過去 Ⅳ
ぬ。
――――――――――――結論。
望月の兄は俺の姉の彼氏でした。
ていうか望月、そのこと知ってんのか?
まあいいや。次、美術だ。移動しよ。
―――――――――――――――-――――美術室にて。
幸い一番後ろの席だったので先生はここまで目を向けてないと思う・・。
ぼー・・・・・っと外の景色を眺めていた。
広がり渡る田とそれを囲むように覆い茂る鮮緑色の木々。
海からほのかに香る潮の香りが頬を撫でる。
この夏こそ俺の理想。俺の求める世界。
-―――――――俺は目を閉じた。
ジージージージー・・・。耳の感覚がなくなる蝉時雨・・
ザァ・・・ザァ・・・。穏やかな波の音。
ザワザワ・・・サワワワ・・・。背高草がたなびく音。
ゴ-――――――・・・・。はるか遠くになる飛行機のエンジン音。
様々な音に耳が追いついてけず、そこで俺の意識は途絶えた。
-―――――気が付くと俺は若草色しかない一面が自分の腰あたりの高さの草で覆われた空き地に立っていた。
「おまたせあっくん。」
この少女は誰だろう。
「おせーよお前。」
あ、これは多分幼少期の俺だろう。
「ふふっ・・ごめんね!ぁあ!でもね、あっくん、おばさんにみかんもらったんだ!よかったら食べようよ!」
「おう。だけど待って。俺、浜辺に行きたい」
「ふふっ!しょうがないなあ!」
栗色の絹のようにたなびく結っていない髪。
瞳はかすかに茶色がかったくりんとした目。
そして、この笑顔。
笑った顔がどことなく誰かに似ている・・・・・・・
そう思った矢先に目が覚めた――――