見えない未来
いつもより遅くなってしまいました。
読んでくださっている方々申し訳ありません。
それからどれくらい日にちがたったのか。
正直なところ、リーナ自身でさえよくわからない。地下牢に監禁しているされていた頃に比べれば、ある意味充実していたが、時間の感覚を失っていたこと事態は同じだった。
あれから、父の書斎にこもっている間、アルトにもグレイスにも心配をかけた。
空腹は使用人が持ってきた食事で満たした。
リーナがギルバルト王の書斎にこもりきりになって何をしていたのかは、使用人もグレイス等も理解していた。
そのおかげで、誰にも邪魔されることなく、父の手記を読むことに集中できた。
結論から言って、今のリーナに必要な情報はかなり少なかった。
あるいはグレイスやアルトならば有効に活用できそうな情報はあった。というのも父の手記に書かれていたことは大半が戦争における戦術、外交における戦略など、論理的な情報にばかり集約していた。
しかし、さすがにどこにいるのかもわからない、誰かを探し出すための情報はなかった。
ただ一つの情報を除いては……。
リーナは今、アダマンガラスで唯一の教会に来ていた。
この国に宗教の概念を持ち込み広めた宣教師がいた。その宗教が発達し、一定の地位を与えられるようになると、教会が作られ、信者が増えるにしたがい、修道院が作られたのだ。
この協会が今も残っているのは、そのときの名残であり、その宣教師が今なお居住しているからだった。
そして、リーナの用があるのはその宣教師(今では神父という扱いだが)だった。
「これはこれは、また珍しいお客がやって来たものですな」
両開きの扉をノックして出迎えたのは、初老の老人だった。身長はリーナより高く、肩幅の広い肉体を全身黒一色で覆っている。首からは白い六角垂のペンダントが下げられている。髪は白髪になり始めているが、その目付きと肉体はとても年齢を感じさせない。
父、ギルバルト王とはある意味真逆であると言えた。
「アダマンガラスの正当後継者たる姫君が、この老いぼれにどのようなご用件ですかな?」
「あたしが王族であることを知ってるってことは……」
「ええ、存じていますとも。貴女のお父上のことも、母上のことも、貴女自身のことも……」
それなら、と続けようとしたリーナを、老神父が止める。
「どうやら、長い話になりそうですね。どうでしょう。少しばかり上がっていかれては……」
そう言いつつ、神父はリーナを教会に入るよう促す。たった今初めて出会ったばかりの人間のことを信用するのは考えものではあったが、そもそもこの男に用があるのはリーナの方なのだ。
本当にこの男が信用に足る人物なのかはこれから判断すればいい。
「それでは、お言葉に甘えて……」
「申し遅れました。私は、エーリッド・ファミリアと申します。以後お見知りおきを」
エーリッドはリーナをダイニングルームへ迎え入れながら名乗った。ダイニングルームといってもテーブルは小さく、青い絨毯がしかれた部屋はテーブルと椅子を除けば暖炉しかない、殺風景な部屋だ。
「ええ、こちらこそ」
リーナはそれに会釈で返した。
「少々お待ちを。今、紅茶と菓子を持ってきますゆえ、」
「遠慮させていただきます」
エーリッドの言葉を遮って、リーナはいい放つ。
「あたしにはゆっくりお茶菓子を楽しむような時間なんてないのだから」
その瞳には強い意思が宿っていた。エーリッドはその意思を知ってか知らずか、畏まりました、とだけ言ってダイニングテーブルにつく。
「さすがはギルバルト王のご息女だけはありますね。その目、戦争をしていた当時のあのお方そっくりですよ」
「そう、なの?」
「ええ。人は堂々と生きていれば、自然と親に似てくると聞いたことがありますからね」
嬉しいような、そうでもないような微妙な気持ちだった。
