運命の出会いという名のプロローグその2
見切り発車のせいでなかなか話が作れない…
今、目の前で起きている事が理解出来ない。
今、目の前に居る存在が何なのか、理解が追いつかない。
何が起きている? ボクの目の前に居るこの子は一体何者なんだ?
この場に相応しくない、まるで街の中に居る売り子の様な軽装の女の子。
こんな、危険極まりない街の外のフィールドに、どうしてこんな格好の子が居るんだろうか?
いや、それ以前に何故……
「何で……ボクと同じ顔……」
……どうして、ボクソックリの容姿をしているんだ?
「オババ様。この辺りだよね、例の異常反応があった場所って」
「そのようじゃの。何か不気味な魔力の流れがあったようじゃが……」
「まったく、ただの討伐クエストが何でこんな事になるんだか」
「いちいち愚痴るでないわ、まったく」
「だって今日はこんなに早く討伐出来たんだよ? 本当なら早く帰ってゆっくり出来たはずなのに……」
「まぁまぁ、仕方が無いでしょう、お嬢。事が事なんですから」
「だな。流石にちょっと異常過ぎたよ、あの魔素反応は」
「お嬢は~、もうちょっと事態と言うものを~重く感じるべきじゃな~い?」
「うぐ……それは解ってるけど……」
ボクの愚痴に、周りのみんなが次々と嗜めてくる。
いや、言ってる事は理解出来るよ? 冒険者であるボク達が、脅威と感じるような異常な魔素反応を感じたんだ。何か大変な事が起こる予兆かも知れない。
そうなった時に、対応出来るように仕事を度外視してでも情報収集に励まなければいけないのも十分理解しているつもりだ。
けど、久しぶりにゆっくり出来ると思っていたボクの気持ちも理解してもらいたいものである。何しろ最近はずっと討伐クエストに出続けていたのだ。そこに早めに終わったとなればゆっくりしたいと思うのは当然の事だろう。
「そもそも、リーアだって久々に羽を伸ばせるって喜んでたじゃないか」
「それはそれ~、これは~これ。リーアさんだって~事態の異常さは十分理解してますよ~?」
「何だよ、それは……」
真っ赤なローブを身に纏い、漆黒のマントを羽織った間延び口調の少女、リーア・シュバルツはボクの言葉に対してまるで自分は違うのだと言うかのようにアピールしてきた。
さっきまで一緒に、久々に買い物に行こうねって話をしてたのに何なのさ、まったく。
「不貞腐れないでくださいよ、お嬢。状況確認が済んだらすぐに街に戻るんですから」
「それはそうだけどさぁ……」
軽装型の白銀の鎧を身に纏い、膝上辺りのギャザースカートを翻しながらクーリエ・ハーヴェストは、丁寧な口調でそんなボクを宥めてくる。
確かに、クーリエの言う通りなんだけど、釈然としない点においてボクに非は無いはずだ。うん、ボクは悪くないはず。
「ま、その後ギルドに行って諸々の報告はしないとしないといけないけどね」
「ミー姐、その一言は余計に突き刺さるんだけど?」
「気のせいさね。ともかく、そんなに早く帰りたいなら早く確認すりゃ良いさ。そうすりゃ、早く戻れるんだし」
「解ってるよ、そんなの……」
クーリエと同じ、軽装型の真紅の鎧を身に纏った姉御口調のミーティア・バレットは追い打ちをかけるような言葉をボクに向けてきた。何さ、みんなして辛辣だな。
ボクだって事態を重んじているつもりなのに、何でそんな事ばっかり言うのさ。
「お前たち、いい加減におし。そろそろ着くよ。ユウキもバカな事ばっかり言ってないでさっさと準備せんか」
「は~い……」
オババ様こと、大賢者の異名を持つ黒いローブの老婆。カーヤ・シュバルツがそんな遣り取りをしているボク達を嗜めてきた。主にボクを。
何でボクが一番悪い事になるのさ。まぁ、愚痴ってたのは確かだけど、少しぐらいボクの気持ちも理解してもらいたよ。
因みに、名前からも解るように、オババ様とリーアは曾祖父と曾孫の関係だ。随分離れた関係だけど、その辺は諸々の事情があるので割愛させてもらおうかな。
で、さっきオババ様も言ったユウキというのがボクの名前だ。ユウキ・ワイト・リリイ。それがボクのフルネームだ。そうそう、名前からも解ってもらえるとは思うし、みんなからもお嬢だなんだと言われている事からも何となく察してもらえるとは思うけど、ボクは所謂ところの貴族だ。
ただ、それも過去の話で、恥ずかしながらボクの一族は既に没落状態にある。なので、ボクも自分の食い扶持を稼ぐべく冒険者になったのである。元々、素質もあったしね。両親の反対? 没落したお家なんだし、無理に後を継ぐ必要はないって事で好き勝手させてもらってるよ。
さてさて、そういう自己紹介的な面は終わったわけだけど、そろそろ本題に入らないといけないわけで。
そう、異常が発生した場所の調査である。ボク達が今歩いている場所は、誰が何の目的の為に作ったのか、考古学者が未だに解明できない遺跡……というには寂れている感じがするんだけど、独特な構成で設けられた石のオブジェが点々と転がっている草原だ。
草原と言っても、中には2メートルぐらいの高さまで茂っている箇所もあるので見通しはそれほど良い方ではない。
平均的には膝上程度なんだけど、そんな場所なので目的の場所はすぐに見つける事が出来ないでいる。
それでも、オババ様の能力のおかげでその目的の場所に大分近付いたみたいだけど。
「あの辺りかな?」
「視界が悪いですね。魔物が潜んでいそうな感じがします」
「確か、この辺りに出るのってホーンうさぎだったよね? だったら心配する必要は無いんじゃないかな?」
「油断大敵~。お嬢は~もうちょっと緊張感持とうね~?」
「わ、解ってるよ、もう」
「ホレ、早うせんか」
「え? ボク先頭?」
「ま、前衛の務めだねぇ」
「その、私がやりましょうか?」
「あんたがやってどうすんのさ。これもユウキの修行だよ。ホレ、さっさとお行き」
「えぇ~? ボク、一応貴族なんですけど?」
「こういう時だけ貴族面すんじゃないよ。早く行かないと帰った後修行させるよ?」
「そ、それはちょっと……うぅ、解った、解りましたよ。まったく……」
さっきからみんな辛辣過ぎるよね? 一体ボクを何だと……
まぁいいや、ともかくさっさとこの件を片付けてしまおう。
そう思いつつ、視線より高く生い茂った草叢を分けた瞬間、ボクの視界に一般と思しき女の事がホーンうさぎに襲われる寸前だった。
その光景を目にすると同時に、ボクはすぐに魔法を発動させた。辺りが草原である事と、女の子が近い事もあったので風の弾丸をイメージしてぶつける事にした。
その一撃は見事にホーンうさぎを弾き飛ばす事に成功。そこからすかさず女の子の前へと駆けつけた。
一体何でこんな所に一般の女の子が居るんだ? そんな疑問を抱きつつも、まだ完全に倒したわけではないホーンうさぎを警戒する。
「大丈……ぇ?」
「ウソ……」
ともかく、まずは女の子の安全を……そう思って、女の子の方を向いた瞬間、ボクは固まってしまう。
そう、ホーンうさぎに襲われていた女の子は……
ボクソックリの女の子だったのだから……
どう見ても同人を作ってる時と同じ形式で書いてますね解ります。それが吾輩の執筆方式か…