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第二話 不法侵入ではありません。

何故に草っぱら?


あれか?死体遺棄的な感じ?



私はとりあえず立ち上がれるか試してみた。



『よっこらしょ。身体は何故か問題なさそうね。』




立ち上がってみると、草の汁やら土やらで多少汚れてはいるものの怪我をしている様子はなさそうだ。


起きる前はあんなに痛かった身体も、今は全く平気だ。

むしろ調子が良さそうな気がする。



そんなことはさておき、今はこの状況をどうにかしなくてはいけない。


私が今いる場合は、そこだけ拓けているらしく、少し離れた場所からは木々生い茂る林、ここはどっかの森の中とみた。



夜も深まって暗い森の中、霊的な何か出ても可笑しくないくらい不気味だ。



やめてよー地縛霊とか怖いよー



テレビで真夏の心霊特集とか、本当にあった怖い話とかはたまに視るが、画面で創られた映像を見るのと自分が体験するのは話が違う。


こんなところで夜は明かしたくないが、捜索が出てた場合、ヘリコプターが捜しやすいように拓けたこの場所から動かない方が良いのか。





ふ、とその時、森の向こうから聞いたことのないような鳴き声がした。


真似はできないが、グギャァァア!っと言う鳴き声が。



犬とかの類いでは無い。絶対違う。



あの鳴き声の持ち主に遭遇したら無事では済まない気がする。


今は離れているが、もしかしたらこっちに来るかも知れない。



幽霊にしろ、未確認生物にしろ、会社帰りのしかもカバンが無い、装備の私に太刀打ちができるわけがない。



私はこの場を離れる事にし、自分を奮い立たせ、鳴き声とは逆の方向に進んだ。









有理の判断は正しかった。

有理がいた場所、夜が来て大人しくなった魔物の巣の上だったと言うことを。

あのまま動かずに、朝まで待っていたら自分がどうなっていたか。

この先も知ることはないだろう。










◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





私はサクサク歩いた。

それはもう、一心不乱に。

もはや泣く一歩手前である。



『もー・・・ここはどこだよー・・・』




こんな婚期を逃した女が泣いたって見苦しいだけけかとおもうが、私だって人間だ。


恐怖だって疲れだって感じる。


悲しいし、辛いし、苦しい。


だって人間だもん。





そんな私を神は見捨てていなかった。



大分歩いた頃、本当は10分20分くらいなのかも知れないが、目の前に石と木で出来た家が現れたのだ。



『助かった・・・。』



どう考えても日本家屋ではないが、私にはそんなこと気にする余裕はない。




『すいませーん!ごめんくださーい!』



返事はない。



『誰かいませんかー!?』



どうしよう本当に空き家なのかも知れない。


不安な気持ちでドアの取っ手に触ると、ドアが開いた。


これは不法侵入になるのか。いや、緊急事態だ。きっと家主もわかってくれる。

だいたい鍵開けっ放しなんて、無用心だ。

そのおかげで私は助かったけど。



そんなことをぶつぶつ考えながら家の中に侵・・・お邪魔させてもらった。



『おじゃましまーす・・・』



小声でそう言いながら進むと、どこかを触ったみたいで、急に明かりがついた。




『うわっ!びっくりしたー・・・』




明かりがついたおかげで良く見えるようになった。

部屋の中にはイス、テーブル、本棚にベッド、机、クローゼット、キッチンのようなもの、それと他に部屋があるのだろうか、ドアがふたつあった。



『本当に誰もいなそう。でも空き家にしては綺麗だなぁ。』



テーブルの上にメモらしきものが置いてあるのに気が付いた。






《この家にたどり着いた幸運な者へ


ここには私の知識を一部置いていく


どう使用しようがお前しだいだ。


家の中の物も好きに使うが良い。


マグナ・ロイフ》






『たどり着いた幸運な者?確かに私は運が良かったわ。』




このメモを書いた人は中二的な何かなのか。

私の知識を置いていく、って、それにマグナ・ロイフって・・・外人?

字は日本語なのに。



『とりあえず、好きに使って良いって書いてあったし・・・』





恐怖と緊張で疲れ果ててた私は、ベッドを早速お借りすることにした。







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


チュンチュン、と鳥の鳴き声とともに爽やかな朝がやって来た。



思いの外ぐっすりと眠ったらしい。我ながら図太い神経だなと思う。



とりあえず顔を洗いたい。あとトイレ。


着替えたいし、風呂に入りたい。



私は昨日開けなかったドアを開けて見ることにした。




ひとつめのドアはトイレっぽかった。

蓋はないが洋式トイレの形だ。


とりあえず用をたすことにしよう。


お花摘みが終わった私は大事なことに気づいた。

紙ねぇじゃん。


あわあわしていると、横に大きめの葉っぱが入った、籠が置いてあるのを見つけた。



まさか、このクサで拭けと?