リーナの知ってるギルバルト王は、年齢以上に老けていて、常に疲れているようにしか見えなかったからだ。そんなイメージしかない父親と似ているなどと言われたら、自分は常に疲れているように見えているのかと思えてしまう。
「もし、私の勘が正しければ、貴女が私を頼ってきたのも、きっと当時のギルバルト王と同じ理由ではないかと思っています」
「それは?」
リーナはエーリッドを真っ直ぐに見据えた。
「私の占い……ではないかと」
わずかに、リーナの瞼が上下する。この男は恐らく、父の思考パターンをそのまま当てはめて言っただけなのかもしれない。それでも初対面の相手に内面を見透かされるというのは微妙な気持ちだ。
「その通りです。エーリッド神父」
わずかに間をおき、リーナは話を続ける。
「お父様の手記によれば、貴方の占いは十割当たるって話だったので」
「お父上の手記を?」
「あ……」
言ってから、リーナは自分が口を滑らせたことに気づいた。
父の死は、まだ国民に公表されていない。にもかかわらず、それを連想させるようなことを口にしてしまった。
エーリッドは固まっているリーナを見て、それを悟ったらしく、静かに「そうですか……」とだけ言った。
気まずい沈黙が流れる。そんな状況の中、エーリッドはさらに言葉を紡いだ。
「申し訳ありませんがリーナ王女殿」
「?」
「その占いは、もうやっていないのですよ」
リーナは一瞬言葉を失った。
「どうしてですか?」
しかしリーナとて、はいそうですかで引き下がるわけにはいかない。他力本願かもしれないが、今のリーナには道しるべが必要なのだ。
「あたしは知りたい。どうしてこの町にあのマモノ達が現れたのか。あのマモノを撃退することには成功したけれど、本当にそれで終わったのか。もし終わっていないとしたら、どう行動すればいいのか」
それでもエーリッドは首を横に振った。
「お引き取りください。私はもう、占いはしないと誓ったのです。それにリーナ王女。お父上の手記をご覧になられたのであれば、貴女はご存じなのではありませんか? 私の占いは十割当たるが、九割外れることを」
父の手記には確かにそんなことが書かれていた。
十割当たり九割外れる占い。一見矛盾しているようだが、実はまったく矛盾していなかったりする。いや、十割当たるからこそ、外れる可能性が高い。
そもそも十割当たるというのは、占いをしなかった場合に限られるからだ。この男に占いを委ねて出た結果は予言じみている。しかし、そのとき出た結果は、占う前。正確に言うなら占ってもらった本人が知ることがなければその通りになっていた結果に過ぎない。
占いの結果を知った人間は意識するかしないかの違いはあれど、別の選択をする可能性が高まる。
それが十割当たり九割外れる占いなのだ。
エーリッドは首を左右に振りながら、続けた。
「未来を予言する占い。かつては私も自分の数少ない特技だと思っていました。しかしそれは違ったのです」
エーリッドの口調はかつての自分を戒めるかのような言い方だった。
「私が占えば未来を知ることになる。それを占った本人に伝えれば、占った結果とは違う未来が訪れる可能性が高まる。しかし、結果を伝えなかった場合それは未来を覗き見る行為に過ぎない。そして占った本人にとっては、まったくあてにならない占いでしかない。
おわかりですか? 私が占った結果は、私の胸のうちにとどめておけば真実に、占った本人に伝えれば嘘になるのです。これがどういうことかお分かりですか?」
--わからない……。
リーナは思う。結局のところ、未来が誰にとってもわからないものになるのならその方がよいのではないかと。1つの未来の可能性を知るということ。
ただそれだけのことがどうしてそんなにもとがめられることなのだろう?
