キリカ・シュナイゼル
田や畑の間にある道を歩き、立派な家が見えてきた。屋敷とは言えない、勿論、城とは言えない、そこにあったのは、木で仕上がった大きな民家であった。
中に這入ると、真ん中に大きな長机があり、その上には豪華な灯りが灯されていた。壁には、沢山の雑貨が置いてあり、至る所に観葉植物が置いてあった。奥には暖炉までもがあった。それの横には二回に続く階段がある。
僕は乾いた布の服に着替えさせられ、二回のキリカの部屋の椅子に座った。丸机の向こう側の椅子にキリカが座る。
丸机には、湯気を漂わせる紅茶が二つ置かれた。
「えっと、領主さんはいないのですか?」
「今は外出しております。明日には帰ってくるでしょう……で、レインさんは何故あの場所にいたのですか」
僕は紅茶を一口頂き、口を開く。
「いや、ただ迷ってあの場所にたどり着いただけです。あ、あと服を着ていないのは、襲撃を受けた日に焼かれて消えました。そして、裸で森の中を駆け巡り、体を洗っていたところ、貴女に見つけられたわけです。
僕は訊かれるであろう、服のことも言っておいた。それと、あの小川にたどり着いた経路も。
「はあ、そうでしたか。それはつらかったでしょう」
キリカは、銀髪を片方耳にかけ、エメラルドグリーンの瞳をこちらに向ける。よく見るとお嬢様にも劣れをとらない美貌を待ち合わせている。キリカは、紅茶のカップを口に近づけ、飲もうとする。が、一向に飲む気配がない。もしかしたら……
「猫舌ですか?」
含み笑いで言ってみると、今までの雰囲気が崩れる。
「そ、そんなわ、け、な、ないじゃないですかあ」
「無理しなくでもいいんですよ」
すると、一気飲みをし始めた。キリカはギリギリ飲み干したが、熱いっと言って暴れている。僕はすぐさまカップに水を汲み、キリカに飲ませる。キリカは徐々に落ち着きを取り戻してきた。
「ご、ごめん」
「い、いえ。お見苦しいところを」
「いや、可愛かったからいいよ、あ、あと敬語じゃなくていいよ。多分、同い年くらいだろうし」
キリカは顔を真っ赤にしていた。わ、わたしが、かわいい、かわ……という感じになってしまった。キリカは他人には本当の自分を見せたくなかったのだろう。
僕はキリカの両頬をパンッと叩く。すると、正気を取り戻した。
「ええと、何歳?私は16歳……」
「僕も16歳だよ」
「ねえ、提案があるんのだけど……」
何とも切り替えが早いこと。その切り替えの早さには感心するよ。キリカは話しを続ける。
「この街に住まない?」
キリカの口からそんなことが聞こえてきた。僕も憧れの田舎ライフができるというのか。
「喜んで」
そう笑顔で、了承の返事をする。