背には腹は変えられない。そこにそれがあると言うことはそうなんだろう。そう思う事にした。


どうやって流すのか?と思ったが、便器を除くとそこには何もなかった。

試しに葉っぱを1枚落としてみると、何事もなかったように消えていった。



そう、消えたのだ。




『うそーん。』





ファンタジーかよ!


なんか良くわからなくなってきた私は、深く考えるのを止めた。


考えるのも面倒になってきた。

昨日の疲れが残ってるのかしら。



もうひとつのドアを開けて見ることにした。




そこはおそらくお風呂だ。

人が一人入れるくらいの浴槽のようなものが置いてある。

シャワーも蛇口もないが、床と壁がここだけ違い、石のタイルだ。



浴槽の上には掌で覆えるくらいの大きさの、青い綺麗な石が付いている。



『なんだろこの石。綺麗。』



取れるのかと思い、触ってみると急に浴槽に水、いやお湯が溜まり始めた。



『えっ!?』



どういう仕組み!?


もう一度触ってみるとお湯が止まる。


どうやらこの石がスイッチ的な役割をしているらしい。



お風呂には問題なく入れることはわかった。しかし、身体を洗った後、この汚れた服をもう一度着るのは嫌なのでクローゼットも物色させてもらう。



好きに使えって書いてあったし、問題ないでしょ。




クローゼットの中にはそれはそれは可愛らしいお洋服が入ってました。




え!?家主女の人!?あのメモ書いたの女性かよ!!!



てっきりどっかのじーさんかと思ったわ!





いずれにしてもありがたいので、淡い黄緑色のオフショルダーのワンピースに下着らしきものもお借りすることにした。










風呂の後、家の中を見てまわったが、色々な場所にあの綺麗な石があった。

はやりあの石はスイッチのようなものらしく、色に

よって出来る事は違った。


例えば、壁にある赤い石は部屋の明かりをつけたり消したりできて、キッチンにある同じ色の石はコンロっぽいのに火を着けた。




科学が進歩してるんだか、してないんだかよく分からないこの面白ハウスの全貌がわかってきたところで、次なる問題が浮上した。



そう、食料問題である。




水は確保できる。キッチンの青い石は水がでるスイッチだった。



問題は食料。水だけでいつ来るかわからない助けなんて待てない。



そもそも、助けなんてくるんだろうか?




変な生き物のいるこんなファンタジーな場所に。




まさか、これは、今流行りの異世界うんぬんではないか・・・!?



・・・やめよう。痛々しい。


これが某ドッキリ番組だったら全国のお茶の間に私の恥が流れる。





でも、本当に違う?




だって私は、確かにトラックとバスに巻き込まれたんだよ?


あの状況で助かるわけない。




私は自分を落ち着けるために水を木のコップに淹れて一口飲んだ。






仮に異世界にしろドッキリにしろ、こんな悪質なドッキリあってたまるかってかんじだが、何かアクションを起こさないと死ぬ。



根っからのオタクに染まりきっている、痛々しい私は、もうここを異世界だと思う事にした。





それにしてもこの食料問題、早々に解決しなければ。



攻撃力も防御力もゼロの今の私には、あのヤバそうな鳴き声の生き物がいる森の中に食料を探しにいくなんて無理だ。


むしろ私が食料になる。




『なにか方法はないかね・・・家主さん。』



そう言えばメモに知識の一部がどうのって書いてあったような・・・


知識ってなんだよ!勉強?勉強しろってこと!?



この家の中での知識に思い当たるのは本棚くらいだ。


本棚と言っても、本は3冊しかない。


私は一冊手にとってみた。



え〜となになに?スキル取得?



《スキル》

・鑑定眼


・危機回避


・魔力感知




『鑑定眼?』



なんじゃそりゃと思ったその時、本が燃えた。




『うあっ!』



本は灰になって消えた。





『うそでしょ!?』





《スキル:鑑定眼を取得》



頭の中に何か聞こえた。


もしかして、これひとつだけ選べた系だった?





なんかもうちょっとドキワクしながら考えたかった!


先に言えよ!



この流れは他の2冊も同じだな。そう思った私は意を決してもう1冊を開いた。





《お薬レシピ集》



内容は色々なお薬のレシピだった。

ゲームでお馴染みの回復薬、毒消しなどの作り方が書いてあった。


不思議なことにお世辞にも学業の成績が上位でなかった私だが、この本のレシピは全て覚えられた。



本は読み終わるとまた燃えてしまった。





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