「わかりませぬか、リーナ王女殿。貴女のお父上は、私が占った結果、死に至ったかもしれないのですよ」
一瞬。心臓が大きく動いたような気がした。
「お、お父様は……!」
両手を握りしめる。脳裏に毒杯をあおって自殺したギルバルト王の姿が蘇る。
なにかを言おうとしているリーナを制止して、エーリッドが口を開く。
「お父上は……」
エーリッドは興奮し始めているリーナとは対照的に静かに語る。
「貴女に関することを二度占った。一度目は貴女が生まれたとき。二度目は、鎧竜が襲来したとき」
「……」
「一度目のとき、お父上は当然のことながら貴女の命を奪おうとは思わなかった。しかし、その判断が正しいのか知りたいあまり、占いの結果を知ることを選択した。その時の占いの結果は、貴女の死によってこの国は何事もない平和なときが流れるという暗示だった。
お父上は、その結果にある意味喜んでいらっしゃった」
父、ギルバルト王がリーナの死の暗示に喜んだ。その理由はこれまでの話を整理すれば明らかだ。
「その結果を見ることによって未来が変わるから……」
「そういうことです。ひょっとしたら貴女が生き残っていたとしても平和が訪れるかもしれない。そんな未来がくることを信じたかったのです。だから、この暗示を自ら見て、未来が変わることを喜んだ。貴女が生き残る未来を信じたかったがゆえに。しかし……」
「鎧竜がやってきて、闘技場をメチャメチャにして、そしてあのマモノがやってきた……」
「その通りです」
「じゃあ二度目は? あたしと鎧竜が戦ってから、もう一度占ったときの結果はどうだったの?」
エーリッドは淡々とその問いに答えた。
「貴女の存在が公になり、人間同士で疑心暗鬼が発生し、国中に広まる。疑心暗鬼の原因足る者。それは……」
「あたし……なのね?」
エーリッドはコクりと頷き、続きを話す。
「国民は貴女の死を望み始めた。それによってもうドラゴンがこの地にやって来る可能性がなくなる。貴女の生け贄によって、この国は平和になる。そう考えた国民の手によって、貴女が処刑される未来。二度目の占いの結果はそういったものだった」
「……」
聞けば聞くほど、自分が呪われているのではないかと思った。
――あたしって本当に生まれてこない方がよかったのかしら……。
そう思うと、胸の奥からなんとも言えば虚無感が襲ってくる。何もかもがどうでもよかったのではないかと思えてしまう。
「もちろん、お父上はこの結果を見て、再び喜んだ。貴女の死の運命を覆すことができるかもしれないと」
鎧竜と戦ったあとにリーナが即座に監禁された理由。それはただ単に罰を与えるためじゃなく、リーナを世間の目から隠すためだったのかもしれない。
そうすれば、国民による疑心暗鬼は発生しないし、実際今も発生していない。
もしかしたら、リーナが監禁されている間、外の世界ではなにかしらそれにまつわる現象が起きていたのかもしれない。今となっては知るよしもないが。
「じゃあお父様は、あたしの代わりに死んだのね……」
口に出した瞬間、罪悪感が襲ってきた。涙が込み上げてくる。
――こんな……何もできないあたしなんかのために……!
