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第十二話 毒は辛いぞ。気を付けろ。



前回のあらすじ

無事ギルドカードを手に入れた私達は、早速森を散策☆沢山素材を見つけちゃった☆

お薬をたぁくさん作って大満足☆よし、街に帰ろっか☆その時、沢山の蜂さんに囲まれちゃってもう大変☆

キルスったらその事を忘れてたみたい☆もう、しかたないんだからっ☆





『ってなるか!!!』




思わず自分の回想にツッコミを入れてしまったよ。






私達は運悪く、ホーネット達の巣の近くまで来てしまっていたらしい。

私をキルスが背に庇う形で立っているが、360°虫に囲まれているこの状態は大分ピンチだと思う。


この虫達を鑑定してみると、緑と黄色のシマシマがホーネットで、赤と黒のシマシマがキラーホーネットみたいだ。

姿はどちらも蜂と蚊を足した感じだ。


ホーネットは、カルディナさんがルクスヴェルグに来る途中、雑魚と言って倒していたが、あの時は街道だったためか、数は精々4、5匹だった。一匹の毒もそう強く無く、死ぬことは余り無い。

だが、今は何十匹といる。

こんな数に襲われたらひとたまりもない。


極めつけはキラーホーネットだ。毒々しい見た目通り、持っている毒は直ぐ様解毒をしないと死んでしまうくらい強いらしい。

身体も硬く、一般の武器じゃ歯が立たないみたいだ。




『キルス・・・これ、結構ヤバいんじゃ・・・。』




私の声と膝はガクガク震えている。


虫は結構平気な方だが、それはあくまで普通の虫であって、こんなファンタジーな魔物と呼ばれているものが大丈夫な訳無い。




『大丈夫。』





ぎゅっとキルスが手を握ってくれた。








『ユーリは俺が絶対守る。』








魔物から眼を離さない真剣な横顔は、今までと全く違っていて、思わず見惚れてしまった。










『ユーリだけは助ける。ユーリは。

あいつは知らない。』




『あいつ?』



キルスがあいつと言って見てる先には、ブンブン言ってるキラーホーネットの下で倒れている人がいた。





誰かやられてるがな!!!






『あれはもう、助からない。』



残念。と、全然残念がっていなそうに言う。


お前はいつからそんなボケを覚えたんだ。





『ユーリ!来る!俺から離れるな!』



『お、おう。』






突然、ホーネット達が動き出した。


あの倒れている人が気になるが、今はそれどころでは無い。この状況を切り抜けなければならない。








キルスは剣を抜き、攻撃を仕掛けて来たホーネット達をバッサバッサ切っていく。





は、速っ!!!




速すぎて追い付けない。全然剣の動きが見えない。





キルスって、強かったんだ・・・。




こんな状況だが、沁々思ってしまった。




『チッ!数が多い・・・!』




流石に数が多すぎるのだろう、私を庇いながら戦わなくてはいけないキルスに、疲労が見えてきた。


私は完全なお荷物だ。







私にも出来る事は・・・!

そうだ!





私は空間収納に入れていた、火の水を出し、ホーネット目掛けて投げた。





ーチュドーン!!!ー





キルスの背後、つまり私の前方で爆発は起き、巻き込まれたホーネット達はパラパラ地面に落ちていく。




『ユーリ、それ何!?』




流石のキルスもびっくりした顔をしていた。




『これ?これは爆発する薬。』



爆発する薬ってなんぞや。と思うが、薬師らしいから薬で良いでしょ。




『それ、まだある?』


『あるよ。たくさんね。』








私はキルスに火の水を次々渡していった。

流石はキルス。私よりコントロールが全然良い。




私を抱え、場所を変えながら火の水をホーネット達にぶつけていく。

爆発をすり抜けて向かって来た奴等は剣で真っ二つになっていた。


辺りはホーネットの死骸だらけになっていた。




あらかたホーネットは倒した。

残るは余り動きがなかったキラーホーネット達である。



キラーホーネットはホーネットに比べて数が少なかった。10匹程度である。

中には爆発に巻き込まれたらしいのもいるが、ダメージは負っているもののホーネットとは違い、火の水一撃では倒せない様だ。







『キラーの方が残ってるよ!?』



『大丈夫、弱ってるし、数も少ない。余裕。』




ここで待ってて。キルスはそう言い、私をキラーホーネットから離れた木の側に置いて行った。







キルスがキラーホーネットに向かって走り出す。



やっぱり私が荷物になっていた様で、先程とは全然違う動きで近付いて行く。

これにはキラーホーネット達も危機を覚えたらしい。今まで余り動かなかった奴等が動き出した。

キルスを囲み、尻の太い毒針で攻撃を仕掛ける。


キラーホーネットの動きはホーネットよりも速い、しかし、キルスは難なく攻撃を避けていった。





その時、キルスの足元に5㎡ほどの魔方陣の様な物が現れた。




『これで、終わりだ。』






魔方陣の光が増したかと思うと、地面から光の槍が現れ、キラーホーネットを次々串刺しにしていく。

おそらく、数分も経たないうちにキラーホーネットは全滅した。







『ユーリ。もう、大丈夫。終わった。』



その言葉を聞いて、私はキルスの側まで走って行った。



『キルス!大丈夫!?ケガは!?』



キルスの身体をベタベタ触って怪我が無いか確かめる。


キラーホーネット相手では、かすっただけで身体に毒が回ってしまう。

断じてセクハラでは無い。




『大丈夫。ケガは無い。』




『良かった・・・。』




安心したせいか、今更ながら涙が出てきそうだ。



『そ、それにしてもキルスって強いんだね!

