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運命の出会いという名のプロローグその1

 ウチの名前は白百合優希。優しいに希望の希って漢字で優希ユウキって読むんよ。

 ま、何処となくありふれた名前ではあるなぁとは、ウチ自身も思ってるんよ? 苗字を除いてやけど……

 ウチの苗字、白百合って名前はウチの本来の苗字ちゃうねん。

 正式な苗字は調べてみんと解らんのやけど、ウチのこの苗字は白百合児童施設っていう施設の名称から取っとる。せやから、この施設の出身の子はみんな同じ苗字の子ばっかりや。まぁ、全部が全部そうとは違うんやけど。

 中には、両親が他界してもうて、身寄りが無くなった子もおって、そういう子は大抵苗字もその家のを使てる。それ以外の子は、基本的にウチと同じ苗字の子ばっかやねん。

 んでまぁ、ここまでの説明で解ってもらえるとは思うけど、ウチは所謂、捨て子ってやつらしい。

 正確には、生まれてすぐ、この施設に預けられたって事らしいわ、施設の人たちの話によると。

 経緯は良う解らん。単純に、出来ちゃってでも育てられんから預けられたんか。生まれてすぐ、両親が先に他界してしもうて親戚の人が施設に預けたんか。やんごとなきお遊びで出来てしもうたから捨てられたのか。

 ま、今更そんなん知った所で何があるってわけでもあらへんし、ウチは別にそんなん気にしてへん。今はこうして元気に女子校生やってるんやしね。

 そんなわけで、ウチの苗字白百合っていうんはウチの本来の名前ではないって事だけは理解してもらいたいわけで。

 ま、だからどうしたっちゅう話やね。

 で、何でウチが今、こんな自己紹介じみた事をしてるんかっちゅうと……

 所謂一つの現実逃避っちゅうやつなんよ。

 ホンマに突然の出来事っちゅうか、何の違和感も無くそうなったっちゅうか……うん、要は現実に有り得へん出来事に遭遇してしもうたわけで……

「……っちゅうかココ、何処やねーーーーーーーん!?」

 思わず絶叫してしまう程の展開。

 目の前に広がる、ファンタジックな光景。

 ホンマに一体何が起きたんや?

「こんなん、まるでネット小説とかにある異世界転移やんか……」

 ついさっきまで、ウチは日本橋のオタロードに向かってたはずや。

 普通に駅降りて、エレベーター昇って、そのままオタロードに向かってまっすぐ舗装された歩道を歩いてたはずなんや。

 それやのに、何の前触れも無くウチの目の前にはストーンヘンジのような石のオブジェが点々と並ぶ草原のような場所に立っていた。

「……はぁ。ホンマに何なんコレ?」

 現実逃避しても、いや、したからやろうけど一向に理解が追いつかへん。

  ゲームの世界に転生とかいう設定の話なら、最初はチュートリアルみたいなんがあったりするからそれも該当に入らへん。

 誰かに召喚された? ならその召喚者は何処や?

 たまたま歩いた先に異世界へのゲートが有った? ならこの辺一帯同じような被害に遭った人で溢れてるっちゅうねん。

「……解らん」

 頭の中で、過去に読んだネット小説や漫画・ゲームの知識をフル活動させてみる。

 せやけど、こんなパターン、聞いた事も見た事もあらへん。

 何で道歩いてたら異世界やねん。

 召喚される際のゲートや魔法陣とか、発光現象とかそんなんもあらへんかった。

 それこそ、ウチがこの場所を元から歩いていたかのような現象や。

 こんなん、ウチの知ってる知識には一切あらへん。ホンマに一体何事が起きたんや?