ギルバルト王は最後までリーナの生存を望んでいた。そのために未来予知の力を利用した。しかし、リーナの生存の代償として、精神的に追い詰められてしまったのだろう。自殺を決断するほどに。
あるいは国よりも娘の命を優先させようとした償いのつもりだったのかもしれない。
「お分かりですか? リーナ王女殿」
「な、何が?」
涙を拭いながら、エーリッドを見る。
「貴女のお父上は、私が殺したようなものなのですよ」
「それは……それは、違うでしょ!」
激昂しながら、反論する。
「お父様は、貴女の占いの結果を利用して、未来を変えただけでしょ?」
「口で言うのは容易いですが、それがどれほど重要なことなのかお分かりですか? 悪い結果は別の悪い結果で上書きされる。命を要求する結果なら、別の誰かの命が生け贄になる」
気まずい沈黙が流れる。その沈黙をリーナ自ら破る。
「……一つ聞いていい?」
「なんですかな?」
「あなたの占いって、そんな悪い結果しかでないの?」
「そういうときもあるし、そうでないときもある。私の占いは、現状でもっとも可能性が高い未来を予知するもの。可能性でしかないゆえに、いくらでも変動するのです。しかし、占いの結果通りの未来が訪れるのは、あくまで私のみが結果を知る場合のみ。占った対象となる人物が結果を知ってしまった時点で未来は再び、闇に閉ざされる」
「じゃあ、この占いなんの意味があるの? 占った本人が結果を知ったら変わってしまう未来予知なんて、なんの意味があるの?」
「私もその疑問を思ってました」
「……!」
「いや、疑問に蓋をしながら占っていたというべきか。悪い暗示を変えることができるならと、お父上には結果を開示した。その結果、いい方向に未来を変えることができるならと。しかし、悪い結果は別の悪い結果で上書きされるだけだった。別にこれまでも悪い暗示がなかったわけではない。しかし、私は悪い暗示が出たときは、遠回しにそれを回避する方法を伝えるにとどめていた。それゆえに精度の高い占いとして機能していた。しかし、お父上のように、占いの結果を直接知ってしまうと、このような結果になってしまう。
そのような占いを……貴女はあてにするつもりなのですか?」
クラクラする……。
不毛な因果のために命を立った父。そしてその因果を生み出す占いに手を出そうとしている自分。
血は争えないと見るべきなのか、それとも神が与えた試練なのか。
「あたしは……」
未来なんか見えない。見える訳が無い。
そもそも、手掛かりがないのだ。そして、今リーナがここにいるのは、その手がかりを見つけるためだ。
「……」
リーナの心は決まっていた。
「エーリッド神父。あたしは、未来が知りたい訳じゃない。自分が進むべき道を、それを指し示す手がかりがほしいだけ。
あたし自身は、占いの結果を知らなくてもいい。たった一つあたしの行くべき道が分かれば……それでいい」
「驚きましたね」
エーリッドは方をすくめながら、笑みを浮かべた。
「貴女のお父上にも、にたようなことを言われましたよ」
「……?」
「戦時中、あのお方は私の覗き見た未来の情報の中から、本当に大切な部分だけを聞き、利用し、私の占いの結果を何度となく覆して見せた。
……正直なところ、私はこの占いをもうやるまいと思っていました。しかしながら、貴女方親子は私の占いを覆すだけの何かがあるのかもしれませんね」
エーリッドは立ち上がる。
「占いましょう。貴女のことを。ただし、貴女にお渡しできる情報は、どこへ向かえばいいのかというただ一点のみ。それでよろしいですか?」
「はい! お願いします!」
リーナは嬉しさから、わずかにほほを緩ませながら一礼した。
「若者は元気があってよろしい。それでは、こちらへ。礼拝堂へ案内しますよ」
二人はダイニングルームを退室し、隣にある礼拝堂へと移動する。
しかし、礼拝堂とは言っても祈る対象である偶像はそこにはなく、あるのは何も奉られていない祭壇と横長の椅子だけだった。
「ここに来る度に、私は昔を思い出さずにはいられません」
エーリッドは懐かしそうにいいながら、何も奉られていない祭壇へと歩み寄る。
「かつてはここに偶像があったものですが、私の教義がこの国に浸透した結果、より大きな教会……ここで言えばヘレンディア修道院に移すことになりましてね。今では、私が郷愁の念に浸るためにあるようなものです」