最後何て何分もかからずに倒しちゃって!』



『なん、ぷん・・・?』




しまった!この世界、分とか時間とかの単位じゃないんだ!




『ちょっとって意味よ!あーと、そう言えば魔法!あれ魔法でしょ?キルス使えるんだね。』





話題を変える。

それにしても最初から魔法使えば良かったたんじゃね?




『・・・俺の魔法じゃ、ユーリを巻き込む可能性がある。敵の数、多かったから。』




何で私の考えてた事解るの!?エスパー!?



『えすぱー?が何かは知らないけど、ユーリ、声に出てる。』




『マジか!!!』




気を付けてよう。うん。

キルスにはごめん、と誤っといた。







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





『何か忘れてる様な気がしない?』



『?そうか?あ、ホーネットがこれだけいたから、巣が近くにある。

採ってく?蜂蜜の素になるけど。』



あれから私達はキラーホーネット達の死骸を集めている。

キルスは空間収納が使えないらしいが、代わりに、似たような機能の腰に着けるタイプの鞄を持っている。それにバンバンしまっているのだ。

魔物は部位によって武器や防具の素材になったりするらしく、冒険者ギルドで買い取りをしてくれるらしい。



『蜂蜜か〜私も作れる様になったみたいだし、採ってこ!』


『蜂蜜、作れるの?』



ついさっきね。と言う言葉は飲み込んで、出来たら分けてあげると言うと 、キルスは微かに口元を緩ませて頷いていた。



じゃあ、採りに行きますか。と、巣が在りそうな方へ足を向けると、倒れている人が目に入った。






そう、倒れてる人が。




『忘れてたー!!!』




この人はキラーホーネット達にやられた人だ。

今更ながら思い出した。

早く解毒しないと手遅れになる。もう、手遅れかもしれないが。



視界に入っているはずなのにキルスは、どうしたの?早く採りに行こう?と非情な事を言っている。



『ちょっと待って!あの人大丈夫かな!?』



『駄目だと思う。』



良く見もしないで言わないの!心の中でツッコミを入れ、急いでその人の元へ向かった。




その人は男性で、赤銅の短髪に複雑な模様のバンダナの様な布を巻いている。

両耳には、小さい赤や黒の石のピアスを着けていて、長い留め具の無いコートの様な羽織に、中にはこれまた複雑な模様のシャツに黒いズボン、茶色のショートブーツを履いている。


身長は180㎝はあるキルスよりさらに高そうで、整った顔には毒のせいか、苦悶の表情を浮かべている。

意識は無いが、息はしていた。



『こいつ、あれだけ時間がだってるのに、まだ、生きてる。しぶとい。』



助ける気ゼロのキルスは置いといて、自分の作ったもので効くのか解らないが、毒消しを飲ませる。もとい、口に突っ込んだ。




これで死なせたら責任を感じてしまう。





ハラハラしながら見守っていると、男の表情が穏やかになった。呼吸もさっきまでの浅いものとは違う。どうやら効いた様だ。



『良かった。』


『ユーリ、良かったね。』




キルスさんや、私は別に自分の薬を試せて良かったって言ったわけじゃ無いからね?

助かって良かったの良かっただからね?

その、用も済んだし行こう。みたいなのやめなさい。








暫くして、男が目を覚ました。


実はホーネット達の巣を採って来ていた事は秘密だ。

だってキルスがいじけるんだもん。





『・・・ん。』


『あの、大丈夫ですか?』



顔を覗き込むと、目が会った。



『・・・女神か。』


『んん?』



・・・大変だ。頭を打っている様だ。女神の幻覚が見えるらしい。



『俺の女神ぃ!!!』


『ンギャー!!!』



男が急に起きあがったかと思うと、力いっぱい抱きついて来た。



何事!?




イケメンに抱きつかれるのは大変ありがたいが、頭をクンカクンカしながら、色んな所に手を這わせると言うのは流石に寒気がするぜ。


余りにも恐怖を感じると、人は声を出せないと言うのは本当みたいだ。


そんなことを考えていると、男の背後に無表情で立つキルスが見えた。

男はまだクンカクンカしていて気付かない。




次の瞬間、男はキルスの回し蹴りを喰らいぶっ飛んだ。











◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






『いやー悪い悪い。あんまりにも可愛い顔が近かったんでついな!』



男は爽やかに笑っている。細められた瞳は髪の色と同じだ。




『ユーリ、こいつ痴漢だ。憲兵に突き出そう。』



キルスは警戒心剥き出しだ。



『それにしても女神、『ユーリです。』には解毒薬を使わせてしまって悪かったな。』



『いえ、ひとつ位なら何とかなりますから。』



『太っ腹だな!俺の女神、『お前のじゃない。』は!』



爽やかにに笑う男との会話には、ちょくちょく私とキルスのツッコミが入る。

今日はツッコミ役ばっかりだ。




『この森に入ってから随分時間が達っちまったな。悪いな、本当は女神 『だからユーリです。』ともっといたいが、雇われている身でな。』




この借りは今度かえすからなー!と、私の名前を覚える気の無い男は、爽やかに笑いながら去って行った。



つーか、女神女神って何回言うの。

流行語大賞でも狙ってんのか。




『何か、疲れたね・・・。』


『ユーリ、あの痴漢には気を付けて。』




最後にどっと疲れた。このまま宿に帰って寝てしまいたいが、私達はこの後やることがある。

キルスは冒険者ギルドへ討伐魔物の売買へ。

私は明日からの露店を出す準備だ。



私達は思い身体を引き摺って街へと戻ったのだった。










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