第四話 修行編!すみません、少し盛りました。
私がこのファンタジーあふるる世界に来てから20日ほど経過した。
この家には時計なんてものは無いため正確にはわからないが。
あの日、空間収納と言うスキルを手にいれた次の日から私は人のいる場所に行く準備を始めた。
まずはスキルのレベルアップの為に、作れるものをどんどん作った。
すると、材料の関係上すぐには無理だが、新しく作れるものも増えたわけだ。
中でも嬉しかったのは、《粗塩》。
そう、塩だ!
この粗塩のおかげで私の食生活は向上したと言っても、過言ではない!
料理に、と言っても今のところ、芋や茸を焼くくらいだが、味があると言うのはとても素晴らしい。
個人的には醤油が良いのだが、この状況、贅沢は言えまい・・・。
そして、私はついに、《中回復薬》をつくる事が出来た。
問題だった材料は、実は作る事が出来たのだ。
まず、《清水》、これは水があれば作る事が出来た。
次に《水の魔石》これは清水と石で作れたのだ。
ちなみにお風呂やキッチンにあった青い石は水の魔石だった。
コンロにあったのは火の魔石だ。
お薬レシピの内容覚えてたんじゃねぇのかよ。と、思われるかもしれないが、材料を作るなんて考えもしなかったので、思い浮かべられなかった。
知識を持っていても使いこなせなければ、意味が無い。
宝の持ち腐れ、と言う事だ。
スキルアップと同時に身体も鍛え始めた。
毎朝家の周りを10周走り、腕立て、腹筋、背筋、スクワットを100回ずつ。
嘘です、盛りました。50回ずつです。
身体を鍛えるなんて、本当に続けられるのかと思ったが、意外に大丈夫だった。 と言うのも、私はどうやら身体の構造が変わったらしい。
何でそんな事がわかるか。
明らかに疲れにくくなっている、と言うのは少し語弊があるが、解りやすく言えば10代の頃の体力に戻ったような気がする。
そしてもうひとつ、髪の毛の色が変わっていたのだ。
日本にいたときの私は、暗めの茶色に染めていた。
今の私は輝く、は言い過ぎかも知れないが、プラチナブロンドになっている。
肌も以前より白い気がするし、体型も理想的な太過ぎず、かと言ってガリガリに痩せているわけではない、これぞ女の子と言う感じだ。
以前の私よりは全然細い。
まだ自分の全貌を確認できていなかったりする。
自分には鑑定が使えなかったのだ。
それに鏡なんてものがない。窓ガラスもクリアな透明!ではなく、少し濁ったような曇りガラスだ。
自分の姿を確認できるのはまだ先になりそうだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ファンタジー生活、約32日目。
今日は少し遠出してみようと思う。
お薬の材料と食材確保のためだ。
そう、私にはタンパク質が明らかに足りない。
お肉は難しそうなので、魚、贅沢を言えば卵なんかを採りたい。多分卵は無理だと思うが。
川の場所はなんとなくわかる。家の周りをぐるぐる走っている時、微かに水の音がしたからだ。
私はなんとしても魚をゲットしたい!
魚を採る方法はもう考えてある。
後は実行するのみ。
フッフッフ、今日の晩飯は焼き魚にしたるわ!
私はクローゼットに入っていた、虫よけ効果があるらしい、膝丈の茶褐色のローブ、しかもちょっとデザインが可愛い、を着て川があるらしき場所へ向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
あっさり川に到着した。
ぶっちゃけここに来るまでに、何かに遭遇するんじゃないかとビクビクしながら、両手に爆発物(火の水)を持ちながら歩いていたが、何もなかった。
小鳥の囀りを聴きながら森林浴をしただけである。
『よし。』
私は川の中に火の水をぶん投げた。
ドォン!!!
爆音と共に水が飛沫をあげて数メートル舞い上がった。
私の作戦は成功した。
魚がびちびち落ちてくる。
《鑑定》
シロイウオ:食用。淡泊な味でどんな料理にもあう。
お魚ゲット!
それにこの鑑定眼、動物にも使えるようだ。
その後私はフィッシングポイントを変え、魚狩りを続けた。
さ〜てそろそろ帰るかねー
魚を40匹ほど獲ったところで、帰る事にした。
乱獲は良くないからね。
今日は焼き魚だ!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ファンタジー生活、約48日目。
今日からここを出る準備を始める。
ファンタジー生活約50日目に出発すると、少し前に決めていたのだ。
空間収納内は時間が進まないっぽいので、料理をばんばん作って入れていく。
甘味欲しさに作った、アプリの実で作ったドライフルーツも持っていく。
早く砂糖作れるようにならないかなー・・・
クローゼットのお洋服類も頂くことにした。
家の中のものを全て頂くと、好きにして良いと言われたが、なんだか泥棒になったような気になるので、家具類は置いて行く。
野宿の事を考えると、ベッドは欲しいが、大自然にベッドは如何なものかと考え、毛布だけ頂く事にした。
街に着いたらテントなんかを手に入れたい。
存在するかわからんが。
とりあえず、ものを買うにはお金が必要になる。
私の薬は売ることが出来るのだろうか?
ゲームとかだと道具屋とかで売れたよね。
まずは人のいる場所に行かなきゃ始まらない。
そんなこんなで今日から2日間は準備に宛てるのである。
日課の走り込みはお休みだ。
めんどくさいんじゃない。ほら、準備に忙しいから。
『全部収納に入れてたら、いざと言う時ぱっと出せるかな?
やっぱいくつか持ってた方が良いよね。』
最近ずっとぼっちのせいか、独り言が多くなったわ。
それより、ほら、旅行の時もお財布はふたつに分けろって言うし。カバンか何かに少し入れて歩いた方が良いよね。
ん?何か少し違う・・・ま、いっか。
クローゼットの奥にトランクらしきものを見つけた。
何かの木で出来てるらしきそれには、背負えることも出来るらしく、肩に掛けられるようになっていた。
このカバンには、小回復薬30個、中回復薬10個、毒消し10個、麻痺治し10個、火の魔石5個、水の魔石5個が入った。
頼りになる火の水大先生は、衝撃を受けると爆発するので入れられなかった。
背中で爆発したらシャレにならない。
そんなこんなで、私が決めた準備期間は過ぎて行った。