いいながら何も奉られていない祭壇の上に、何もかかれていない羊皮紙を乗せる。そしてリーナに再び歩み寄る。
「リーナ王女殿。これを……」
そしてリーナに、胸から下げている六角垂のペンダントを手渡す。
「これは?」
「それを両手で握りしめ、祭壇の前で膝をつき、祈るのです。貴女の占いたいことを」
コクリとうなずく。そして何もかかれていない紙切れの前で、リーナは膝をつき祈り始める。
エーリッドはその横に立つ。
「神よ。どうかこの者に未来を指し示したまえ……」
広々とした礼拝堂に神父静かな声が響き渡る。そして、痛いほどの沈黙が流れ始めた。
そしてその沈黙はリーナが持っているペンダントが破った。
「え?」
握りしめていたはずのペンダントが光を放ち始める。手を開くとそのペンダントがひとりでに動きだし、羊皮紙の上に移動する。
そしてペンダントの先端から、奇妙な光が紙の上に放たれ、奇妙な動きを見せ始める。リーナの目には、ペンダントが勝手に踊っているように見えた。
「な、何が起こっているの?」
「貴女の体に宿るエネルギーの一部が、ペンダントに宿り、予言を文字に起こしているのです」
「エネルギーって……」
「まあ、見ていてください」
ペンダントは激しく空中で動いている。やがて、ペンダントから光が消え、羊皮紙の上にポトリと落ちた。
「こ、これが……占い……」
リーナが見た光景はあまりにも奇っ怪にして奇妙な光景だった。
「ペンダントが……勝手に動き出すなんて……」
「あのペンダントは、人の持つ不思議なエネルギーを力に動く、魔法のペンダント、とでも呼べばいいでしょうか」
呆然としているリーナの横で、エーリッドが口を開く。
やがて宙を舞うペンダントはやがてその光を失い、動かなくなった。エーリッドはそのペンダントを拾い上げながら。
「人間の肉体には、手を使わずに何かを動かしたり、無から有を生み出すエネルギーがあるのではと、昔から伝えられています。そのエネルギーがなんなのかは未だに解明されていません」
神父は何やら文字がかかれた紙を拾い上げる。それは先ほど神父が置いた何もかかれていない羊皮紙だった。
「が、このエネルギーが占術の類に利用可能であることは、判明しています。精度の高い占術を行うためには、このエネルギーは確実に必要なのです。
今の占いは、貴女自身の肉体に宿るそのエネルギーをペンダントに流し込み、動かした。貴女自身のエネルギーから情報を読み取って未来の姿を文字にしたのです」
「……」
理屈は理解できるが、原理はまったく理解できない。これが、神秘の類でなければ一体なんだというのだろう。
リーナは自身の国の歴史を振り返る。歴史と言っても語れることはそう多くはない。
アダマンガラスは国として統治がなされてから三十年程度しかたっていない若い国だ。無数の領地がせめぎあい、互いを騙し合い、好きあらば領地を拡大しようと貴族同士で躍起になっていた時代。
そんな暗黒の時代に終止符を打ったのが、リーナの父であるギルバルト国王陛下だった。
少ない兵力で一つ一つ領地を攻略し、拡大していき、国と呼べるほどの大きさに成長していった。
その背景にはエーリッド神父による占いも重要な要素として存在していたに違いない。
「それで、占いは成功なのかしら?」
「ええ。成功です」
リーナは生唾を飲み込む。
――あたしの未来が……あの紙切れに……。
「リーナ王女殿。先ほど私が言ったことは覚えてますね」
「はい」
それを知ることを望んではいけないことはリーナ自身理解している。知ることを許されるのは、あくまで占った本人であるエーリッド親父だけだ。
「それではお伝えしましょう。現状を打破するために、リーナ王女……貴方が取るべき行動を……」
「ええ」
リーナの瞳に緊張が宿る。そんなリーナの瞳を真っ直ぐに見据えて、神父は続けた。
「ストラグラム国へ向かいなさい。そこにあなたの求める真実がある。戦うべき存在がある」
「ストラグラム国……」
鎧竜襲来の理由、マモノの真実。そして、倒すべき敵の正体。
「私にお伝えできるのはここまでです」
リーナは頷いた。これ以上知ることは許されない。
「エーリッド神父」
「なんでしょう」
「ありがとうございます」
同時に一礼した。
そう聞いて、エーリッドも答える。
「ご武運を……」
リーナは足早に教会を去った。