「……とは言えや」

 もし、この展開が異世界転移物のネット小説と同じ展開なら、ひょっとするとウチにも何か特殊な力が身に付いているかも知れへん。

 そう思うと、思わず表情がニヤけてしまう。

「まずは基本中の基本、ステータスや!!」

 高まるテンションを抑えきれず、声を張り上げてしまう。せやけど仕方あらへんやん? 何しろ夢に見た異世界転移なんやから。

 現状で、転移してきた理由は全くもって解らへん。なら、今は望んでいた場所に来た事を喜んで、そしてその事を確認する方が大事や。

(一体どんな力が備わってるんやろう? 楽しみやわぁ♪)

 そんな事をワクワクしつつ考えながら、ウチはステータスを開くべく方法を試していく。

 頭にイメージ…違うか。音声認証……開かん。何かそれらしいアイテムでも所有してる? いや、ショルダーバックの中身空っぽやん。新刊の同人とか漫画とか買う予定やったしなぁ……

「って何もあらへんやん!?」

 まさかのステータス無しでしたまる。

 これやとウチがどんな力を手に入れてこの世界に来たのか解らんやんか……

「はぁ……こうなったら一つずつ確かめていくしかあらへんか」

 ステータスが解らんのやったら仕方があらへん。

 それ以外にも出来る事はあるはずって事で、こっちの世界でどんな能力を身に付けているのかを確認する為に行動を起こす。

「ファイヤー!!」

 ……呪文なしやとあかんか。ならそれらしい呪文を唱えて……

「我が手に集え焔の意思よ。一つとなりて敵を討て……ファイヤー!!」

 ……何も起きへんね? 呪文があかんかった?

「集え火の精霊。我が魔力を喰らいて敵を討つ炎となれ……ファイヤーボール!!」

 ……これもあかんの? え? 何? これであかんのやったらウチ、傍から見たらただの中二病やんか恥ずかしい。

 それとも、ウチに火系の属性があらへんからなんかな? とりあえず今度は違う属性で試してみよう。

「我が手に集え水の意思よ。その意を持って敵を討て……ウォーターボール!!」

 ……ダメっぽい? 呪文か? それとも属性なんか?

 あかん、まったく解らん。

 ともかく、試せるだけ試さんと。

 そう思ってウチは、次から次へと思いつくままに各属性の魔法を発動させようと試みる事にした……




 ……で、結果はというと。

「……魔法の概念、あらへん世界なんかな? なら、何か技的なものを……」

 何も発動する事もなく、ムダに草原にウチの中二病な呪文が木霊し続けただけっちゅう虚しい結果になりましたとさ。

 こうなってくると、魔法の存在の無い世界かも知れへんね、残念やけど。

 なら、魔法があかんかったら必殺技や。

 そう思ってウチはアクションを起こそうとして気付く。

「ウチ、運動音痴やん……」

 高校の体育の成績、1学期2学期続けてワースト1位という不名誉な結果を残すほどの運動音痴なウチに、一体どんな能力が身に付くと言うのか。

 いやまぁ、何かしらあるかも知れへんけど。

「あ、けどひょっとしたら何か物凄い身体能力が……備わって、へんか……」

 ふと思い立って、軽くジャンプしてみたは良えけど、結論は残酷なもんやった。

 今ウチ、何センチ飛び上がった? いくら軽く言うても5センチも飛んでへんかったやろコレ?

 思わずorzな体制になってしまう。まさか、まさかせっかく得た異世界転移といウチャンスが、まさかのノーチート状態だなんて誰が想像するんよ。

 もし、この世界が魔物やモンスターが跋扈するような世界やったらウチ、即死やんか。

 にも拘らず何でこんな何も無いような世界に飛ばされたん?

 神様、居るなら教えてくれへんかなぁ……

「……ま、応えてくれるんやったらもっと早く顕れてるわな、ウチの前に」

 もはや諦めの境地や。

 こんな、何も無い場所に、何の能力もアイテムも無い状況で放り投げられる。

 絶望しかあらへんね、これは。

 周りに有るんは石のオブジェと、所々膝元辺りまで生い茂った草原だけ。獣道もあらへんかったら、人が通る為に整理された道も見当たらへん。因みに、うちの立っている場所は、靴が少し埋もれる程度の高さ程度しか生えてへん場所なんやけど。

  にしても、一体何でウチはこの場所に来たんや?

