下に明後日の10時で」
どこで何をするなどは全く聞かず素直に頷く
お金で繋がれた仮初めの関係だけど少しデートみたいでテンションが上がっていた。
もしこれがデートなら人生初デートになります。
臭い物には蓋を、そうお金を渡しているところだけ見ないようにすればいいのです
そうすれば…
私はそこで深く考えるのをやめた。
遊びに行く当日、待ち合わせの15分前に時計前に着いた。
佐伯君はまだ来て居ないので時計の周り囲むような設置されているベンチに腰掛けて待つことにした。
時期は7月下旬外の気温は30%を軽く超える猛暑。
早く来たのを少しだけ後悔しそうになった時佐伯君が駅のホームから来た
「早いな、俺の方が先だと思ってた」
「昔から待たせるより待つ方が好きなの」
「そうか、今日は映画見てから飯食って、それからショッピングモール見て回ろうかと思ってるんだがそれでいいか?」
「映画何観るの?」
「あの犬が出るやつ」
佐伯君はそう言って大きな垂れ幕を指差しながら言った。
あれは今話題の盲導犬と目の見えない子の泣けるストーリーの映画ですね
同級生からお金を受け取るような人が選ぶチョイスにしては意外だと思ってしまいました。
そして映画後の予定も普通のデートっぽいのが更に意外さに拍車を掛けています。
映画は10時20分から12時10分までで丁度いいタイミングでお腹が空いた頃にファミレスでの昼食でした。
そして腹ごなしにショッピングモール内をぶらぶらしました。
そこで目に付いたヘアピンを眺めていると佐伯君は無言でそれを手に取ってお会計を済ませて渡して来ました。
少しだけキュンときたのですが冷静に考えてみると私のお金なので悲しくなりました。
1時間ほど歩いて喫茶店でコーヒーで休憩してから更に30分ほどぶらぶらしました。
しかし今日のお出かけは時間配分とか色々と考えられていました。
きっと佐伯君はこう言うデートに慣れているのだと思います。
正直に言ってそれなりに楽しかったのでまた来たいと思ってしまっています。
「次はいつ空いてる?」
駅に向かっている途中に次の予定を聞かれました。
しかし多めに遊びに行ってしまうと友達料が上がってしまう危険性があります。
月を跨いで8月分の5万はありますがそれでも今日みたいな事をすればすぐに無くなってしまいます。
私は少し考えて答える。
「来週の日曜とかでどうでしょうか」
「10日後か… 分かった 今度は品丸駅の西口朝の11時に あとこれパイカ 5000円入ってるやつ持っといて」
電車の改札でピッとするカードを受け取る
どうやら私はこれ以上お金を出さなくていい様です
「それじゃ今日はこれで、また来週」
「うん また来週 今日は楽しかったです」
電車に乗る佐伯君を見送った私も家に帰る
とりあえず次遊ぶ日までに宿題終わらせてしまいましょう
他にやる事もありませんし…
そのまま時間は過ぎて高校2年の三学期
あれからも私は佐伯君しか友達が出来ず友達料も払い続けています。
1年目の夏休み以降定期的に遊ぶようになって少しだけ佐伯君のことがわかるようになってきました。
授業中は大体寝ているのに目の下に隈がひどいです
私のお金で夜な夜な遊んでいるんでしょう
テストでは平均点よりやや上の点数だったので常に寝ていてそこそこ点数が取れているので頭は良い方だと思います。
私から毎月5万も受け取っているのになぜか節約生活を送っています。
一体何に使っているのでしょうか
聞いても答えてくれません
きっとギャンブルなんかに使っていて答えられないんだと思っています。
口数はそんなに多くないけどしっかり道路側を歩いていたり、少しでも良さそうな商品を眺めていると欲しいか聞いてきたりとかなり気遣いも出来ていると思います。
それにマフラーや手袋などの防寒具も買ってくれます
もちろん私のお金からですが
きっと金ヅルを逃さないように必死なんだと思い素直に喜べない気持ちです。
卒業式の日
あっという間だった3年間でした。
佐伯とは花火大会や紅葉狩り、プラネタリウムなんかにも行きました。
3年生にもなると佐伯君経由で少しだけ他の人とも話せる様になっていましたが
それでも友達と呼べる様な人は出来ませんでした。
涙が出そうになるのを必死堪えて涙目になっている私に佐伯が話しかけてきた
「この後最後に話があるんだけどうち来てくれない?」
そんな事を言われて
お金を払っていたとはいえ3年間いろんな所に行って色々遊んだ。
佐伯君が居なければきっといじめられてもっと辛い高校生活だったかもしれないです。
そう考えれば最後にお礼ぐらいは言ってもいいかもしれません。
そう思うようになっていた。
そしてそんな佐伯君に言われた高校生活最後の言葉が
「一目見た時から好きでした付き合ってください」
始めての小説で拙いですが少しでも楽しんでいただけたら幸いです
後編も良かったらどうぞ