 何か目的があるんやろうか? それとも、ただの気まぐれみたいな最悪のパターンか。

「もしこれで、何もあらへんのやったらまるで神隠しやんかこんなん……」

 昔から、神隠しの伝承は世界中に存在しとる。

 そのほとんどが、突然居なくなったパターンが多い。

 で、現状のウチは間違いなく唐突に向こうの世界から消えた事になってるはずや。

 となると、このノーチートな状況は必然でもあるわけで。

「つまり路頭に迷ったって事やんな……」

 その現実に、一気に血の気が引いてしまう。

 一応、お金は有るけど、あくまで向こうの世界の、日本という国の通貨であって、こっちの世界の通貨として使える保証はまったくあらへん。

 それ以前に、今うちの居る場所は周囲は人気の無い不気味な石のオブジェが点在する草原。パッと見で、地平線が見えるレベルの広さなのが、余計に絶望感を増している。

 そんな場所に女子校生が一人で佇んでいるってだけで色々と危険なわけで……

「ど、どないしよ……」

 空を見上げると、太陽は丁度真上辺りに有る。

 どうやら、こちらの世界では丁度正午辺りらしい。

「そういえば、こっちの時間って向こうの時間と一緒なんやろうか?」

 ふと疑問に思って、スマホを取り出す。

 時間を見てみると、丁度正午を指していた。どうやら、向こうの世界とこっちの世界、時間の流れは同じらしい。


“グゥ~……”


「うぅ……お腹空いた」

 今日は、いつもの焼肉丼を食べに行く予定やったから、朝から何も食べてへん。おかげで空腹感が本格的に襲ってきた。

 まさに、最悪なタイミングや。

 せやけど、最悪なタイミングっていうんは連鎖反応を起こすのもこの手の話には付きもの。

 そしてそれは、案の定現れた……


“ガサガサ……”


「な、何!?」

 突然、膝辺りまで伸びている草叢の方から物音がした。

 思わず身構えてしまう。

 この場合、最悪なケースの場合っていうんはもちろん、魔物やモンスターに遭遇する事。

 うちの運動神経やと、遭遇したら逃げる術は一切あらへん。

 相手によるかも知れへんけど、最終的には逃げ切れずに捕まる可能性の方が高い。

 まさに絶体絶命の大ピンチ。

 そんな緊張する中、草叢から出てきたのは体長1メートルぐらいの兎のような生物やった。

 某ゲームに出てくる一角うさぎみたいな姿をしているそいつは、うちの事を視認するや、威嚇行動を始めてきた。

「ひぃ!?」

 恐怖のあまり、身体が強張ってしまう。

 終わった、何もかも。

 きっとうちは、死ぬ。

 異世界に来たというのに、何もせず、何も出来ずに終わってしまう。

 次の瞬間、一角うさぎっぽい魔物は『シャ』とも『ギャ』ともつかない、表現のしようのない声を上げながらうちの方へと飛びかかってきた。

「イヤァァァァ!!」

「危ない!!」


“シュン!! バスッ!!”


「グギャゥ!?」

 死んだ。そう思った。せやけど、次の瞬間、何かが飛んできて、そして一角うさぎは吹き飛んでいった。

「……ぇ?」

 吹き飛んだ方を見ると、何かのダメージを負ったんか、ふらつい散る一角兎の姿が。

 一体何が起こったん?

「大丈……ぇ?」

「……ウソ?」

 疑問を抱きながらも声を掛けられたんでそっちを見る。

 その視線の先に居たのは……

 冒険者のような恰好をした、うちソックリの女の子でした……




当方とても打たれ弱いです。誹謗中傷に関わる感想はご遠慮頂けると幸いです。この作品、かなり見切り発車なので、無事完結するかは解りませんが、頑張って書こうと思いますので応援お願いします。

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